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新型コロナウイルスの感染者が世界で2番目に多いインドでは、先月からワクチンの接種が始まり、政府は医療従事者や50歳以上の人、基礎疾患のある人を優先し、夏までに3億人に接種する計画です。

この大規模な計画の実行に向け、政府は「Co-WIN」と呼ぶ新たなデジタル・プラットフォームを開発しました。

接種を希望する人は専用のアプリにインド版のマイナンバー、「アーダール」などをひも付け、電話番号や基礎疾患の有無などを入力して登録します。

準備が整うとアプリで会場や日時を選んで予約できるようになり、接種の回数などが管理できるほか、接種を受けた証明書もデジタルで発行され、必要に応じて交通機関や飲食店を利用する際に提示できるということです。

政府にとっても、優先接種の対象でない人が抜け駆けで接種を受けることなどを防げるほか、接種の全体状況や各地のワクチンの在庫状況も適切に把握できるとしています。

この仕組みの運用に携わるインド電気通信規制庁のシャルマ前長官は「接種状況を記録するのに必要不可欠なものであり、政府と個人、双方にメリットがある」と有効性を強調しています。

インドでは、「アーダール」と呼ばれるインド版のマイナンバーがさまざまな行政サービスのデジタル化で大きな役割を果たしています。

ヒンディー語で「基礎」を意味する「アーダール」は12桁の個人識別番号で、およそ10年前に作られました。

利用者は指紋や虹彩と呼ばれる瞳の模様などの情報を登録し、個人と番号とをひも付けます。

もともと貧困層への給付金の配布のために導入が始まり、今では、本人確認の手続きや電子署名、電子決済など、さまざまな手続きをスマートフォンやパソコンでできるようになっていて、人口13億のうち90%以上が登録しています。

「アーダール」を活用したデジタル行政の仕組みを作った、IT企業インフォシスのナンダン・ニレカニ会長は「パンデミックにおいて、ペーパーレス、キャッシュレス、そして対面しなくても成り立つ仕組みはとても便利だ」と話しています。

そして「政府には異なる省庁や局があり、それぞれ独自のシステムを作っていてシステムどうしがつながっていないことが多い。アーダールは横串を刺した仕組みにしたことで、便利で簡単に使えるため、多くの国民が使っている」と述べ、利便性を強調しました。

インドでは新型コロナウイルス対策として行われた貧困層などへの現金給付でもデジタル技術が活用されました。

去年3月、インド政府は、全土で厳しい外出制限を行ったことで経済に深刻な影響が出たため、貧困層や失業者などに現金の給付を行いました。

対象は4億2000万人、総額は日本円で9800億円に上りました。

給付はアーダールにひも付いた個人の預金口座にオンラインで送金するシステムが利用され、政府は支援を必要とする人を速やかに特定し、迅速に給付できたとしています。

首都、ニューデリーの貧困地域で夫と2人の子どもと生活するラトネシュ・カシャップさんも給付を受けた1人で、屋台で生計を立てていた夫が外出制限によって仕事を失い、月に1万円余りあった収入がなくなりました。

給付金は、政府が支給を決めてから1週間後に最初の振り込みがあり、3回にわたって合わせて2000円余りが支給され、食料の配給など、ほかの支援と合わせて生活を続けることができたといいます。

カシャップさんは「給付金によって日用品などを買うことができとても助かりました」と話していました。

インド政府は、医療分野でもデジタル化を推進していく方針ですが、個人情報の保護の観点から懸念の声も出ています。

モディ首相は、去年8月の独立記念日の演説で「保健分野に革命をもたらす『ナショナル・デジタル・ヘルス・ミッション』を始める。診察の予約や支払いなどの問題を解決する」と述べ、医療分野でもデジタル化を推進する方針を明らかにしました。

計画では国民一人一人に医療IDが付与され、かかった病気や処方された薬のほか、診察した医師や診察内容が記録され、データベース化されます。

患者の同意のもとでデータが医師や医療機関などと共有され、患者は迅速に効率的な医療を受けられるようになるほか、政府や民間企業も膨大なデータを基に必要な政策を決めたり、新たなサービスを開発したりできるようになるとしています。

一部の地域では試験運用が始まっていて、政府は全国に拡大する予定ですが、個人情報の保護の観点で専門家からは懸念の声も上がっています。

デジタル分野での個人情報の保護を訴える国際的な団体のラマン・ジット・シン・チマさんは「インドには適切なデータ保護の法律がなく、健康に関する個人情報が政府だけでなく民間企業にも提供され、利用されることが大きな懸念だ」と話しています。

そのうえで「膨大なデータを集めているが政府と独立した監視機関がない。データやプライバシーを保護する独立した機関による開かれた議論が行われるべきだ」として、拙速にデジタル化を進める前に個人情報保護などの仕組みづくりを進めるべきだと指摘しています。

行政のデジタル化に詳しい一橋大学の市川類教授は、インドの事例から日本が学べる点について「インドの場合は、個人識別番号を作るにあたって新しい省庁を作り、デジタルに詳しい非常に有力な民間企業の人材をトップに据えた。システムを構築する事業者に単に委託するのではなく、政府みずから考えて事業者と一緒に進めていく体制作りが重要だ」と述べました。

また、日本の行政デジタル化の現状について「利用者の目線に立ち、国民にとって利用しやすいシステムができているのかが大きな論点だ。全体的に使い勝手がよいとは言えない」と指摘しています。

そして、新型コロナワクチンの接種に関する情報のデジタル化については「世界では、ワクチンの接種を受けたことを示すデジタル証明書を作る議論もあるので、今後、証明書として使えるようにするためにも、接種情報とマイナンバーをきちんとひも付けていくことは重要で、そういった開発を進めていくことが課題になる」と述べました。

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