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Q.最近の取材では、自身の成長点として「中盤の力」をあげています。具体的にはどう成長できたと感じていますか。

A.中盤は、「読み」と「形勢判断」の両方が非常に深く問われるところだと思っていますが、その中で、読みに頼りすぎてバランスを欠いた判断をしてしまったり、あるいはその読みが足りなくて見落としが出てしまったりということがこれまでの対局でもあったので、そこを改善したいと思っていました。まずは自分の将棋にそうした課題があることを認識することが大事だと思いますし、その上で将棋ソフトなども活用しながら改善していけたのかなと思っています。

Q.新型コロナウイルスの影響で、ことし4月からおよそ50日にわたって対局が中断しました。この期間はどのように将棋と向き合いましたか。

A.今までの方法を特別大きく変えたことはなかったのですが、しばらく対局が空いたことで、よりじっくりと1つの課題に向き合うことができました。やはり対局があると、そのことを意識せざるを得ない面がありますので、まとまった時間でじっくりとできたことがよかったと思います。

Q.自分の将棋を見つめ、どんなことに気がつきましたか。

A.これまでの自分の対局、特に負けてしまった対局を振り返ると、中盤でミスが出て途中から差をつけられてしまう展開や、中盤から終盤の入り口で相手に後れを取ってしまう展開が多いと思ったので、そこを改善したいと思いました。

Q.それをどのように克服したのでしょうか。

A.自分の傾向として、判断に迷ったときに1つの読み筋を深く掘りすぎてしまうところがあると思ったので、適当なところで読みを切り上げて形勢判断に移ることや、局面によっては、なるべく多くの手を拾って読むことを意識しました。

Q.今回の五番勝負の中では、第2局の「3一銀」や、第4局の「8六桂」など、周囲が驚く手も登場しました。こうした手はどのようにして見つけるのでしょうか。

A.中盤では、なるべく多くの手を拾って考えるということ、あるいは終盤では、形に頼りすぎずに読みを入れるということを意識しているので、そういった自分の特徴から出たところがあるのかなと思います。

Q.意表を突こうという狙いはない。

A.はい、そういったことは特にないですね。どの局面であっても自分なりにしっかりと考えて、いいと思った手を指したいと考えています。

Q.トップ棋士が相手の対局も増えましたが、経験の差を痛感するようなこともありますか。

A.トップの方と対戦すると、自分には気がつかない好手を指される場面が多いので、やはりそこは自分の課題と言えると思います。ただ、そういうところから学んで改善していくことは可能だと思います。対局を通して得られる相手の感覚を自分なりに解釈して取り入れていけたらなと思っています。

Q.これまでの名棋士は、羽生善治九段の独創の一手「羽生マジック」や、谷川浩司九段の並外れた終盤力「光速の寄せ」など、棋風を表す異名と共に語られています。今後、自分の将棋にそうした呼び名が付くとしたら、どんな名前がいいと思いますか。

A.いやあ、自分から特に「これ」という希望はないので…。ぜひ、何かいい名前をつけていただけたらうれしいですね。(笑)

Q.自身の将棋については、どんな棋風だと考えていますか。

A.うーん、棋風というのは、自分で意識してしまうとそれにとらわれてしまうというか、縛られてしまうところがあると思うので、自分としては棋風はあまり意識していないです。ただ、見ていただく方にとっては、特徴のあるおもしろい将棋が指せればと思っています。

Q.トップ棋士に話を聞くと、タイトルを取ったあと、それが重圧になったと語る人もいます。タイトル獲得が自分の将棋に影響を与えることはあると思いますか。

A.“タイトルホルダーらしい将棋”というものはないので、やはり自分の将棋を指していくしかないと思います。これから取り組んでいくことは、タイトルを取る前も後も変わらないのかなと思います。

Q.これまで目標としてきた「タイトル」を獲得した今、次の目標としてはどんなことを目指したいですか。

A.今回の棋聖戦王位戦は自分にとっても非常にいい経験だと感じているので、その経験を生かして成長したいと思っています。対局を通して自分の課題が見えた場面もあるので、そこを改善してより強くなれるように取り組みたいと思っています。

Q.藤井棋聖がプロ入り当時に書いた色紙には、「最強の棋士」という目標が書かれています。今、この目標にどこまで近づけたと思いますか?

A.将棋は、どこまで強くなったとしても終わりがないと思っていて、そういう意味では、本当の意味での頂上というものもないのかなと思います。四段になった当初の色紙ということで懐かしいんですが、なかなかいい目標だなと思ったので、引き続きこの目標を胸に頑張っていきたいと思います。

Q.今後長期的な視点で、藤井棋聖が目指す棋士像はありますか。

A.将棋界には、谷川先生、羽生先生、渡辺先生といった本当にすばらしい先輩方がおられますので、そういった方の姿勢を勉強しながら、より多くの方に将棋の魅力を伝えられるようになりたいなと思っています。

インタビューの最後、棋士としての今後の心構えについて、色紙に一筆を求めました。

藤井棋聖が記したのは、タイトル獲得翌日の記者会見でも見せた『探究』ということばでした。

Q.「探究」ということばには、どのような思いを込めていますか。

A.タイトルを取ったときに「探究」と書いたんですけど、やはりその思いは今でも変わらないというか、将棋というものはすごく深いゲームなので、探究心を持って取り組みたいという思いは変わりません。

Q.現在は「王位戦」七番勝負も進行中で、ここまで2連勝です。今後への意気込みを聞かせてください。

A.当然、タイトルを獲得したいという思いはあるんですが、それは「結果」であって、実力をより高めることによってでしか実現できないと思っています。第2局まででも、木村(一基)王位の指し手には非常に勉強になるところが多かったので、そうしたところをしっかりと振り返って、第3局以降に生かして頑張りたいと思っています。

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