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日銀が3月末に実施した異例の連続指し値オペは、金融緩和を堅持する姿勢を明確にする一方、物価が上向く中で「悪い円安」論にも拍車をかけた。金利の抑制を優先する黒田東彦総裁が政策を修正する可能性は低いとみられているが、円安につながりかねない動きには風当たりも強まっており、来年4月の任期満了まで1年、難しい対応を迫られる。

<YCCの持続可能性>

「日銀はイールドカーブ・コントロール(長短金利操作=YCC)を維持できるのか」。2月中旬にロシアがウクライナに侵攻して以降、在京の外資系証券関係者は顧客からこうした照会を受けたと明かす。オーストラリア準備銀行は2024年4月満期償還債の利回りを0.1%に抑えるYCCを昨年11月に撤廃。ウクライナ戦争に先立つ当時から、インフレの兆候を示す経済環境に対処するため政策を変更した。

「軍事侵攻に伴う原油価格の上昇が追いうちをかけ、日銀も(上下0.25%としている)金利水準を維持できなくなるとの思惑があったようだ」と、この関係者は語る。

外資系証券関係者の予想通り、ウクライナ情勢を受けて日本の長期金利はYCCの上限0.25%に接近。緩和を続けて経済を下支えする方針の日銀は、豪中銀のようなYCC撤廃ではなく金利の抑制に動いた。3月28日、決まった利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペを翌日から3日連続で実施すると通告した。

YCCを防衛する一方、利上げに踏み切った米国との金利差拡大が意識され、円相場は一時1ドル=125円台と2015年8月以来の水準まで急落した。折からの資源高にウクライナ戦争によるエネルギー需給逼迫の恐れ、そこへ輸入コスト高につながる円安という要因が加わり、物価上昇への懸念が広がった。

<財界から批判>

円安は日本経済に追い風とされ、13年に就任した黒田総裁が国債の大規模購入で長期金利を抑え込み、円相場が下落すると株式市場は「黒田緩和」に沸いた。それから9年、日本経済を取り巻く状況は大きく変化した。輸出型企業は海外展開を進め、新型コロナウイルスの世界的流行で訪日客は激減、資源高や供給網(サプライチェーン)の混乱で物価が上がり、円安がプラスとはいちがいに言えなくなった。

今年改選を迎え、有権者の声に敏感になっている自民党のある参院議員は3月28日、ロイターの取材に「逆走車が猛スピードで走ってきたようだ」と連続指し値オペを形容した。「日銀がなぜこういう決断をしたのか知りたい」と、円安を助長する動きを批判した。

経済同友会桜田謙悟代表幹事は29日の定例会見で、今の円相場が「適切な水準だとはとても思えない」と発言。低価格を売りにする衣料品販売大手のしまむらは4月4日の決算会見で、原材料高と円安を受けて秋冬物を平均3─4%値上げする方針を明らかにした。

<円相場は「レンジ内」>

もっとも、これまでの円安水準はアベノミクス相場が始まった13年以降のレンジにとどまっており、表立って政策対応が必要との声は強まっていない。円は対ドルで3月28日に125円台まで売られたが、「黒田ライン」と呼ばれる15年6月の125円86銭には届いていない。

リーマン危機前後の07年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏はロイターとのインタビューで、日銀が指し値オペを連発した背景に「今の円安を危険な水準とは思っていないことある」との見方を示した。

円が一時125円台まで下落してから8日後の4月5日、衆院財務金融委員会に出席した黒田総裁は「円安が日本経済に全体としてプラスに作用しているという基本的な認識に変わりない」と従来の見解を繰り返した。その上で、「いま金融を引き締めれば、景気がさらに悪化して雇用や賃金、企業収益に大きなマイナスの影響が出ると懸念している」と緩和政策を維持する考えを強調した。

それでも、円安がさらに進めば日本経済へのデメリットが大きくなるとの懸念から、政治判断を伴う対応が求められる可能性はある。過去に円安是正に向けた為替介入に踏み切り、「ミスター円」と呼ばれた榊原英資元財務官はロイターとのインタビューで、「130円、135円となったときは(円安が)問題になる」と指摘。為替介入や日銀の金融政策、日米の政策協調などの対応が必要になるとした。

政府は3月29日に日米財務官協議を開き、為替について通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認した。協調介入に含みを持たせたとも取れる対応だった。

<円安か、長期金利上昇か>

ただ、為替介入に踏み切った場合でも効果が持続するかは見通せない。一方、行き過ぎた円安を回避するため、上下0.25%とする変動許容幅を拡大すれば、長期金利の上昇を通じ、財政出動の原資を失う新たなリスクも浮上しかねない。

長期金利が今後1%上昇した場合は利払い費などがかさみ、財務省によると、25年度の国債費は32.5兆円、2%上昇したケースでは36.3兆円に膨らむ。歳出100兆円超の予算の4割に迫る計算となる。

黒田総裁は5日の衆院財務金融委員会で、円安は全体としてプラスとしながらも、最近の為替変動は「やや急ではないかと思っている」と語った。市場は円安けん制と受け止め、円相場は一時1ドル=122.37円付近まで上昇した。

しかし効果は長続きせず、ハト派とみられていたブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事が日本時間同日夜に引き締め加速を示唆する発言をすると、日米金融政策の差が意識されて1ドル=123円台まで再び下落した。6日の東京市場では一時124円まで下げ幅を広げた。

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