“令和臨調” 政府と日銀に新たな「共同声明」作成を提言 #nhk_news https://t.co/riZbkOKHQN
— NHKニュース (@nhk_news) 2023年1月30日
経済関係者や大学教授などの有識者が参加する「令和国民会議」、通称「令和臨調」は、10年前に政府と日銀が結んだ「共同声明」を見直して、賃金の上昇を伴った持続的な経済成長を目指し、財政・金融政策の改革に取り組むよう提言しました。
去年6月に発足した「令和臨調」は、30日に初めてとなる政策提言をまとめました。
この中で、10年前に、デフレからの脱却と、2%の物価上昇のもとでの持続的な経済成長を目指した、政府と日銀の共同声明について、「意図は正しかった」としながらも、日銀の大量の国債購入が財政支出の拡大を支え、成長に不可欠な改革が先送りされてきたとしています。
また、大規模な金融緩和策の限界も見え始めていると指摘しています。
そのうえで、新たな「共同声明」を作るよう提言し、
▽賃金の上昇や安定的な物価上昇によって、持続的な経済成長を実現するための環境を作ることを、政府・日銀の共通目標とすべきだとしています。そして、
▽政府に対しては、財政支出の重点化を進めるとともに、歳出や歳入の改革によって持続可能な財政構造を確立し、財政の信認を回復するための仕組みを構築するよう求めました。一方、
▽日銀には、できるだけ早期に実現するとしてきた「2%の物価目標」を、長期的な目標として新たに位置づけ、金利機能の回復と国債市場の正常化を図るよう求めました。提言をまとめた三菱UFJ銀行の平野信行特別顧問は会見で、「このまま政策が続けられれば、危機的な事態に陥りかねないという危機感があり、これ以上、待てないということだ。新しい資本主義の政策が本格的に稼働し始め、日銀総裁が任期満了を迎える、このタイミングが非常に重要だ」と述べました。
今回の提言では、10年前に共同声明が出されて以降の、政府や日銀の政策対応について厳しく評価しています。
【10年前の共同声明 評価】
10年前の共同声明では2%の物価目標を掲げたほか、政府は、成長戦略の実施や、持続可能な財政の確立に向けて取り組みを推進するとしていますが、これについて、「政府が共同声明で約束した成長戦略は、十分な成果をあげておらず、財政健全化に対するコミットメントも守られていない」と指摘しています。
そして、
▽日銀の大規模な金融緩和と、それに伴う国債の大量購入が、政府側の財政の歳出拡大を事実上支えてきたとし、「財政政策と金融政策は、負の相互作用を及ぼしてきた」「バラマキ的財政支出に歯止めがかからない」と、厳しく批判しています。そのうえで、「10年の取り組みを検証し、新たな連携の在り方を明らかにすべきではないか」としています。
【新たに示された共同声明の骨子案】
▽生産性向上や賃金上昇、安定的な物価上昇が起こる持続的な経済成長を実現するための環境作りを、政府・日銀の共通目標として掲げています。
▽政府に対しては、財政支出の重点化を進めて潜在成長率を高めるとともに、労働移動の円滑化や、社会のデジタル化などの構造改革を加速させることを求めています。
さらに、歳出や歳入の改革によって持続可能な財政構造を確立し、財政の信認を回復するための仕組みを構築すべきだとしています。
一方、
▽日銀に対しては、できるだけ早期に実現するとしてきた「2%の物価目標」を、長期的な目標として新たに位置づけ、安定した物価上昇を伴う持続的な経済成長を目指すこと。さらに、金利機能の回復と国債市場の正常化を図ることを求めています。
そして、
▽政府・日銀の連携が円滑に進んでいるかどうかや、日本経済が持続的な成長に向かっているかどうかを定期的に検証、指摘する、制度的な仕組みを整備することを提言しています。また、財政の持続性や金融緩和の副作用として、政策が、今後、正常化に向かう過程で発生することが考えられるコストやリスクについて、具体的に開示するよう求めています。
政府と日銀の共同声明は、10年前、第2次安倍政権が発足した翌月の2013年1月に、内閣府と財務省、それに日銀の間で結ばれました。
共同声明は、デフレからの脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向け、政府と日銀の連携を強化して一体的に取り組むことを打ち出しています。
日銀は、それまで目指す物価上昇率について、「1%を目途」と表現していましたが、共同声明では、物価安定の目標を2%としたうえで、日銀は金融緩和を推進し、できるだけ早期に実現することを目指すとしています。
2013年3月に就任した黒田総裁は、この共同声明にもとづいて、2%の物価安定目標を掲げ、異次元の金融緩和を打ち出しました。
また、共同声明では、政府の役割として、
▽日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを具体化し、これを強力に推進するとしているほか、
▽財政運営に対する信認を担保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを、着実に推進するとしていて、成長戦略や財政の健全化の取り組みを求めています。共同声明は、その後、およそ10年にわたって一度も見直されていませんが、専門家などの間では、日銀の金融政策に柔軟性を持たせるため、
▽物価上昇率の目標を「2%程度」などと幅を持たせたり、
▽「できるだけ早期に」としている達成時期を、より中長期的な目標に改めるべきだといった指摘も出ています。その一方で、共同声明を見直せば、日銀が金融政策を大幅に修正するのではないかという観測が市場関係者の間で広がり、金融市場に動揺をもたらすおそれがあるという指摘も出ています。