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RCEPには日本や中国、韓国ASEANなど15か国が参加していて、このうち日本や中国、シンガポール、オーストラリアなどまずは10か国で1月1日に発効します。韓国は2月1日に発効することになっています。

日本にとって最大の貿易相手国である中国と3番目の韓国といずれも初めての経済連携協定になります。

シンクタンク「みずほリサーチ&テクノロジーズ」の分析によりますと、中国向けの輸出では関税が即時撤廃される品目の割合は16%余りです。

協定発効から11年目までに関税が撤廃されるのは全体で63%余りで、ほかの経済連携協定と比べて撤廃のペースは緩やかです。

また日本はコメや牛肉、それに乳製品など重要な農産物5品目の輸入ついては関税撤廃・削減の対象からすべて除外しています。

今後15か国すべてで発効すれば世界の人口やGDPのおよそ3割を占める巨大な貿易圏が生まれることになります。

新型コロナの感染拡大によってもろさを露呈した部品の供給網=サプライチェーンの強化や貿易の拡大による経済押し上げ効果が期待されています。

RCEPの発効で工業製品や農林水産品にかけられていた関税の撤廃率は全体で91%です。

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の95%から100%と比べると低い水準ですが、中国と韓国の無税となる工業製品の品目割合が中国は8%から86%に、韓国は19%が92%となり日本の輸出には大きなメリットとなりそうです。

このうち中国向けの輸出では関税が撤廃されるのは自動車部品や鉄鋼製品、水産品などが主な品目です。

工業製品で即時撤廃されるのは
▽建築資材などに使われる「熱延鋼板」の一部
それに
▽「合金鋼」と呼ばれる鉄鋼製品の一部などです。
また
▽エレベーターの部品も即時撤廃されます。

自動車分野は品目によって対応が異なります。
▽エンジンポンプの一部は即時撤廃となりますが
▽エンジン部品のほとんどが11年目と16年目に
▽EV=電気自動車に使われるモーターの一部は16年目と21年目に関税が撤廃されます。

中国は世界最大の自動車市場で、自国の産業を保護する観点から関税撤廃までの期間が長くなっているものとみられます。

農林水産品では
▽日本からの輸出額が大きいほたて貝は11年目または21年目に
▽日本酒やパックご飯は21年目にそれぞれ撤廃されます。

一方、日本への輸入について工業品の関税撤廃率は98%を超えているものの、農林水産品では56%でTPPと比べて大幅に低い水準に抑えられています。

コメや牛肉、それに乳製品など重要な農産物5品目の輸入ついては関税撤廃・削減の対象からすべて除外しています。

中国から日本への工業製品の輸入で関税が即時撤廃されるのは
▽衣類を除く糸、織物、そのほかの繊維製品の一部や
▽銅、ニッケル、アルミニウム、鉛などの一部などです。

また多くの品目の関税が段階的に削減されることになっています。

▽衣類はほとんどが16年目に
▽革製品や毛皮などは一部の除外品を除いて16年目と21年目に撤廃されます。

農林水産品では
▽国産品とすみ分けができているかきあげや天ぷらなどの冷凍総菜の関税が11年目に、乾燥野菜の関税が16年目に撤廃されます。

中国からの
紹興酒や白酒はそれぞれ21年目に関税が撤廃されます。

ASEAN東南アジア諸国連合は、RCEPの発効によって生産拠点としての重要性が増し、経済成長につながることを期待しています。

企業は、ASEAN各国と日本、中国、韓国などとを横断する形でサプライチェーン=供給網を作りやすくなります。

このため、すでに数多くの工場があり生産コストが比較的低いASEANは、域内における企業の生産拠点としての地位が高まると見込んでいるのです。

ただ、ASEANは、すでにほかの国と個別のFTA自由貿易協定を結んでいるため、関税引き下げによる輸出促進の効果は小さいとされています。

関税引き下げの恩恵を受ける国に輸出を奪われるおそれがあり、UNCTAD=国連貿易開発会議は、ベトナムカンボジアなどがマイナスの影響を受けると分析しています。

ASEANにとっては新たな投資の呼び込みなど具体的な効果に結び付けられるかが課題となります。

RCEPに参加する15か国で最大の恩恵を受けるのは日本だとする試算をUNCTAD=国連貿易開発会議が発表しました。

UNCTADによりますと、RCEPの発効は域内の貿易を2019年の実績より1.8%押し上げ、金額にして418億ドル、日本円にしておよそ4兆8000億円増やすとしています。

この増加分のうち、日本は202億ドルと半分近くを占め、2位の中国の112億ドル、3位の韓国の67億ドルを大きく上回るとしています。

これは、自動車や鉄鋼、化学などの分野で関税の撤廃が進み、日本製品の輸出が増えるためだということです。

アジアに製造拠点を持っている日本のメーカーの間ではRCEPの発効で部品の関税コストが下がるため、つくっている製品の“価格競争力”にもつながると期待が高まっています。

このうち、エレベーターを製造している日立製作所は、日本だけでなく中国とタイにも工場を持っています。

中国とタイの工場では、多くの部品が現地調達ですが、高い性能が求められる重要な部品については、日本で製造し、現地に送っています。

例えば、エレベーターの速度や動作をコントロールする「制御盤」やエレベーターにつながったワイヤーをモーターを使って巻き上げる「巻上機」などは、日本から中国に向けて年間で数千台分を輸出しているということです。

日本から中国に送るこうした部品には、これまで3%から5%の関税がかけられていました。

RCEPの発効でこれらの関税が撤廃されるなどすれば、会社では、コストが下がる分、エレベーターの販売価格を安くすることが可能になり、売り上げを伸ばせるのではないかと期待しています。

日立製作所ビルシステムビジネスユニット柴田真人CPOは「製品やサービスが、より提案しやすくなると考えている。また、各地域の技術やサービスを別の地域で提供できる機会も増えると思うので、それぞれの地域の特性を生かした最適なサプライチェーンを検討していきたい」と話していました。

RCEPの発効を受けて、アジアから安い工業製品、安い農林水産品が国内に入ってくることも予想されますが、日本政府としては、国内の産業を守るだけでなく、輸出を後押しするいわゆる“攻め”の支援を強化していく方針です。

とりわけ食品をめぐっては、中国や韓国が東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、福島県をはじめとする日本の食品の輸入規制を続けています。

日本政府としては、引き続き、こうした規制について見直しを働きかけながら、RCEPをてこに、酒や食品をはじめとした日本の農産品の輸出拡大を実現できるかどうかが課題となりそうです。

RCEPは中国にとって初めて参加する大型の経済連携協定です。

これまで協定がなかった日本との間で関税の撤廃が進むことなどから、中国は輸出の拡大を期待しています。

さらに域内においてインフラやIT関連、製造業などさまざまな業種の自国企業の進出を促し成長につなげたい考えです。

特に中国の影響力の拡大が見込まれるのが東南アジア地域です。

中国はアメリカとの対立を背景にASEAN東南アジア諸国連合の国々との経済的な結び付きを強めていて、去年にはASEAN各国との貿易総額が前年から6.7%伸びて6800億ドル余り、日本円でおよそ78兆円に達し、最大の貿易相手となったほか、ASEAN各国への投資も大きく増やしています。

こうした関係をRCEPを通じてさらに加速させたい思惑があるとみられているのです。

中国は、日本をはじめとする11か国が参加するTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入も申請していて、アジア太平洋地域での存在感を高めようとしています。

ただ、中国は手厚い補助金による国内企業の優遇が批判されているほか、知的財産の保護が不十分であるなどと指摘されていて、RCEPの発効で世界からの厳しい目にどう向き合っていくかが改めて問われることになります。

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