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安倍元総理大臣がことし7月に銃撃された現場は、奈良市が今年度中に広場や道路を整備しようと作業を進めていたエリアの一角です。

事件のあと奈良市は現場について、緑地帯にする案や「歩道」にして近くに慰霊碑などを設ける案、そして以前からの計画どおり「車道」にして慰霊碑などを設けない案の、3つの案を検討してきました。

その結果、計画どおり「車道」として整備するとともに、周辺に花壇は設ける一方、弔意を示す慰霊碑などは作らないことを決めました。

検討に当たっては有識者や近隣住民など合わせて42人から意見を聴き「モニュメントなどを設けると、現場を通るたびに事件を思い出すので設置しない方がいい」という意見が多かったということです。

また、通行する人たちの安全を確保する観点からも構造物は作らないことを決めたということです。

奈良市の仲川市長は「多くの市民が利用する場所であり、毎日通る人の思いを考えた時、事件から目を背けたい人の気持ちに配慮する必要あると考えた。憩いの場として活性化させ、事件を乗り越えたい」と話しています。

安倍元総理大臣が銃撃された奈良市の現場は奈良県内の主要駅の1つ、近鉄大和西大寺駅の北出口からおよそ50メートル離れたところにあります。

事件現場は奈良市平成24年度からおよそ62億円かけて、広場や道路を整備しようと作業を進めていたエリアの一角に当たり、工事は今年度中に終えることになっていました。

そのさなか、ことし7月8日、事件が発生しました。
発生当時、安倍元総理大臣の近くにいた奈良市の仲川市長は、事件後の7月14日に行った記者会見で、現場の扱いについて次のように述べていました。

「事件が起きたという場所が何も無かったかのように再整備されるということで、よいのか、よくないのかということは議論が分かれるところだと思います。皆さんが思いを向ける対象が何かあった方がいいのかなとは思っています」

ただ、奈良市役所にはさまざまな意見が寄せられます。

市によりますと、先月29日の時点で、像やモニュメントなど、事件があったことを示すものを設置するかどうかについては、肯定的な意見が30件あったのに対し、否定的な意見は64件あったということです。

国葬」の実施などをめぐっても世論が大きく割れる中、9月28日、仲川市長は決断の難しさを次のように述べていました。

「この事件が社会にどう影響を与えるのかや、歴史的にどう位置づけられるのかまだ定まっていない。何が正解か100点満点の答えがない中での判断を求められているという意味で、私自身もこの問題については正直悩んでいるところがある」

奈良市の方針について、現場近くではさまざまな意見が聞かれました。

奈良市に住む70代の女性は「モニュメントはなくてもいい。街として発展するために道路として整備する方がいいと思います」と話していました。

買い物などで近くの大和西大寺駅を利用するという京都府木津川市の60代の女性は「買い物に来るたびに思い出してしまうし、あえてつくらなくてもいいのではないでしょうか。凄惨(せいさん)な事件だったので、きれいにした方がいいと思います」と話していました。

一方、京都府精華町の60代の男性は「車道にしてもいいが大きな事件だったので何か残してもいいと思う」と話し、奈良市の10代の男性は「道の真ん中で邪魔になってはいけないので別の場所に慰霊碑などをつくればいいんじゃないかと思う」と話していました。

政治家が被害者となった過去の事件では、現場はどのように扱われているのでしょうか。

大正時代の原敬、昭和初期の浜口雄幸の2人の総理大臣が襲われた東京駅のそれぞれの現場には、発生場所を示す印が床に埋め込まれ、事件について記された板が近くに設けられています。

昭和35年に当時の社会党の委員長、浅沼稲次郎が演説中に襲われた東京の日比谷公会堂の場合は、現場には何もつくられていませんが、3階のロビーに発生日や事件についての説明が書かれたレリーフが設けられているということです。

ただ、レリーフは現在、ベニヤ板で覆われ、建物も耐震工事のために入ることができなくなっています。

#アウトドア#交通