入管で死亡した女性の映像 裁判所で視聴可能に 体調悪化の様子 #nhk_news https://t.co/VRCb0Okzcg
— NHKニュース (@nhk_news) 2023年2月11日
おととしの3月6日、名古屋出入国在留管理局の施設で、収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が亡くなりました。
遺族は「違法に収容を続けたうえ、体調が悪化しても必要な医療を提供しなかった」などとして、国に賠償を求める訴えを名古屋地方裁判所に起こし、国側は「対応は違法ではない」として訴えを退けるよう求めています。
国側は去年12月、裁判所の勧告に応じて、収容中のウィシュマさんの様子を写したおよそ5時間分の映像を証拠として提出しましたが、この映像について、民事訴訟記録の閲覧手続きを踏めば裁判所で視聴できるようになりました。
視聴できるようになったのは、残されている、亡くなる12日前の2月22日から亡くなる当日の3月6日までのおよそ295時間の映像のうち、およそ5時間分です。
映像はウィシュマさんが収容されていた「単独室」の天井に設置された監視カメラのもので、ベッドに横たわるウィシュマさんの様子や、ウィシュマさんの声、対応に当たる入管の警備官や看護師のやりとりの音声なども記録されています。
NHKは10日午後、およそ3時間にわたって、記者が裁判所で映像を視聴しました。
映像が始まるのは、亡くなる12日前の2月22日午前9時50分です。
ウィシュマさんはベッドに横たわった状態で、部屋を訪れた看護師に対し、「私も食べたい」、「何も飲めない、自分で飲むもできない」などと訴え、看護師は「悪いけどね、食べるのは頑張らないかんな」などと答えています。
ウィシュマさんはすでに体調が悪化しているように見えます。
ただ、力のない小さな声ではありますが、看護師と会話はできているのが分かります。
出入国在留管理庁の最終報告によると、このやりとりのあと、ウィシュマさんは庁内診療を受け、栄養剤が処方されたということです。
しかし、その翌日の2月23日午後7時17分からの映像ではバケツを抱えながらおう吐し、「私、きょう夜死ぬ」、「担当ちょっとお願い。病院持っていって、お願い」などと訴え、何度も「死ぬ」ということばを口にしています。
こうした訴えに対し、入管の複数の警備官が「死なないで、大丈夫だよ」などと応じますが、病院については「ボスがオッケーって言ったら」などと答えるにとどまっています。
その3日後の2月26日午前5時14分からの映像には、ベッドで起き上がろうとして床に落ちてしまったウィシュマさんが、「担当さーん、担当さーん」と繰り返し警備官を呼び続ける様子が写っています。
複数の警備官が現れてウィシュマさんをベッドの上に戻そうとしますが、持ち上げることができず、結局、床に毛布を敷いてその上に寝かせたまま「ごめんね。おやすみ」などと言って部屋をあとにしています。
この6日後で亡くなる2日前の3月4日、ウィシュマさんは外部の病院の精神科を受診します。
頭部のCTを受けましたが異常は認められず、医師からは抗精神病薬や睡眠誘導剤が処方されます。
受診の翌日、亡くなる前日の3月5日の午前9時18分からの映像で、ウィシュマさんは警備官が話しかけても反応が弱く、時折「いらない」などと意思表示をしたり、何かを話そうとしたりしますが言葉にならない様子で、ほとんどがうめき声や、苦しそうな悲鳴です。
その後、午前10時41分からの映像では、警備官にベッドの上で体を起こしてもらいますが自分で体勢を維持できず、警備官が積んだ毛布に背中をもたれかけています。
そして、亡くなる当日の3月6日の14時7分からの映像。
ベッドの上で全く動かないウィシュマさんに呼びかけていた警備官がインターフォンで「指先ちょっと冷たい気もします」と報告しています。
このあと数人の警備官たちが集まり、反応が全くないウィシュマさんの脈をとったり呼吸を確認したりします。
警備官たちは「ちょっとまずい気がします」、「冷たい」、「反応しない」などと次々に口にしています。
映像はここで終わっています。
入管は映像が終わった数分後の午後2時15分ごろ救急搬送を要請。ウィシュマさんは病院に搬送され、午後3時25分ごろ、死亡が確認されました。
この映像をめぐっては、遺族側が法廷での上映を求めているのに対し、国側は法廷での上映はその必要性が乏しく、保安上の理由もあるなどとして反対し、現在も協議が続いています。
遺族側の代理人の指宿昭一弁護士は、今回、民事訴訟記録の閲覧手続きを踏めば裁判所で映像を視聴できるようになったことを受けて「裁判で判決を出すうえでは、傍聴する人に見せても見せなくても、それは変わらないかもしれない。しかし、裁判所を含め市民からの監視が必要で、公開の法廷で何も問題がないということをきちんと見せるからこそ、裁判の結果をみんなが信用すると思う。映像の声の雰囲気、情景など、見て初めて分かると思うので、(法廷での上映などを通じて)ぜひ多くの市民に見てもらいたい。それはウィシュマさんの妹さんたちの意思でもあります」と話しています。
おととし3月、ウィシュマさんが収容中に死亡したことを受けて、出入国在留管理庁は再発防止のため、非常勤医師の増員や常勤医師の確保、外部医療機関との連携体制の構築や強化、それに救急対応のマニュアルの整備と研修の強化などの対策を行っているとしています。