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アメリカのトランプ大統領は11日、長年、対立関係にあったイスラエルバーレーンアメリカの仲介で国交の正常化に合意したと発表しました。

トランプ政権は、先月にも、イスラエルとUAEの国交正常化の合意を仲介し、今月15日には、3か国の代表を首都ワシントンに招いて合意の署名式を行う予定で、ことし11月の大統領選挙を前に外交成果をアピールする狙いがあるとみられます。

一方、アラブ諸国パレスチナ問題の解決がイスラエルとの和平の条件だとしてきましたが、UAEとバーレーンがこれを覆す形でイスラエルとの国交正常化にかじを切ったことでパレスチナ側は強く反発しています。

パレスチナ暫定自治政府は、「アラブ諸国の合意や国際的な正当性を吹き飛ばす、極めて危険な動きだ」と激しく非難し、バーレーンに駐在していた大使を召還しました。

ただ、アメリカやイスラエルはほかのアラブ諸国にも国交正常化に向けた働きかけを強めていて、パレスチナ問題をめぐって長年対立してきたイスラエルアラブ諸国の関係改善がさらに進むことで、パレスチナは苦しい立場に立たされています。

パレスチナではバーレーンの対応を非難する人がいる一方、すでに予想されていたことだと冷めた目で見ている人もいます。

このうち、ベツレヘムに住む30歳のパレスチナ人の男性は、「合意は政府が進めたものであって、バーレーンの人たちが行ったものではないが、イスラエルとの国交正常化は許されざる裏切りだ」と非難しました。

また、別のパレスチナ人の男性は、「アラブ諸国には何年も前から裏切られていて、今回それが明らかになっただけだ。和平に向け残りの友人の国に頼るしかない」と話していました。

イスラエルでは歓迎する声が多く聞かれました。

イスラエル人の男性は、「平和は世界で最も美しいことだ。ほかのアラブ諸国イスラエルと国交を結ぶべきだ」と話していました。

また、別のイスラエル人の男性も、「イスラエルとの平和は両国にとって財産になる。先日、パレスチナアラブ諸国に対し、合意に非難する声明を求めたが、却下された。イスラエルの将来は明るいと感じる」と話していました。

アメリカの仲介で1か月の間に中東の2か国が相次いでイスラエルとの国交正常化に踏み切った背景について、元外交官でアメリカの中東政策に詳しい三菱総合研究所の中川浩一主席研究員はハイテク産業の集積地であるイスラエルと、中東経済の中心地、UAE=アラブ首長国連邦、そして経済発展を進めたいバーレーンの3者の思惑が一致したと分析しています。

中川主席研究員は「仲介したトランプ大統領のビジネスの視点が長く動かなかった中東の歴史にうねりをもたらしている」としてオマーンなどほかの湾岸諸国も国交正常化に追随する可能性があると指摘しました。

また中川主席研究員は「コロナ禍の経済対策や人種問題などがトランプ大統領にとって逆風となる中、一連の国交正常化の動きはイランを対立軸に置くことからイスラエルを守ることにつながり、結果としてイスラエルを支持するキリスト教福音派の喜ぶところとなり、選挙対策になるだろう」としてことし11月のアメリカ大統領選挙に向けてトランプ大統領の支持基盤である福音派への支持固めにつながるとの見方を示しました。

一方で、「アメリカの選挙対策で大事なのは中東和平問題ではなく、イスラエルをどう守っていくかだ。むしろパレスチナがますます置き去りになってしまうという意味で、非常に危機感を持つべきだ」とパレスチナ問題を抜きに進む国交正常化の動きに警鐘を鳴らしました。

今回の合意について、イスラエルと対立するイランの外務省は12日、声明を発表し、「この恥ずべき行為は、抑圧されているパレスチナの人たちの記憶に残り続けるだろう。バーレーンの指導者は、罪を犯す政権の共犯者となった」と非難しました。

そのうえで、「この根本的な誤りは、アメリカ国内の選挙のためのものだ」として、アメリカの大統領選挙に向けた政治的な動きだと批判しました。

イラン政府は先月、イスラエルとの国交正常化で合意したUAEについても、「パレスチナの人たちへの裏切りだ」として強く非難しています。

イランにとってUAEやバーレーンは、ペルシャ湾の対岸に位置する国で、今回の声明でも、「イスラエルによって、ペルシャ湾に不安定な状況がもたらされれば、バーレーンや、同じ道を歩む国の責任とみなす」としていて、安全保障上、周辺地域でイスラエルの影響力が高まることに警戒感を示しました。

トルコ外務省は11日、声明を発表し、「UAEの後を追ったバーレーンの決定を強く非難する。これは、パレスチナ大義を支える運動への新たな打撃となるとともに、パレスチナ人の土地の占領を固定化しようというイスラエルの動きを後押しするだろう」と反発しています。

トルコ政府は、アメリカのトランプ政権が打ち出した、イスラエル寄りだと言われる中東和平案を巡ってもパレスチナを支持する立場を鮮明にしていて、先月、UAEがイスラエルと国交正常化で合意した際にも非難声明を出しています。

UAE=アラブ首長国連邦に続きバーレーンイスラエルとの国交正常化に動いたことで地域大国サウジアラビアの動向に関心が集まっています。

サウジアラビアのファイサル外相は先月、アラブ諸国の和平案を維持する考えを強調し、イスラエルとの国交正常化には慎重な姿勢を示しました。

またサルマン国王も今月6日にアメリカのトランプ大統領と電話会談した際、従来の和平案を維持する姿勢を伝えたということです。

しかしサウジアラビアの強い影響を受けるバーレーンイスラエルとの国交正常化に乗り出したことで、サウジアラビアの姿勢に何らかの変化を及ぼす可能性もあり、その動向に関心が集まっています。

バーレーンに先立って先月、国交正常化で合意したイスラエルとUAEでは合意以降、両国の関係を強化する動きが急激に加速しています。

イスラエルアメリカとともに先月末、UAEの首都アブダビに政財界の実務者の代表団を派遣し、イスラエルアブダビを結ぶ民間の直行便を初めて運航しました。

さらにイスラエルとUAEのドバイとの直行便の運航に向けた準備も進められていて、両国の間で人の往来を活発化させる動きが活発化しています。

また経済関係では今月9日、イスラエルの大手銀行の幹部が「合意文書への署名後には、銀行システムでも連携できるようになる」と述べて、金融機関どうしの協力も進めたいという考えを示したほか、イスラエルの病院大手がUAEの投資会社と医療技術の協力で合意したことを発表し、両国の関係を強化する動きが急激に加速しています。

トランプ政権がイスラエルアラブ諸国との関係改善を強く促している背景には、11月の大統領選挙をにらんだ保守層へのアピール中東和平の実現に向けたパレスチナへの圧力、さらに敵対するイランへの包囲網構築という大きく3つのねらいがあるとみられます。

トランプ大統領イスラエル政策で強く意識しているのがキリスト教福音派の存在です。

福音派アメリカ最大の宗教勢力ともいわれ、聖書の言葉を厳格に守ることを教えの柱とし、ユダヤ人の国イスラエルは「神の意志で建国された」としてイスラエルへの支援を重視しています。

トランプ大統領福音派を支持基盤としてイスラエル寄りの立場を鮮明にし、イスラエルパレスチナの間で帰属をめぐる争いのある聖地エルサレムイスラエルの首都と認めるなど福音派の人たちの長年の訴えを実現させてきました。

イスラエルは1948年の建国以来、アラブ諸国とたびたび戦火を交えてきただけにその対立の解消はイスラエルの安全保障の改善につながり、福音派もこれを歓迎しています。

大統領選挙を間近にひかえたタイミングでのイスラエルとUAE、バーレーンとの相次ぐ合意には、トランプ大統領として福音派に実績を強調するねらいがあるとみられます。

またイスラエルパレスチナの対立をめぐる中東和平問題でパレスチナの譲歩を引き出す環境づくりを進める目的もあるとみられます。

トランプ政権は中東和平を「究極のディール」と呼んで独自の和平案を示し解決に取り組んでいますが、和平案がイスラエル寄りの立場を色濃く反映した内容だったためパレスチナ側が強く反発し事態は進展していません。

このためトランプ政権としてはパレスチナを支援するアラブ諸国への働きかけを強めることで、パレスチナ側に間接的に圧力をかけるねらいとみられ、トランプ大統領は11日の会見で「われわれは異なるアプローチをとっている」と述べて、パレスチナ側に譲歩を促すためにも先にほかのアラブ諸国イスラエルとの国交正常化を呼びかけていく考えを示しています。

さらにアメリカが中東最大の脅威と位置づけイスラエルと敵対するイランへの包囲網を構築するねらいもあります。

アラブ諸国のなかにはイスラム教の宗派の違いなどからイランと敵対関係にある国も少なくなく、こうした国とイスラエルとの関係改善を進めることで、アメリカとしてはイスラエルアラブ諸国の構図をイスラエルアラブ諸国対イランの構図へと転換させ、イランを孤立させようとしているとみられます。

アメリカのトランプ政権は、先月のUAEに続き、バーレーンイスラエルと国交正常化で合意したことを明らかにし、今月15日にそれぞれの国の代表を首都ワシントンに招いて署名式を行う予定です。

トランプ大統領としては、ことし11月の大統領選挙を前に外交成果をアピールするとともに、長年対立してきたイスラエルアラブ諸国の関係改善を進めることで、激しく対立するイランへの包囲網を強めたいねらいがあるものとみられます。

これに対しイラン外務省は12日、声明を発表し、今回の合意を「恥ずべき行為」だとして強く非難するとともに、「イスラエルによって、ペルシャ湾に不安定な状況がもたらされれば、バーレーンや、同じ道を歩む国の責任とみなす」とけん制しました。

UAEとバーレーンは、原油輸送の大動脈として知られるペルシャ湾をはさんでイランと向かい合っていて、イランにとっては安全保障上、重要な位置にあります。

このためイランとしては、激しく対立するイスラエルが、UAEとバーレーンに影響力を強めることを脅威と受け止めているものとみられ、地域の緊張が高まることも懸念されています。

バーレーン政府は長年対立してきたイスラエルと国交正常化で合意したことに対し、国民から反発が出ることを警戒しているとみられ、現地の人の話によりますと首都マナマでは12日、警察の車両が頻繁にパトロールしている様子が見られたということです。

バーレーンでは少数派のイスラムスンニ派の王族が権力の座についていますが、2011年には多数派のシーア派住民による大規模な反政府デモが起きています。

このため、政府は今回、イスラエルと国交正常化で合意したことに対しても反発が出ないか神経をとがらせているものとみられ、報道機関による取材も大幅に制限されています。

治安維持を担当するラシド内相は12日、国営通信を通じてイスラエルとの国交の樹立は国の主権に基づく行為で、ハマド国王の賢明さを反映した勇敢な国の立場を示している」とするコメントを発表していて、国民に今回の合意が正しい判断だったとアピールするねらいがあるものとみられます。

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