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米国のバーモント州議会では、選挙管理担当者を脅迫した者の訴追を容易にする法案を審議中だ。メーン州でも、その種の脅迫行為に対する刑罰を強化する法案が提出された。ワシントン州では今月、選挙事務従事者に対する脅迫を重罪とする法案が州議会上院で可決された。

ロイターではこれまで、トランプ前大統領による根拠のない「不正投票」の主張を真に受けた同氏の支持者たちが、選挙管理当局に対する脅迫や嫌がらせを全国的に繰り広げていることを一連の調査報道で伝えてきた。上述の3州では、法案の提出者・支持者が、法的な抑制の強化を求めるきっかけの一つとしてロイターの記事を挙げた。

ワシントン州のデービッド・フロクト州上院議員民主党)は、報道が「より多くの証拠を提供した」ことで、選挙事務従事者を脅迫する者に責任を負わせるための法案への支持が高まったと語る。

メーン州では、ブルース・ホワイト州下院議員(民主党)が起草した法案が通れば、「強制、暴力、脅迫を用いて故意に(選挙事務を)妨害する」人物に対して、これまでより重い刑罰が科されることになる。

同州のシェンナ・ベローズ州務長官は、州の市役所職員2人が暴力で脅迫されたことに言及し、「これは受け入れることができない」と訴えた。

ロイターでは、米国の選挙管理担当者や労働者に対する合計850件以上の脅迫や敵対的メッセージを報じた。ほぼすべてのメッセージが、2020年大統領選挙で敗れたのは不正選挙によるものだというトランプ氏の根拠なき主張をそのまま繰り返していた。これらの脅迫メッセージを閲覧した複数の法学教授や弁護士によれば、連邦の基準に照らして刑事訴追に値するものが100件以上もあるという。

脅迫者が起訴される事例はまれだ。だが、米法務省の選挙事務脅迫問題タスクフォースは21日、ジョージア州の選挙管理担当者3人に対する脅迫文をネットに投稿した容疑で、テキサス州在住の男性を初めて起訴したと発表した。ある司法次官補は、タスクフォースはこの事件の他にも「数十件もの」事例を調査中だと語った。

バーモント州では、ジム・コンドース州務長官とそのスタッフに対して脅迫のボイスメールが送られ、警察・検察とも不起訴を決定したことで、議員らが、言論の自由に関する強力な保護規定を設けた州法について再考しようと動き出した。今月提出された法案による2つの措置では、公務員が標的とされた場合、犯罪的な脅迫の容疑者を訴追することが今よりも容易になり、また刑罰もより重いものとなる。

身元不明の男性からコンドース州務長官のオフィス宛てに敵意に満ちたメッセージが最初に届いたのは、2020年の選挙の直後だ。この男性はその後2021年秋に、コンドース氏とそのスタッフ、さらには以前の脅迫について件の男性にインタビューを行ったロイターの記者2人に対して、脅迫のボイスメールを送った。

この男性は10月のメッセージで「正義のときは来た」と警告している。「てめえらクソったれども、すぐに頭を吹っ飛ばしてやる。確実に」

コンドース氏はあるインタビューの中で、この脅迫者は州法のもとでは責任を問われないだろうと語った。すでに警察・検察は発信者の過去のメッセージを検証し、言論の自由のもとで保護されると判断していた。

コンドース氏は失望し、州議会議員6人に文書を送り、連邦法との整合性を高めるよう州法を調整し、もっと明確な訴追基準を定めるような立法措置を検討するよう促した。

連邦政府当局者は、こうした脅迫行為は深刻であり、調査に値するものと判断した。バーモント州の法執行当局者2人によれば、ロイターが10月にあった脅迫についてバーモント州当局に質問した後、連邦捜査局FBI)がこの件の調査を始めたという。

コンドース氏は、自分が議員らに送ったメールには、脅迫行為が暴力へエスカレートしかねないと懸念する思いを込めたと語る。「私たちが今どんな世界にいるのかという認識、そして何らかの行動を取らなければという理解を示すものでもある」と同氏は言う。

<脅迫か、言論の自由か>

バーモントなどの州で提出された法案は、合衆国憲法がすべての米国民に保障している言論の自由の保護を変更するものではない。バーモント州の法案の賛同者はその立法意図について、州法を連邦の基準に一致させ、暴力をにおわせる脅迫を訴追することを容易にすることだと述べている。

バーモント州で起草された法案は、犯罪となる脅迫行為の定義を明確化し、訴追に向けた複数のハードルを排除するもので、特定個人を標的とする脅迫に限定する要件や、脅迫に含まれる暴力行為を実現する手段・能力を被疑者が保持していることの立証義務が緩和される。もう1つの措置は、公務員への脅迫に対して現在より重い刑罰を与えることになる。

法案作成にあたり議員への助言を行った同州のローリー・ティボー弁護士は、法案は「私たちの自由を損なうものではない」と語る。

バーモント州では、こうしたバランスはデリケートな問題だ。何しろ同州には250年近く前、つまり合衆国憲法制定より10年以上前に、広範な自由言論の保護を成文化した歴史があるからだ。

1777年、英国から独立したバーモント共和国は「言論の自由、意見を文書として公表する自由の権利」を保障する憲法を制定した。この文言は今も同州の憲法に残っている。1798年には、州選出の下院議員であるマシュー・ライオンが、ジョン・アダムズ大統領を批判したことにより「外国人・治安諸法」により収監されながらも再選された。

バーモント州議会では数年前、犯罪的脅迫の訴追を容易にする州法改正が試みられたが、言論の自由を侵害する可能性があるという懸念により廃案となった。だがこの州も他の州と同様に、暴力的な反政府感情、白人ナショナリズム、政治的過激主義に対処する中で、言論の自由という伝統をめぐる緊張が生じている。

バーモント州最高裁判所は2018年、2件の平穏妨害事件について、クー・クラックス・クラン(KKK)構成員を逆転無罪とした。被告は、KKK支持のビラを2人の女性(黒人とヒスパニック系)の車に貼り付けていた。同州最高裁は、ビラはバーモント州法下において保護される言論であると判示した。

さらに昨年、バーモント州ベニントン町は、黒人であるキアー・モリス州議会議員が自称白人ナショナリストから受けた人種差別的ハラスメントに警察が十分に対応しなかったことを謝罪し、13万7500ドル(約1575万円)を支払った。同議員は2018年、議員を辞職している。

これまでのところ、犯罪的な脅迫行為に関する立法措置への世論の反対は目立たない。だが提案者側では、公聴会が始まれば状況が変わると予想している。米国自由人権協会バーモント州支部は「法案を注視している」と述べたものの、まだ賛否を明らかにしていない。

州議会法務委員会の委員長を務めるバーモント州のリチャード・シアーズ上院議員民主党)は、法案に関する公聴会を今月開催しようと計画している。法案のうち一つの提案者である同氏は、法案が可決されても、脅迫者が必ず収監される保証はないと語る。

「しかし、こうした改正を行わなければ、何かが変化する可能性もないと分かっている」



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