無断で暗号資産得る コインハイブ事件 逆転無罪確定へ 最高裁https://t.co/sYSe5p1N11
— NHKニュース (@nhk_news) 2022年1月20日
無罪となったのはウェブデザイナーの諸井聖也さん(34)です。
平成29年、サイトを閲覧した人のパソコンの処理能力を無断で利用し、暗号資産を得るプログラム「コインハイブ」を、自分の運営するサイトに埋め込んだとして、不正なプログラムを保管した罪に問われました。
最大の争点はプログラムが不正といえるかで、1審は無罪を言い渡しましたが、2審は逆転で罰金10万円の有罪としたため、諸井さん側が上告していました。
20日の判決で最高裁判所第1小法廷の山口厚裁判長は「不正なプログラムかどうかは、社会の信頼や機能を保護する観点から、動作の内容に加え、パソコンの情報処理に与える影響や、プログラムの利用方法などを考慮し、社会的に許容されるものか判断する必要がある」という考え方を初めて示しました。
そのうえで「サイトの運営者が閲覧によって利益を得る仕組みは情報の流通のために重要だ。被告はプログラムを収益のために利用したうえ、社会的に受け入れられている広告を表示するプログラムと比べても、コンピューターへの影響などに違いはなく、社会的に許容できる範囲だ」として、2審の有罪判決を取り消し、無罪が確定することになりました。
判決の言い渡しのあと、諸井聖也さんは最高裁判所の正門前で、青地に白い文字で「無罪」と書かれた紙を笑顔で掲げました。
コンピューターゲームを連想させる文字のデザインはみずから考えたということです。
諸井さんは「裁判官の言い回しが難しくて最初はピンとこなかったですが、判決の内容も含めてよい結果がもらえて本当にうれしいです。安心してゆっくり眠れそうです」と話していました。
判決のあと、記者会見した諸井聖也さんは「4年間争ってきた裁判が無罪というよい結果で終わり、うれしいですし、日本のインターネットの歴史に汚点を残さずに済んで、ほっとしています」と話していました。また、弁護団長の平野敬弁護士は「これが違法で刑事罰にあたるとなると、ほかのプログラムはどうなるのか、明確な線引きもできない中で有罪とされていた。日本の技術者全体にとっての戦いと考えていたので、最高裁で無罪になって安どしている」と述べました。
また、コインハイブをめぐってはほかにも摘発されるケースが相次ぎましたが「最高裁がこの罪の具体的な解釈を示したことで、警察が乱用的に取り締まることは減っていくのではないか」と話しています。
無罪の判断が示されたことについて最高検察庁の吉田誠治公判部長は「検察官の主張が認められなかったことは誠に遺憾であるが、最高裁判所の判断なので真摯に受け止めたい」とコメントしています。
ウェブサイトのプログラムが違法かどうかが争われた今回の事件。
プログラムがサイトを閲覧した人の意図に反する動作をさせるか、そして不正なものといえるかという2点が争点となりました。
1審は「閲覧した人の意図に反する動作をさせるが、プログラムによってサイトの運営者が得る報酬は、その後のウェブサイトの質の向上につながり、閲覧した人の利益にもなる」などとして、不正なものとはいえないと判断し、無罪を言い渡しました。
一方、2審は「閲覧した人には利益がないのに、知らないうちにパソコンの機能を提供させる不利益を与えるプログラムで、社会的に許される点は見当たらない」として、有罪という逆の判断をしました。
これについて最高裁判所は「閲覧者の同意を得る仕組みになっておらず、説明や表示もないため、このプログラムの動作を一般の閲覧者が認識できたとはいえない」として、意図に反する動作をさせるものだと認めました。
しかし、プログラムが閲覧者のパソコンに与える影響や利用の目的などを考慮したうえで、社会的に許容される範囲内で不正なものとはいえないと判断し、無罪と結論づけました。
警察や官公庁などで情報セキュリティーのアドバイザーなどを務めている立命館大学の上原哲太郎教授は、無罪判決について「今回問われた行為は、ウェブサイトを閲覧させることの対価として行われたもので、それがサイトの閲覧者に非常に小さな影響しか及ぼさず実害が大きくないと判断されたことを考えると、妥当な判決だと思う」と指摘しました。
そのうえで「一番懸念されていたのはイノベーションを生む新しい試みに対して社会的な合意が得られる前に、罪であると断じて萎縮効果に繋がることだが、無罪判決が出たことでそれはだいぶ軽減されると思う。一方で、判決ではコインハイブが利用者の意図に反する動作をさせるものだと認められた。今後、プログラマーはすべての機能について、利用者に十分に理解させなければならないということにもつながりかねず、この点については懸念が残る」と指摘しました。
「コインハイブ」のようにサイトを閲覧した人のパソコンの処理能力を無断で利用して暗号資産を獲得するプログラムは、現在、ウェブサイトを閲覧するブラウザーでブロックする仕組みがあり、ほぼ利用されなくなっているということです。
そのうえで「インターネットで収益のために利用される広告自体が賛否両論あるなか、ほかに収益をあげる手法を模索する中で今回の事件があった。そのトライアルは、今後も行われるべきで、コインハイブに関連してほかにも検挙された人が多くいるので、それらの人たちの社会的名誉の回復を図っていく必要がある」と話していました。
最高裁第一小法廷 令和4.1.20 令和2(あ)457 不正指令電磁的記録保管被告事件 https://t.co/aI3DQv6U9Z
— 裁判所判例Watch (@HanreiWatch) 2022年1月20日
#法律