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銀行窓口で銀行職員をだまして現金を受け取れば詐欺罪だが、自分の金ではないことを知りながら、自分の金としてATMから引き出せば電子計算機使用詐欺罪となる。

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 阿武町事件の場合は、容疑者が誤振込みされた4千数百万円の給付金を、ネットバンキングを利用して他の口座に移動させたという点で「虚偽の情報」が入力され、本罪が適用されたものと考えられます。

 なお、他にATMからも多額の現金を引き出しているようですが、これについては別途窃盗罪や占有離脱物横領罪の成否が問題となります(おそらくいずれ再逮捕があるでしょう)。

 以前ならば、誤振込みの場合、受取人には有効な預金債権(預金を引き出す権利)は成立しないので、正当な払い戻し請求権はなく、これを窓口で引き出すと詐欺になり、ATMから引き出すと窃盗罪、ネットバンキングで移動させれば電子計算機使用詐欺罪になると単純に考えられていました。

 ところが最高裁平成8年4月26日の民事判決が、誤振込みの場合であっても受取人には有効な預金債権が成立していると判断して、刑法の考え方に大きな混乱が生じました。

 つまり、毎日おびただしい数の、しかも膨大な金額の振込みが多数の(場合によっては国を越えた)銀行間で行なわれていて、振込みという仕組みは社会に不可欠の資金移動の手段である。だから、それが正しいかどうかを事前にチェックすることは不可能であり、実体のない誤って振り込まれたものであっても、それはそれとしていったんは正当なものとして扱い、後は当事者間ごとに「組戻し」(銀行間でのリセット)や「不当利得返還請求」などの事後的な救済手段を使って是正するしかないとしたのです。

 しかし、誤振込みの受取人は、いわばタナボタの利益を受けるわけですから、引出し行為が民法上は正当な権利であっても、刑法上はその権利行使が違法とされることがあるのではないかという意見が出てきて、論争になったのでした。

 すでに別稿(下記)で説明しましたので詳細は割愛しますが、平成15年に最高裁は誤振込みの事実を知りながら預金を窓口で引き出した行為について、預金債権は有効だとしながらも詐欺罪の成立を認めました(最高裁平成15年3月12日決定)。その理由は、銀行は誤振込みを正す組戻しを行なうことができたのに、受取人がその事実を告げずに預金を引き出す行為は、銀行の利益を損なうものであり、銀行との関係で詐欺行為にあたるというものでした。

 学説は分かれているものの、裁判実務の考え方としては、犯罪の成否は民法とは別に考えるのだという立場です。本件で警察が受取人に対して電子計算機使用詐欺罪の容疑を認めたのも、このような実務の背景があります。

 誤振込みであっても正当な預金債権はあるとした、最高裁の平成8年の判例を前提として考える限り、誤振込みの受取人は預金を法的に問題なく引き出せるのであり、これはいわば口座名義人の預金に対する支配権(占有)が認められたと解さざるをえません。確かに、一方では銀行の保管する金銭には銀行が事実上の支配権(占有)を有しており(だから銀行の金を盗めば銀行に対する窃盗罪となる)、これと預金者が自己の口座の金銭にもっている支配権とが競合するような状態になっています。しかし、預金者は優先的に契約にもとづいて自由に自らの預金を引き出せる権利があり、引き出した金銭についての所有権を取得します。平成8年の最高裁判決は、誤振込みの場合であってもこの預金債権が法的に有効だと認めたわけです。

 そうだとすると、本件容疑者の口座に振り込まれた4千数百万円に対して、彼は(誤振込みであっても)法的に有効な権利をもっているわけです(返還義務があることは当然です)。そして、電子計算機使用詐欺罪における「虚偽の情報」とは、入金等の事実がまったく存在しない実体に合わない情報(架空入金など)のことですから、本件の場合は、「虚偽の情報」を入力したことにならないのではないかと思います。

 確かに、詐欺罪の場合は、重要な事項に関して被害者の判断を誤らせる場合に成立します。この点について平成15年の最高裁決定は、預金債権は有効であるとの前提で、誤振込みの事実を隠すことは銀行側の調査、照会、そして組戻しなどの手続きを取る機会を与えることなく、銀行に直ちに払い戻しをさせたことによって銀行の利益を損なったとしました。しかし、電子計算機使用詐欺罪の場合は、要件は「虚偽の情報」の入力です。これは単純に事実と合致するかどうか、実体に合っているかどうかという観点から問題になります。普通の詐欺罪のように、「重要事項」について相手をだましたのかどうかという観点から判断されるものではないのです。つまり、本件では振込みがあったのかどうかという点だけが問題になるのです。

 このように考えると、本件容疑者は「虚偽の情報」を入力して「不実の電磁的記録」を作ったということにはならないのではないかと思われるのです。

 なお、ATMから引き出した場合は窃盗罪になるという見解もありますが、引出し行為そのものが民法上認められているので、それを窃取行為だと見ることも問題だと思います。その場合、行為者は(正当な)預金債権にもとづいて引き出しているわけで、民法上はその金銭について所有権を取得することになります。したがって、窃盗罪に必要な「不法領得の意思」(他人の物を不法に自分のものとする意思)も認められないのではないかと思います。

 さらに、占有離脱物横領罪という考えも疑問です。これは自らの(正当な)行為によって被害者の支配を離れた物を自分のものとしたということですが、これが占有離脱物横領になるならば、たとえば返却期限が過ぎてしまった図書館の本をそのまま利用している場合も、占有離脱物横領とならざるをえないと思います。

「誤振込みであっても正当な預金債権はあるとした、最高裁の平成8年の判例を前提として考える限り、誤振込みの受取人は預金を法的に問題なく引き出せるのであり、これはいわば口座名義人の預金に対する支配権(占有)が認められたと解さざるをえません。確かに、一方では銀行の保管する金銭には銀行が事実上の支配権(占有)を有しており(だから銀行の金を盗めば銀行に対する窃盗罪となる)、これと預金者が自己の口座の金銭にもっている支配権とが競合するような状態になっています。しかし、預金者は優先的に契約にもとづいて自由に自らの預金を引き出せる権利があり、引き出した金銭についての所有権を取得します。

「実体のない誤って振り込まれたものであっても、それはそれとしていったんは正当なものとして扱い、後は当事者間ごとに「組戻し」(銀行間でのリセット)や「不当利得返還請求」などの事後的な救済手段を使って是正するしかないとしたのです。」

詐欺罪の場合は、重要な事項に関して被害者の判断を誤らせる場合に成立します。この点について平成15年の最高裁決定は、預金債権は有効であるとの前提で、誤振込みの事実を隠すことは銀行側の調査、照会、そして組戻しなどの手続きを取る機会を与えることなく、銀行に直ちに払い戻しをさせたことによって銀行の利益を損なったとしました。しかし、電子計算機使用詐欺罪の場合は、要件は「虚偽の情報」の入力です。これは単純に事実と合致するかどうか、実体に合っているかどうかという観点から問題になります。普通の詐欺罪のように、「重要事項」について相手をだましたのかどうかという観点から判断されるものではないのです。」

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