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ロシア国防省は23日、黒海を航行していたイギリスの駆逐艦ディフェンダー」が、2014年にロシアが併合したクリミア半島の南部の沖合に入ったため「領海の侵犯にあたる」と警告したと発表しました。

しかし駆逐艦がこの警告に従わなかったため、ロシアの警備艇が警告射撃を行ったほか、軍の爆撃機駆逐艦の航行ルート上に爆弾を投下してさらに警告したとしています。

ロシア国防省はモスクワに駐在するイギリス大使館の武官を呼んで説明を求めたということです。

一方、イギリス国防省は23日駆逐艦国際法にのっとって、ウクライナの領海を航行した。警告射撃は受けていない」とするコメントを出しました。

またウォレス国防相「周辺で演習が行われていることには気付いていた」としていて、射撃はあくまでもロシア側の演習だったという見方を強調しました。

イギリスはロシアによるクリミア併合を認めておらず、公共放送BBCは、駆逐艦をめぐる一連の動きは、ロシアに対し、国際的な海域における航行の自由の権利を主張するねらいがあるという見方を伝えています。

黒海では、まもなくNATO北大西洋条約機構ウクライナ軍が大規模な軍事演習を行うことになっていて、ロシアは「緊張を高めるだけだ」として軍事演習の中止を求めるとともに、警戒を強めています。

イギリスの公共放送BBCによりますと、駆逐艦の上空には20機以上のロシア軍の爆撃機が飛行していたほか、警備艇2隻が駆逐艦の航行を妨げようとしたとしています。

取材のため駆逐艦に乗船していたBBCの記者は、駆逐艦がロシアに併合されたクリミアに近づく際には、乗組員は戦闘に備える動きをしていたと伝えています。

またロシアの警備艇は一時、駆逐艦から100メートルほどの距離まで近づいてきたということです。

そして「船の針路を変えなければ、射撃する」などと警告する無線の音声が聞こえ、実際に遠くで射撃の音が聞こえたとしています。

駆逐艦の艦長は、国際的に認められた安全な航路を通ったと主張したということです。

BBCは、イギリスとしてはロシアと対立しようとしているのではなく、国際的な海域における航行の自由の権利を主張するねらいがあるという関係者の見方を伝えています。

ロシア国防省は、首都モスクワで安全保障をテーマにした国際会議を開いていて、23日は、プーチン大統領による動画のメッセージが上映されました。

プーチン大統領NATOの軍事力がロシアの国境付近で継続的に増強されていることに懸念を抱かざるをえない」と述べ、NATOがロシアの国境付近で軍事演習などを続けていると警戒感を示しました。

また、ロシア国防省のGRU=軍参謀本部情報総局のコスチュコフ総局長が、アメリカや日本、インド、それにオーストラリアの4か国からなる「クアッド」と呼ばれる枠組みに触れ「伝統的に独立した外交政策をとってきたインドも巻き込んでアメリカがNATOのようなものを作ろうとしている。アメリカは、この地域において支配権を確立しようとしている」と危機感を示しました。

ロシアとしては、NATOが旧ソビエトの国々も含めて加盟国を増やして拡大してきたなかで、アジア太平洋地域でもアメリカが多くの国を巻き込んでロシアや中国に対抗する動きを強めていると警戒しています。

ロシア軍は23日から北方領土択捉島国後島などで大規模な軍事演習を開始したと発表しました。

ロシア軍の東部軍管区によりますと、演習は2つの国家間の対立を想定したもので、北方領土択捉島国後島、それにサハリンなどで5日間の日程で行われます。

演習には1万人以上の兵士のほか、最大で500台の軍事車両、航空機およそ30機、艦船およそ10隻が参加し、上陸作戦なども行うということです。

ロシアはオホーツク海と太平洋を結ぶ北方領土周辺を軍事的な要衝の1つと位置づけていて、ことし2月にも、千島列島の演習場で合わせて1000人以上の兵士が参加する演習を行っています。

ロシアがこうした軍事演習を繰り返す背景には、北方領土を自国の領土と誇示するとともに、アジア太平洋地域で軍事力を強めているとみているアメリカをけん制するねらいもあるとみられます。

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