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 金融庁が改善命令で示唆した通り、前身の日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行が「明確な優劣を付けずに横並びでごまかしてきた」(みずほ幹部)結果、3つの基幹システムが共存する継ぎ接ぎ体制で決済やATM(現金自動預払機)の管理を続けてきた。そのため、建設開始から250年近くが経つにもかかわらず、未だ完成していないスペイン・バルセロナの教会に喩え、みずほは“金融界のサグラダ・ファミリア”と揶揄されている。

岸田政権の政策の柱を務める木原誠二官房副長官を弟に持つだけに木原氏の起用について銀行関係者の間では、「官邸との距離感の近さで金融庁にプレッシャーをかけるため」と、実力とは関係ない理由で抜擢されたという意見も根強い。他のメガバンクの幹部は、

「明らかに首相官邸金融庁、政治対策でしょうね。はっきり言って、今の金融庁の幹部で永田町、首相官邸と上手にコミュニケーションできる人はあまりいません。みずほの経営幹部たちは、木原社長を起用し、金融庁の口出しをけん制しようとしたに違いありません」

 と話すが、さすがにそのために木原氏を起用したのであれば、みずほの見識が疑われる。だが嘘か誠か、「実際、金融庁幹部も『官房副長官の実兄を社長に起用されるとやりにくい』と漏らしていた」(大手新聞デスク)という。

 ともかくみずほにとって、新体制で「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」を変え、システム障害に歯止めをかけられるかどうかが、同行の未来を左右する。さらにトラブルが続けば、個人の利用者も企業の取引先も株主も離れていき、メガバンクからの脱落も現実味を帯びてくるだろう。

 前出の大手新聞デスクは、「実は金融庁側もみずほとは違った焦りを覚えているはずです」と語る。ATMでのシステム障害は顧客に大きな不便が生じるため、「昨年11月の業務改善命令で歯止めを掛けられなければ、永田町から『金融庁は何をやっているんだ』と矛先を向けられるのは確実」(大手新聞デスク)だというのだ。

 先のメガバンクの幹部は、「金融庁は実は、佐藤FG会長の後任として別の民間企業の経営経験者を起用する案も温めていたんです」と言う。

「2003年に実質国有化された『りそなホールディングス』の会長に、当時JR東日本の副会長だった細谷英二氏が起用されたことで、金融の外からの発想で大胆な改革を進めることができました。しかし、FGの坂井社長が年末に心身の疲労で体調を崩したので、木原氏の前倒し起用などが不可避となってしまった。結果的に、みずほFGの会長と社長、みずほ銀の頭取への大胆な外部人材の招聘などが見送られ、興銀、第一勧銀、富士銀の3行から起用されることになったんです」

 しかし現時点で多くの銀行関係者の予測通り障害の連鎖は止まっていない。

 さらに、「(メガバンクからの)みずほ脱落」の引き金になるのではと危惧されている問題がある。大手自動車部品メーカー「マレリホールディングス」の経営危機だ。

日産自動車系部品メーカーを前身とするマレリは、新型コロナウイルス感染拡大による自動車販売の低迷を受けて売り上げが急減し、昨年末時点で負債が資産を上回る債務超過に陥る恐れが出てきました。マレリの金融機関に対する債務は1兆1000億円規模とみられますが、主力取引銀行のみずほが3~4割程度を占めているんです」(前出メガバンク幹部)

 マレリは「事業再生ADR」という私的整理の手法で、借り入れの棒引きや返済期間の延長を目指しているとされ、3月初旬に向けて、みずほは他の銀行と金融支援の具体策を調整していくことになる。

 他のメガバンク幹部は、「マレリは大手の部品メーカーで、事業再生の仕方によっては雇用や取引先自動車メーカーの生産に大きな影響が出るはずです」と語る。主力取引銀行のみずほが責任を持って、対応を考えていかなければならないはずだが、「システム障害対応や経営体制の刷新に時間を取られ、マレリとの調整がうまく進んでいるようには全く見えない」(同)という。

 みずほ自体のマレリに対する融資額も巨額とみられるだけに、うまくまとめられなければ、みずほへのダメージは必至だろう。