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東芝のガバナンス強化委員会は12日、6月に公表された調査報告書を受けた再調査で、車谷暢昭元社長や退任した執行役2人について善管注意義務違反はなく、法的責任を問うことはできない」と結論付けた。

  発表によると、豊原正恭元副社長と加茂正治元上席常務が経済産業省と緊密に連携して行った一連の行為は違法性はなかったと認定。その一方で「市場が求める企業論理に反する行為であると評価せざるを得ない」と結論した。

  また、同委は、株主提案についての受け止めや経産省との連携がほとんどの取締役と共有できていなかったなど「ガバナンスが十分効果的に機能しなかったことが一連の行為を生んだ真因」と結論付け、執行役の業務執行を適切に監督するモニタリング態勢の再構築が急務であると指摘した。  

  一方、昨年7月の定時株主総会の運営が公正に行われなかったとする6月調査の結論に関する検証についての具体的な記載はなかった。

  6月調査は同社の筆頭株主、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの求めで行われた。東芝はこの問題を再調査するため、8月に同委員会を設置していた。

  同社では、6月の報告書の指摘を真摯(しんし)に受け止めるとして、社外取締役2人と執行役2人が退任。同月の定時株主総会では取締役会議長だった永山治氏ら2人の再任も否決されるなど混乱が続いた。

東芝では、去年開かれた株主総会をめぐり、調査をした弁護士が、“モノ言う株主”の提案を妨げようと、会社が経済産業省と緊密に連携して不当な影響を一部の株主に与えるなど「公正に運営されたものとはいえない」などと指摘していました。

これについて会社は、第三者を含めた委員会をつくって改めて調査し、12日報告書を公表しました。

報告書では、東芝側と経済産業省のやり取りに、行政庁がかかわるはずのない企業と株主との交渉過程に関する相談が含まれていたり、株主総会の対応で強力な支援を求めたりするなど「第三者の目には、あまりに密接すぎる関係で、密室的な交渉に映る」と指摘しています。

そのうえで、この2人の執行役の対応と、当時の社長で執行役の対応を事後的に承認していたとみられる車谷氏について、法令の違反は認められないが、株主対応の公平性や透明性に疑義を抱かせるなど「企業倫理に反する」と指摘しました。

一方、経済産業省の対応については違法ではなく、裁量の範囲を逸脱していないとしています。

また報告書は、東芝に対し、行政庁に依存しすぎる体質を改め、外資投資ファンドなどとも建設的な対話を重ね、経営方針について理解を得る努力を重ねることが必要だと指摘しました。

大手電機メーカーの東芝は、社会インフラや半導体など多岐にわたる事業を再編し、3つの会社に分割する方針を決めたと発表しました。国内の大企業が会社を分割するのは異例で、東芝では分割によって競争力の強化や株主価値の向上につながるとしています。

発表によりますと、東芝は、▽発電などのインフラサービス事業と▽ハードディスクなどのデバイス事業を行う2つの会社を新たに設立し、2023年度下期の上場を目指します。

東芝本体は、半導体大手の「キオクシアホールディングス」の株式などを保有する会社として存続させることにしています。

東芝の株主に対しては、新しくできる2つの会社の株式を分配することにしています。

社会インフラや半導体など幅広い事業を展開しおよそ300の子会社を抱える東芝のような国内の大企業が会社を分割するのは異例です。

東芝では3つの会社に分割することで、それぞれの戦略が明確になり、意思決定もスムーズになることから、競争力の強化や株主価値の向上につながると説明しています。

幅広い事業を手がける東芝は、事業を3つに再編することで、会社の価値が、事業ごとの価値の合計より小さく評価されるいわゆる「コングロマリット・ディスカウント」も解消できるとみています。

東芝が抱える事業のうち、半導体などは短期間で市況が変わり、速やかに増産や投資を行います。

一方、水素電池や発電設備などのインフラ事業は、数十年単位で今後の動向を見越して投資や研究開発を行う必要があり、事業ごとにビジネスのサイクルが異なっていました。

こうした中で、それぞれの事業が相乗効果を生むのではなく、かえって非効率な経営になっているのではないかといった見方も市場にあったのです。

東芝は事業を3つに再編して各社の経営を独立させることで、より機動的に意思決定を行い、それぞれの企業の価値を高めるねらいで、株主がそれぞれの事業について企業価値を判断しやすくなるという効果もあるとみています。

東芝の綱川社長は会見で「事業を再編するのは、コングロマリット・ディスカウントの解消が目的ではないが、結果として解消される可能性があると感じている」と述べました。

一方、東芝原子力や火力発電、防衛関連の事業を抱えているほか、量子暗号通信や人工知能など世界から注目される高い技術力もあります。

会社の規模が小さくなることで海外の企業からも買収されやすくなるおそれもあるとして、経済安全保障の面から今回の分割を懸念する声もあります。

企業の分割をめぐっては、アメリカの大手メーカー、GE=ゼネラル・エレクトリックも今月、経営の効率化を図るため、事業を航空機エンジンと医療機器、それに電力に再編し、会社を3つに分割する計画を発表しています。

東芝の綱川智社長はオンラインで記者会見し、多岐にわたる事業を3つの会社に再編し、会社を分割することは成長のチャンスだと述べ、意義を強調しました。

綱川社長は、会社を分割する方針を決めたことについて「極めて大きな変化であるが、逆にそれぞれが分離、独立していく中で、東芝の経営理念を引き継ぎながら、それぞれの事業を成長させるチャンスになる。専門的な執行部が早く決断し、グローバルで競争に勝ち抜く体制にする」と述べました。

また、分割で会社の規模が小さくなることについては「会社を分けてもかなり規模は大きい。スピード経営するメリットのほうが大きい」と述べました。

さらに総合電機メーカーの事実上の解体ではないかと問われると「そもそもテレビも家電もパソコンもなくなり、総合電機メーカーという感覚はない。私にとっては解体ではなく未来に向けた進化だと考えている」と強調しました。

1875年創業の東芝は日本を代表する総合電機メーカーとして、カラーテレビや冷蔵庫、それにパソコンなど、数々の製品を世に送り出してきました。

また家電製品だけでなく、原子力発電や半導体など、事業は多岐にわたり、最盛期にはグループ全体の従業員が20万人を超えました。

しかし、2000年代に入り、韓国や中国のメーカーから追い上げを受け、家電などの事業は不振に陥ります。

業績回復のため歴代の社長が「チャレンジ」と称して売り上げや利益の目標を必ず達成するよう指示した結果、2015年には不正な会計処理が明らかになりました。

この問題で3人の社長経験者が辞任しました。

さらに東芝は、アメリカの原子力発電プラントのメーカー「ウェスチングハウス」を2006年に買収しましたが、福島第一原発の事故のあと原子力事業の採算も悪化します。

結局、ウェスチングハウスは2017年に巨額の損失を出して経営破綻し、東芝本体もこの年度の決算で日本の製造業で最大となる9600億円余りの最終赤字を計上しました。

東芝は経営立て直しのため、主力事業を売却せざるを得なくなり、冷蔵庫などの白物家電事業、テレビ事業、医療事業を他社に売却したほか、稼ぎ頭だった半導体メモリ事業も手放し、「総合電機メーカー」としての形を維持できなくなりました。

さらに東芝は2017年に、海外の投資ファンドなどから総額6000億円の出資を受けました。

その結果、財務状況は改善しましたが、「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」など、いわゆる「モノ言う株主」が大株主となったことで、現在の会社と株主が対立する状況が生まれました。

東芝の経営は、いわゆる「モノ言う株主」として知られる投資ファンドとの対立で、混乱した状態が続いています。

それが表面化したのが、去年7月の株主総会でした。

筆頭株主投資ファンド、「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」などが自ら選んだ社外取締役を増やすよう求める株主提案を行いました。

この提案は否決され、会社側が提案した通りの取締役が選任されましたが、当時の車谷暢昭社長の再任への賛成は57%余りにとどまるなど、株主が経営陣に対して厳しい目を向けていることが示されました。

そして、ことし4月には、東芝投資ファンドの「CVCキャピタル・パートナーズ」などから買収の提案を受けていることが明らかになりました。

提案のねらいは、買収によって東芝の株式を非公開化し、外部からの影響を受けない体制にすることにあったとみられます。

しかし車谷社長がかつて、このファンドの日本法人のトップを務めていたことなどから、経営陣の間で提案の背景が不透明だと批判が高まり、その後、車谷氏は辞任を表明しました。

後任には車谷氏の前に社長だった綱川智会長が就任しましたが、株主との対立は続きます。

ことし6月の株主総会では、会社側が提案した永山治取締役会議長ら社外取締役2人の人事案が否決されました。

東芝としては、3つの会社に分割することで経営を効率化させ、株主価値の最大化を主張する投資ファンドの理解を得たい思惑があるものとみられます。

東芝が会社を3つに分割する方針を決めたことについて、明星大学の細川昌彦教授は、「東芝には半導体原子力など、国の安全保障に関わる事業がある。分割されたあと、こうした事業の成長基盤や財務基盤がしっかりしてくるならポジティブに評価するべきだしマイナスになるなら逆の評価になる」と述べました

その上で細川教授は会社が分割され、規模が小さくなることで外国企業に買収されやすくなるリスクもあると指摘し、「安全保障上、重要な事業を抱える会社として成長基盤や経営体制をしっかりしていけるかが問われる。経営者自身もそういう視点できちんと説明責任を果たせなければだめだ。会社が大きくても小さくても重要性は変わらないので、同じように厳しい目で見られることを前提に考えなければいけない」と話していました。