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障害者の生活拠点をめぐり、国はそれぞれが望む地域で暮らせるよう、数人で共同生活を送るグループホームの整備などを促す一方、入所施設については入所者の数を段階的に減らす方針を示しています。

しかし、NHKが全国の都道府県に取材したところ、施設への入所を希望し、待機している障害者が去年の時点で少なくとも27の都府県で延べ1万8640人に上っていることが分かりました。このうち、東京や埼玉、広島、宮城など13の都県では待機者が年々増える傾向にあり、知的障害者についてはこの10年間で2倍に増えた県もありました。

待機者が増えている都県に主な理由を尋ねたところ、「障害のある子どもを在宅で介護する親の高齢化」と回答したのが6都県と最も多く、次いで「障害者の人口の増加」が1県でした。そのほかは「調査していないので分からない」としています。

高齢の親が障害のある子どもを介護するケースは「老障介護」と呼ばれていて、障害者の親などで作る団体や専門家によりますと、医療の進歩で障害者の平均寿命が延びたことなどにともなって広がっているとみられ、今後、みずから介護ができなくなった時に備えて子どもの入所を希望する親も少なくないということです。

一方、20の道府県は待機者の人数を把握していないほか、国も調査を行っておらず、実態はさらに多いとみられます。

こうした現状について、障害者の政策に詳しい早稲田大学の岡部耕典教授は「将来に不安を抱える親が子どもを入所させたいというケースが増えていると考えられるが、グループホームを含む地域の受け皿が少ないため、施設を選択している人も多いのではないか。国はまず待機者の現状をしっかりと把握したうえで、それぞれが望む暮らしができるよう必要な対策をとるべきだ」と指摘しています。

待機者の人数を把握している都府県によりますと、入所施設を希望し、空きを待っているのは主に重度の知的障害者です。

医療の進歩などによって障害者の平均寿命は延びているとされていて、国の調査によりますと、在宅の40歳以上の知的障害者の人口は推計で2000年の7万5000人から2016年には38万2000人と、5倍余りに急増しています。また、2016年に行われた国の調査では、在宅の65歳未満の知的障害者のうち、74%が親と同居していました。

「老障介護」の世帯数そのものを示す統計はありませんが、障害者の親などで作る団体や専門家は、こうした調査結果などから「老障介護」の家庭が次第に増え、結果として施設への入所を希望するケースが相次いでいるのではないかと指摘しています。

全国の都道府県のうち、去年の時点で待機者が最も多かったのは、延べ人数でまとめている16の県では広島県で1664人、実際の人数でまとめている11の都府県では埼玉県で1594人となっています。

このうち埼玉県では、待機者がこの10年間で1.6倍、知的障害者に限ると2倍に増えたほか、親の年代は70代以上が多くなっているということです。

県の担当者は「ここ数年、障害者の人口の増加と親の高齢化がこれまで以上に進み、『老障介護』の不安が高まっている印象だ。このままでは県外の施設を含めて探さなければならず、それぞれが望む地域で暮らすという本来の目的とかけ離れてしまうおそれがある」と話していました。

自宅で重度の知的障害などがある娘を1人で介護している70代の母親は、体力に限界を感じる一方で娘が入所できる施設が見つからず、不安を抱えています。

大阪 八尾市の松江佐枝子さん(73)は、重度の知的障害に加え、両足にも障害がある娘の知美さん(45)と2人で暮らしています。

知美さんは必要とされる支援の度合いを示す「障害支援区分」が最も高い「区分6」で、会話ができず、表情やしぐさで感情を読み取らなくてはならないほか、日常生活の全般で介助が欠かせません。

日中はデイサービスなどを利用していますが、それ以外の時間帯は松江さんが自宅で1人で介護しています。食事の際はごはんを口に運んであげたり、おかずを食べやすい大きさに切り、1つずつフォークで刺して手渡したりしています。やけどをしてもことばで伝えることができないため、切り分けたおかずは松江さんが必ずみずからの舌で温度を確かめてから食べさせているということです。

入浴や着替えも松江さんが介助していますが、知美さんの体調や気分によっては拒否されることもあり、就寝の時間が午前2時を過ぎることも少なくないといいます。

こうした2人の生活は夫を病気で亡くした5年前から続いていますが、みずからも高血圧などで毎日薬を飲んでいるほか、70歳を迎えた頃には右膝を疲労骨折し、今も定期的に通院して痛み止めの注射を打っているということです。

高齢になり、体力に限界を感じるようになったという松江さんは、知美さんとずっと一緒に暮らしたいと願う一方、将来への不安から3年ほど前に娘が安心して暮らせる場所を探すことを決意します。

重度の障害に加え、てんかんの持病もあることから少人数で共同生活を送るグループホームでの暮らしは難しいと考えた松江さん。自宅がある八尾市やその周辺の自治体で、日中に看護師が常駐し夜間も複数の職員がいる施設を探したところ、5か所見つかったといいます。

しかし、これまでに何度も見学に訪れたり、電話で問い合わせたりしていますがいずれも空きがなく、入所できるめどは立っていないということです。

先月3日にも自宅から車で30分ほどの場所にある施設に問い合わせましたが、すでに40人ほどが待機している状態で、職員からは「いつ入れるか分からない」と告げられました。

松江さんは「わが子だからこそこれまで介護を続けてこられましたが、最近は『私が倒れたらこの子はどうなってしまうのだろう』と毎晩のように考えます。このまま娘と暮らしたい気持ちはあるものの、70歳を過ぎ、今のような生活を続けることはできません。考えれば考えるほど不安になりますが、今は施設が空くのを待つしかありません」と話していました。

埼玉県にある重度の知的障害者が暮らす入所施設も待機者が多く、受け入れがほとんどできない状態が続いています。

埼玉県白岡市の障害者支援施設「太陽の里」は県内全域からおよそ60人を受け入れていて、そのほとんどが重度の知的障害者です。

施設では日中、2人の看護師を含むおよそ20人の職員が勤務しているほか、夜間も6人が常駐し、24時間態勢で入所者のケアにあたっています。重度の知的障害者の場合、施設で最期を迎える人も少なくないため、定員に空きが出ることはほとんどないといいます。

しかし、入所を希望し、待機する人は少しずつ増えていて、施設によりますと、県から3か月ごとに届く待機者のリストは、ことし2月の時点で161人に上っていたということです。これに対し、当時は2人しか空きがなく、ほとんどの人は受け入れることができませんでした。

このほかにも、県外を含む障害者の親から毎週のように入所を希望する電話がかかってきていて、最近は70代と80代の親からの問い合わせが最も多いということです。

去年の秋には、息子を介護しているという80代の母親から電話があり「いつ受け入れられるか分からない」と伝えたところ、母親は疲れ切った様子で「もう終わりにしたい」と口にしたといいます。

施設では緊急性が高いと判断しましたが、受け入れることはできないため、親子が住む県内の自治体に連絡するとともに、施設の関係者を自宅に向かわせて母親の様子を確認したということです。
「太陽の里」の園部泰由施設長は「親の年齢などを考えるとすぐに受け入れる必要があるケースも多く、本来であれば『どうぞ入所してください』と伝えたい。しかし、実際にはとても受け入れられないのが現状で、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と話していました。

一方、国は入所施設について、それぞれが望む地域で暮らせるようにするべきだとして、入所者の数を段階的に減らす方針を示しています。

2012年に成立した障害者総合支援法に基づく基本指針で、国は障害者の自立を支援するため、入所施設などから地域での生活に移行するための体制を整備する必要があるとしています。

その柱の一つとなっているのがグループホームです。グループホームは、一般の住宅やアパートなどを活用し、障害者が数人で共同生活を送ります。入所施設と異なり看護師などの配置は義務づけられておらず、それぞれが自宅に近い環境で過ごします。

基本指針では、このグループホームをはじめとする地域の拠点を整備することなどを自治体に求める一方、施設については入所者の数を減らすとして、3年ごとに具体的な数値目標を示しています。

その結果、去年3月の時点で全国の入所者は合わせて12万人余りと、5年前に比べておよそ4500人減少しました。

これに対し、グループホームの入居者は合わせて14万人余りと、この5年間でおよそ4万1000人増えています。

しかし、厚生労働省によりますと、グループホームは障害が比較的軽い人を対象とするケースが多く、全国の入居者のうち、必要とされる支援の度合いが最も高い「区分6」の人は1割に満たないということです。

また、厚生労働省が去年、全国の自治体を対象に行った調査では、回答があった997の市区町村のうち43%が「重度の知的障害者向けのグループホームが特に不足している」と答えていて、整備が十分に進んでいないことが課題となっています。

重度の障害者向けのグループホームが不足している背景には、資金や人手の確保が難しい現状があることも分かってきました。

埼玉県日高市社会福祉法人「日和田会」は、中古の住宅を活用して県内で合わせて19のグループホームを運営していて、重度の障害者も積極的に受け入れています。

グループホームの場合、入所施設と異なり看護師などの配置は義務づけられておらず、夜勤のスタッフも原則、必要ありません。しかし、重度の障害者が暮らすには室内のバリアフリー化やスプリンクラーの設置などが必要で、1軒当たり1500万円ほどの費用がかかるといいます。

また、この法人では24時間の介助が必要な入居者もいるため、夜勤を含め、職員やパートのスタッフを法律で義務づけられた人数よりも多く配置しています。

一方、収入源は国の障害福祉サービスの報酬と月5万円ほどの利用料ですが、報酬には上限があるうえ、初期費用がかさむこともあって運営は厳しく、およそ100人いるスタッフの時給は県の最低賃金に近い1000円前後だということです。

こうした中、求人を出しても若い世代の応募はなく、スタッフの7割は80代を含む高齢者です。

夜勤も高齢のスタッフが担うケースが多く、重度の障害者6人が暮らす日高市グループホームでは、72歳の女性が寝つけない入居者の話し相手になったり、朝食を食べさせたりしていました。

高齢のスタッフにとっては負担が大きいため、急に体調を崩したり辞めたりすることもあり、昨年度は12人を新たに雇った一方、10人が辞めたといいます。

それでも入居を希望する障害者を受け入れたいと去年12月には定員が7人のグループホームを新たに開設しましたが、スタッフが急に辞めてしまい、予定していた人数を受け入れられなくなったということです。
社会福祉法人「日和田会」の萩原政行理事長は「高齢のスタッフに支えられてなんとか運営していますが、重度の障害がある人が暮らす場合、生活の質を確保するには多くの費用がかかります。それが国の報酬に反映されないかぎり、運営は厳しく、必要な人材も集まりません。入所施設の空きを待つ人がいる中、私たちのグループホームでできるかぎり受け入れたいと思っていますが、実際には難しいのが現状です」と話していました。

入所施設の待機者が少なくとも延べ1万8000人余りに上っている現状について、障害者の政策に詳しい早稲田大学の岡部耕典教授は「これまで親元でなんとか暮らしてきた障害者が、親の高齢化によって難しい状況になってきている。こうした中、親が自身の健康不安や将来への不安から子どもを入所させたいというケースが増えていると考えられる。ただ、積極的に望んでいるとは限らず、地域の受け皿が少ないため施設を選択している人も多いのではないか」としたうえで「国はまず待機者の現状をしっかりと把握したうえで、重度の障害者を受け入れるグループホームについてはスタッフを十分に配置できるよう財源を確保するなど、対策をとる必要がある」と指摘しています。

さらに、教授は「待機者を減らし、本当の意味で入所施設から地域への移行を進めるには、グループホームだけでは十分とは言えない。欧米では重度の障害者がみずからヘルパーと契約を結び、24時間の介助を受けながら一人暮らしをする『パーソナルアシスタンス』と呼ばれる支援も活発に行われている。国は地域に多様な選択肢を用意し、それぞれが望む暮らしを実現できるようにするべきだ」と話していました。

※調査日は自治体ごとに異なる

延べ人数でまとめている16県
広島:1664人 岡山:1152人 鹿児島:1137人 山口:872人 熊本:764人 宮城:626人 鳥取:588人 大分:469人 三重:466人 新潟:413人 長崎:371人 兵庫:332人 島根:331人 福井:176人 和歌山:106人 香川:69人

実際の人数でまとめている11都府県
埼玉:1594人 東京:1430人 静岡:1200人 大阪:1064人 愛媛:1050人 茨城:888人 群馬:524人 千葉:482人 長野:309人 徳島:294人 佐賀:269人

※大阪は府内のおよそ半数の施設を調査
岐阜県は3年ごとに集計
高知県は2019年のみ集計いずれも去年のデータはなし

石炭などを大量に使う鉄鋼や化学などの素材産業では、2050年までにカーボンニュートラルを実現するためには24兆円の費用がかかるという試算がまとまりました。

鉄鋼や化学などの素材産業は製造業全体の国内生産の2割を占める基幹産業ですが、製造過程で石炭など大量の化石燃料を使用します。

経済産業省によりますと、2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現には各社とも巨額の設備投資や研究開発が必要であることが分かり、その額を試算しました。

それによりますと、▽鉄鋼業で10兆円、▽化学産業で7兆4000億円、▽セメントで4兆2000億円、▽製紙産業で2兆4000億円となり、素材産業全体で24兆円となっています。

このため、政府は脱炭素に向けた技術開発を支援する2兆円の基金を設けています。

この基金を活用し、例えば鉄鋼メーカーに対しては製鉄の際に二酸化炭素を排出する石炭の代わりに水素を使う研究開発を後押ししています。

政府は素材産業の脱炭素の取り組みを後押しするため、2兆円基金の上積みなど支援の拡充を検討していく考えです。

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