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日銀の特別制度は、地方銀行などが日銀に預けている当座預金に年0.1%の上乗せ金利を支払うもので、コスト削減や経営統合などを通じて経営基盤を強化する地域金融機関が対象です。

日銀はこの制度の対象に、地方銀行や信用金庫に加えて、新たに信用組合労働金庫、それに農協や漁協を加えることを決めました。

制度は今年度から2022年度までの3年間の時限措置で、日銀としては厳しい経営環境が続く地域金融機関の経営基盤強化に向けた取り組みを後押ししたい考えです。

地域金融機関を巡っては政府も合併や経営統合などに必要な経費の一部を支援する新たな制度を設ける方針で、政府・日銀が経営統合などを資金面で支える異例の措置にそろって踏み出します。

日銀が導入する特別制度は、地域金融機関が日銀に預けている当座預金に年0.1%の上乗せ金利を支払うものです。

金融機関にとっては日銀に預けているだけで、もらえる利息が増えることになります。

地域経済を支えながら、「収益力の強化や経費の削減」、「経営統合」などによって経営基盤の強化に取り組む地域金融機関が対象です。

このうち、「収益力の強化や経費の削減」については、業務の粗利益に対する経費の割合を指標とし、例えば、2019年度と比べた2022年度の改善率が4%以上となることなどを条件とします。

経営統合」については、2023年3月末までに合併や経営統合、それに子会社化を株主総会などで決議し、日銀が経営基盤の強化につながると認めることが条件となります。

この制度は、今年度から2022年度までの3年間の時限措置です。

日銀によりますと、仮に信用組合や農協・漁協も含めたすべての地域金融機関に特別制度が適用された場合、年間、700億円余りを金融機関側が受け取る計算になります。

地域金融機関の統合などを後押しするため、日銀だけでなく政府も環境整備を進めています。

その一つが合併や経営統合などに必要な経費の一部を支援する新たな制度の導入です。

人口減少に直面する地域を主な営業基盤とする地域金融機関が合併や経営統合などに踏み切る場合、30億円程度を上限として、システム投資など必要経費の一部を補助します。

統合の際には、システムの共通化などで多額のコストがかかることがあり、その費用の一部を政府が補助することで、再編が進む環境を整えるねらいです。

こうした資金面での支援策のほか、先月(11月)27日には合併などによって地域での貸出シェアが高くなっても、一定の条件を満たせば独占禁止法の適用を除外する特例法が施行されました。

これにより、同じ地域内の地域金融機関どうしの再編のハードルが下がったことになります。

このように政府と日銀が足並みをそろえる形で地域金融機関の統合などを後押しする制度を相次いで打ち出したことで、今後は実際に再編が進むのかどうかが焦点となります。

地域金融機関の統合などを後押しするため、政府・日銀が相次いで導入する支援策について、地方銀行の間では前向きに活用を検討したいという声がある一方、「これをきっかけに再編が進むことにはならない」として慎重な見方も出ています。

全国地方銀行協会の大矢恭好会長は先月(11月)の記者会見で「再編はあくまで手段であり、目的ではない」としながらも、「再編が必要であり地域での価値が上がるという経営戦略に対してはサポートになる政策だ。再編をする側にとってはありがたい」と述べ、政府・日銀の対応に一定の理解を示しました。

また大矢会長は、日銀の特別制度について、「マイナス金利政策の負の影響を少しでも和らげる意図があるという認識だ」と話しています。

一方、ある地方銀行の頭取は、「歓迎はするが、支援策があるから統合に向かうかというと決してそうではない」と話しているほか、別の地方銀行の幹部も「すでに水面下で経営当統合を検討していた場合は、それを進めるきっかけにはなるかもしれないが、新たに統合を考える直接的な要因にはならない」と指摘するなど慎重な受け止めもあります。

日銀の特別制度について、3年前まで日銀の審議委員を務めた野村総合研究所木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「マイナス金利政策など、2%の物価目標達成に向けたこれまでの日銀の金融緩和策は、地域金融機関にとっては金利が下がって収益が悪化するなど、逆風となってきた面がある。その結果、将来的に金融機関の経営が不安定になるなどの懸念があるため、今回の制度でこれまでの緩和策を少し修正する側面もある」と指摘しています。

また、政府と日銀が相次いで地域金融機関の統合などを支援する制度を打ち出したことについて、「非常に規模が小さくてすでに競争力や収益性を失ったところには、生き延びていくためにも統合をぜひ考えてほしいという思いはあると思う。ただ、金融機関にとって、統合や合併は非常に重たい選択肢であり、今回の制度をきっかけに、一気に増えるということにはならないのではないか」と話しています。