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ヒロシさんは幼少期から、なんでもかんでも“みんな”でやらなきゃいけない風潮に違和感を抱いていたそうだ。ピン芸人として大ブレイクしたときも、TV出演が苦痛だったのだという。わがままな話なんですけど、という前置きの後、彼は本心を語った。

「僕は、とにかく集団行動が苦手。お笑い番組に出演させてもらうときも、苦痛だったんです。台本で、思ってもいないことを言わなければいけないこともある。自分が考える笑いの流れと違う雰囲気で編集されてしまう。おかしいですよね。それって、シンガーソングライターの人が作った曲を、スタッフに『やっぱりBメロ変えようか』っていじくりまわされるようなものですよ。もはや、本人の作品ではなくなってしまう」

非常にわかりやすい例えだ。

「他人にいじくられた結果、僕のパートでスベっても、誰も責任をとってくれない。本人が、矢面に立たされるだけなんです。毎日、とにかく辛かった。それに比べると、YouTubeは自分だけで完結できる。ほんとうに楽ですよ」

ヒロシさんは、経営者の顔も持ち、執筆活動や店舗経営まで活動を広げている。もともと「成功するわけない」と言われながらも個人事務所を立ち上げた理由は、とてもシンプルだった。

「ひとりが好きで、事務所も入りたくなかったんです。大手に所属すると、上下関係が生まれるのがストレスで。今思うと、ひな壇もつらかった。ファミリーで賑わうキャンプ場に、僕がソロで混ざり込むようなものですからね。TV出演を減らしてから、気が楽になったんです」

40代になってやっと「ひとりでいいんだ」と思えるようになったというヒロシさん。転機は、ズバリYouTubeだった。

「単純に、TV以外の場所ができたのがうれしかったんです。いろんな人がたくさんいる中で番組出演枠を勝ち取るためには、運や努力、人付き合いが必要。それが、YouTubeニコニコ動画なら、たったひとりで好きなだけ発信ができる。お金も稼げる」

もちろん、チャンネル開設当初から稼げていたわけではない。それでも、初めての動画広告収入が入ったときのよろこびは、忘れられないという。

「最初は、たった数百円。でも、ひとりで作り上げたものをお金にできたよろこびは、たまらなかったです。自信につながるし、みんななんでも発信したほうがいいと思いますよ。何がコンテンツとしてウケるかなんて、わからないですから」

人付き合いを諦めたヒロシさんだが、「ソロキャンプ仲間」が多数いる。ソロなのに? と違和感を覚える人もいそうだが、彼なりの美学があった。

「僕はひとりで過ごしたい人間だけど、同じ趣味を持って、気が合って、距離感を守れる人は貴重です。価値観が近い人となら、うまくやれる。『あくまで別行動だけど、気が向いたら交流もする』くらいの付き合いができるソロキャンプ仲間は宝です」

続けて、ヒロシさんはこう語った。

「自分のことは自分でできる人同士なら、他人を背負わなくてよくて気楽です。もちろん、危険な状況になったら助けるけれど、『複数人でのソロキャンプ』なら、年長者だから仕切らなきゃとか、男だからしっかりしなきゃとか、一般社会で感じる重圧なしで付き合えるのがいいんです」

九州出身のヒロシさんは、もうすぐ50歳になる。「男は稼いで、女は家庭を守るべき」という昭和の価値観で育てられたそうだ。結婚はとうに諦めているという彼だが、恋愛はどうなのか。

「歳をとってからは性欲もなくなって、本当に生きやすくなりましたよ。若い頃は、本当に苦しかったです。人並みに、モテたい欲もあったし。相手を探すためにコンパに行くけど、テーブルの隅っこでポツンとひとりでいるようなことが何度もありました。今は、女性より焚き火を眺めているほうが楽しい」

モテへのコンプレックスは、年齢が解決してくれたそうだ。

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【芸人ヒロシが"集団の掟"から抜けて掴んだ境地】 楽しいはずのキャンプが違和感だらけだった

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旅も人生も一緒、結局は1人で歩くものだ。「1人で生きていけることと、1人で旅ができることは、わりと近いこと。もちろん何人かで一緒に人生を過ごせればいいと思うんだけど、どこかで1人で生きられる力っていうのを持っていたほうがいいじゃない? 経済的にも、家事能力も含めて、男であってもね」。

「僕がささやかに、わりと自由でいられるのは、家事能力があるからです」。70代の沢木はこともなげに言った。「掃除、洗濯、料理、何でも自分でできる。僕は結婚してるから多くのものは妻がやってくれるけれど、自宅から離れた仕事場の維持管理や家事、それに毎日の昼ご飯は自分で作って食べるから、仮に何らかの形で1人で生きなきゃならなくても、全然平気、問題はないんです。

その力はやっぱり人間として自由になっていく、1つの重要な要素だと思っている。経済力と家事能力、1人で生きていける力量を持った2人がゆるやかにパートナーシップを組んで家庭を作っていくっていうの、まあ、理想的だと思うわけです。やっぱり1人で旅するように1人で生きる力量があれば、すごく生きていくのが楽になるよね」。

#アウトドア#交通