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バイデン米大統領は6日、選挙の激戦州の1つであるオハイオ州を訪れ、米製造業が盛り返していることを強調した。さらに、米製造業への投資を拡大する超党派イノベーション法案を可決するよう議会にアピールした。

労働省が6日発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比42万8000人増加し、市場予想を上回る堅調な伸びとなった。製造業の雇用者は5万5000人増と、前月の4万3000人から伸びが拡大した。

バイデン大統領は、シンシナティ近郊の金属メーカー製造工場を視察後、この15カ月での製造業の雇用の伸びが過去15年で最大になったと指摘。「経済成長を加速させるために製造業の雇用は重要だ。輸出を後押しし、イノベーションを促進する可能性もある」と語った。

さらに「パンデミック(世界的大流行)やロシアのプーチン大統領によるウクライナの戦争による経済危機によって、海外への過度の依存による脆弱性が浮き彫りになった」とし、米国内における製造施設の拡大は重要と強調した。

テキサス州の油田で働いていたジェレミー・デービスさん(38)は2020年、解雇された。17年間働き続けたエネルギー業界を離れることはなかったが、それ以降の職場では不幸な出来事に相次いで見舞われた。

化学製品の生産工場ではシフト勤務に入って約1週間後に入院。その後、別の会社で全く給料が支払われず、5000ドルの持ち出しになった。

デービスさんは「先行きを予測できないことや安定(を欠いていること)にものすごく苛立つときがある」と言う。今はテキサス州オースティン郊外の自宅近くで建設業に従事している。デービスさんはエネルギー業界に戻るのも選択肢の1つだと話すが、当面は今の仕事を続けるつもりだ。

米国とカナダでは、デービスさんのように石油・ガス関連の仕事を離れた労働者が何千人もいる。耐え難い労働条件、辺ぴな職場、不十分な報酬などが理由で、世界がクリーンエネルギーに移行する中、再生可能エネルギー業界に転職した者もいる。

世界的な供給不足で原油相場が100ドル近辺で推移し、政府は石油・ガス生産会社に増産を求めている。ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシア産原油が市場に出回らなくなった影響を相殺する手法を探っているが、米国とカナダの石油・ガス企業は増産にとって労働力不足が足かせになっている。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が始まって以降、大量の労働者が石油開発の職を去った。米国の失業率は足元で3.6%に改善し、パンデミック前を若干上回る低水準となっているが、石油・ガス業界の労働者の数はパンデミック前より約10万人少ないままだ。

カナダでは石油業界の雇用が急速に回復。各社が人材を確保しようと動き、労働者は福利厚生や賃金の交渉で強気の姿勢を打ち出せるようになった。

パターソンUTIエナジーのアンディ・ヘンドリクス最高経営責任者(CEO)は「サンアントニオなどで開く採用説明会は、コロナ禍前には200人程度の来場者が見込めたが、今は50ー100人程度だ」と述べた。同社は現在、米国内の掘削リグ695本のうち6分の1程度の稼働を担っている。

同社は昨年3000人を再雇用し、今年も3000人を追加採用する方針。人材を見つけるためノースダコタ州ウィリストンのショッピングモールにも採用担当者を配置している。

<求む、人材>

カナダのカルガリーを拠点とするペイト・イクスプロレーションズ・アンド・ディベロップメントのダレン・ジーCEOによると、同社は人材さえ確保できれば、油田の掘削を増やす方針だ。同社の石油・ガス生産量は石油換算で日量9万8000バレル。

ジー氏は「人材を獲得できれば多分、今年の設備投資予算を増額する」と述べたが、新規採用した労働者は経験不足の場合が多いとも指摘。石油・ガス業界が適材の新規獲得に苦労している一因として、カルガリー大学が石油・ガス工学の課程を停止した動きを挙げた。

米エネルギー関連サービス業界団体のエナジーワークフォース・アンド・テクノロジー・カウンシルによると、米国の油田サービス・掘削部門の雇用者数は3月に約60万9000人と2021年9月以降で最多だが、パンデミック前の約70万7000人を依然として下回っている。

ペンシルベニア州ゼリエノプルを拠点とする油田会社ディープ・ウェル・サービシズのマーク・マーモCEOは、テキサス州西部などでフラッキング(水圧破砕)作業が現在、2週間から1カ月程度遅れていると話す。「350人を採用した。さらに350人追加採用できれば、全員を作業に投入する」と言う。

労働省統計局の推計によると、石油・ガス部門を含む鉱業・林業では今年1月に1万4000人が離職した。これは2020年序盤以降最多で、2月も約1万3000人が職場を去った。

エナジーワークフォース・アンド・テクノロジー・カウンシルのティム・タープレイ氏は「パーミアン盆地では100人を新規採用して6カ月後には8─9人しか残らない会社もある」と話す。

米国とカナダでの石油・ガス業界は、労働市場の需給逼迫にもかかわらず、生産が増える見通し。しかし業界幹部の話では、より多くの労働者を確保できれば生産が想定を超える可能性もある。

米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、米国の生産量は今年、日量約80万バレル増えて平均で同1200万バレルとなるが、2019年に記録した過去最高の日量1230万バレルには届かない見通し。天然ガス液を含むカナダの生産は日量19万バレル増の日量575万バレルと予想されている。

<アマゾンと競合>

カナダ・アルバータ州の業界団体、ビルディング・トレーズ・オブ・アルバータのエグゼクティブディレクター、テリー・パーカー氏の話では、カナダ辺境のオイルサンド生産地区では、生産設備の重要な保守のため何千人もの労働者が必要な時期に、現場に出向くのをいとわない熟練労働者が減っている。会社側がもはや、こうした不便を強いられる出張に割り増し手当を払っていないためだ。

パーカー氏によると、オイルサンド業界の時給は、熟練度が低い場合で30カナダドル(約3000円)、高い場合で50カナダドル

カナダ統計局のデータによると、鉱業と採石業、石油・ガス掘削業の残業代を含む週間平均賃金は2020年2月以降に7.3%増えた。

油田コンサルタント会社スピアーズ・アンド・アソシエイツによると、米国における生産・非管理職従業員の平均時給は現在、1年前より約5%高く、油田労働者の賃金は年間で約10%増える見込みだ。

だが米労働省統計局によると、石油・ガス掘削部門の平均時給は今年2月時点で45.45ドルと、パンデミック前の20年2月時点の48.37ドルを大きく下回っている。

パターソンUTIエナジーのヘンドリクス氏によると、同社は昨年、歴史的には石油業界より賃金が低い小売業界と競争するため賃金を引き上げた。

「運転手を採用しているアマゾンや、冷房完備の倉庫での人員を募集しているターゲットと競合している。夏場にテキサス州西部の掘削リグで働くよりも楽な仕事だ」と語った。

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