東北地方に初めて深紅の大優勝旗を持ち帰った仙台育英高校。
— NHKニュース (@nhk_news) 2022年8月31日
「青春ってすごく密」
熱いことばで注目を集めた須江航監督がチームを優勝に導きましたが、その裏には近年成長の著しい東北の高校野球にもまれながら、周到に準備してきた独自のチーム作りがありました。https://t.co/VAFrXYp1uE
4年前の就任後、真っ先に取り組んだのが、メンバー選考のための基準を詳細な数値で示す、独自のシステムの構築です。
選手たちはまず、野球の基礎能力を測る測定会に臨みます。年4回行われ、計測する項目は合わせて18個。
野手の場合、バットのスイングスピードや飛距離、ホームから一塁まで駆け抜ける走塁のスピードなど。
投手の場合、球速や「ストライク率」と呼ばれるコントロールのよさを判断するデータを測ります。
仙台育英 須江航監督
「それぞれに合格の目安となる基準を設けています。スイングのスピードの場合は最低ラインが140キロ、合格ラインが150キロです。投手に関してはストライク率が最低55%以上、できれば65%前後。ストライク率が上がれば自滅で失点することが少なくなります。スピードを満たしていてもストライク率が55%なければトーナメントで登板するのは難しいです」
次に、測定会から出た数値を基に、毎年100人近くが在籍する選手をチーム分けして紅白戦を行います。
紅白戦では実践で発揮されるパフォーマンスのデータをチェックします。
須江監督
「高校時代は自分の実力のなさがすべて原因でしたし、競争の世界ですから実力のない人間に機会を与えられないのは間違ったことではないです。しかし当時は、自分がどれぐらいの位置にいるのか、どんな練習をしたらチャンスが開ける可能性があるのか、どうしたらチームに貢献できるのか、それがわからずに過ごしていました。選手にとって目指していく方向性があったほうが日々の練習に身が入りますし、自分のやっていることに対する迷いがなくなると思ったのです」
須江監督はこれらの細かなデータをチーム編成にも活用しています。
バッターを例に見ると、選手のタイプを5つに分けます。
Aは出塁率が高い選手、反対のEは長打力に秀でた選手。
Cは、どちらもまんべんなくできるバランス型です。
須江監督
「野球は、Eタイプが9人並んでいても得点になりづらかったり、Aタイプだけでは三塁までは進めるけどホームに帰ってこられなかったりします。チームとしてどのタイプの選手が何人必要で、どういう打順の組み方をするのか、丁寧に説明しながら、選手にはレギュラーを目指してどのタイプで自分がエントリーするのかを決めてもらう形で進めています。その5つのタイプの中で選手たちが競争していくのです」
須江監督
「ことしは体が大きくて飛距離を出せるような選手が多くいなかったため、打線には低く速い打球にこだわって練習してきた選手が多く入りました。その象徴が、バランス型のCタイプの齋藤陽です。他に長打力のあるEタイプの選手はいましたが、確実性が高い齋藤を主に4番で起用しました。決勝では0対0の4回、初めて訪れた1アウト三塁のチャンスで、齋藤は初球を低い当たりで打ち返して先制タイムリーを打ちました。これがEタイプの選手だと打ち上げて内野フライを打つケースもあると思います。齋藤はチーム内の競争で勝ち上がってきた自分のよさを忘れずにやりきってくれました」
仙台育英 須江航監督
「今回の取り組みがすべて成功したとは思っていないですし、全国にはまた違うタイプのチームもたくさんありますので、やはりアップデートしていかなければ取り残されてしまうと思います。究極は、自分たちの野球がないチームがいちばん強い、いかようにでも形を変えられる野球が強いと思うんです。それに対応できるような個性のある選手を育成していくこと。もちろん、甲子園が野球のすべてではないですから、同時に彼らが次のステージで輝けるようなフィジカルやスキルを持たせないといけないと思うので、育成と勝利の両立というのを丁寧に見直して進めたいなと思います」
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