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脚本家のカイラ・ジョーンズ氏は、米動画配信サービスHulu(フールー)のコメディードラマ「ウォーク」の製作チームへ参加を決めた時、経済的には痛手を受けるだろうと覚悟していた。

この作品のオンラインレンタルによる売り上げからジョーンズ氏が報酬として初めて受け取った金額は、税引き前でたった4ドル(約550円)。辛うじてラテを1杯買える程度だ。同作品のストリーミングサービスでジョーンズ氏が受け取った二次使用料の合計は、米ABCテレビのドラマ「クイーンズ」の1話分の脚本執筆で受け取った二次使用料1万2000ドルの3分の1だった。

ジョーンズ氏は、配信ドラマでの収入がテレビ放送で支払われる二次使用料より少ないことは分かっていたと言う。

「ただ、これほどひどいとは思わなかった」

全米脚本家組合(WGA)に所属する1万1500人が実施したストライキで、二次使用料は中心的な問題だ。組合はハリウッドを拠点とした制作会社に対し、報酬の増額や労働者の待遇改善を約束するよう求めている。

脚本家らは、数十年続いてきたテレビ業界の慣習を一変させたストリーミングサービスが、報酬を大幅に下げていると主張。一話ごとの視聴回数や米国以外の登録者数を考慮した上での報酬を提案し、「失われた収入」を取り戻したいとしている。

制作会社の代理でWGAと交渉を行う全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)は、脚本家がストリーミングサービスから恩恵を得ていると指摘。より多くの作品に携わる機会が生じ、中止になってしまったり、シンジケーション(番組販売)市場には到底たどり着かないような作品でも収入を受け取ることができているとした。

放送業界が各家庭のリビングを独占していた時代、脚本家の給料日は月に複数回あった。毎週の給与に加え、脚本料は執筆した一話ごとに支払われた。夏頃を中心に作品が再度放映されると、その度に再放送料(二次使用料)を受け取っていた。

番組が100話製作されると、その作品をシンジケーションに売ることができた。地方テレビ局の昼間の編成に組み込まれたり、ケーブルテレビや米国以外の国で再放送されたりするようになり、脚本家はその都度、報酬を受け取ることができた。

<二次使用料は「とても健全だった」>

ストリーミングサービスは業界の報酬構造に変化をもたらし、いまや二次使用料の大部分を占めている。

アップルTVプラスのドラマ「サーフサイド・ガールズ」でプロデューサー兼脚本家を務めたクリスティーン・ハントリー氏はこう話す。

「以前はとても健全な二次使用料を受け取っていた。脚本家は1、2年仕事がなくても、その収入で快適な生活を送れたほどだ。そのうえ、それまでの脚本料も支払われた」

ハントリー氏は、こうした報酬の水準について「あまりに減っている。以前は5桁の二次使用料がもらえていたはずのところで3桁しかもらえていないほどだ」と言う。

脚本家は現在も、毎週の給料と各話の脚本料を受け取っている。ただ、配信作品では1シーズンあたりの話数が少なく脚本料を受け取る機会も減るため、報酬は以前に比べると少ない。

配信サービスにおける二次使用料は、1話ごとの再生回数に基づいて変動するのではなく、サービスへの加入者数に基づく年間定額料として固定されている。米動画配信大手ネットフリックスやアマゾン・ドット・コムの「プライム・ビデオ」、ディズニー・プラスが脚本家に支払う金額は増加している。

ある製作会社幹部によると、脚本家らは2022年に開始した配信番組の二次使用料を46%増額するよう交渉し、ちょうど今、支払われている頃だという。匿名で取材に応じた別の業界情報筋によれば、二次使用料は昨年、史上最高額に到達。うち45%近くが配信サービスによるもので、その大部分をネットフリックスが支払っている。

最新の提案で組合側は、米国外での二次使用料の200%増額を求めている。制作会社側は、国ごとに視聴料金が異っていることを踏まえていない要求だとしている。

組合は国内外での二次使用料格差の是正を目指していると述べた。

ネットフリックスは現在、米国で配信されている1時間の番組につき2万0018ドルの二次使用料を支払っている。世界中で1億5000万人以上いる会員が同じ番組を再生した場合の金額は、米国の3分の1だ。

十数年以上ハリウッドで脚本家を続けてきたレイラ・コーハン氏はこれまでに、さまざまなテレビドラマや配信ドラマを手掛けてきた。ネットフリックスの人気時代劇ドラマ「ブリジャートン家」では、共同エグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねている。

「ブリジャートン家」はネットフリックスの中で最も視聴されている作品の一つだ。だが、同作品に比べ、コーハン氏がシーズン4、5のうち5話分の脚本を執筆したMTVのコメディードラマ「オークワード」の方が、知名度では劣るものの、より高額な二次使用料を得られたという。

「それだけで生活するには十分ではなかったが、生活費の足しにはなる金額だった」とコーハン氏。「現在でも、同作品だけで年間数千ドルの収入がある」

1シーズン8話からなる「ブリジャートン家」のうち、コーハン氏は2020年に放映された1話の脚本を単独で担当した。だがそれに対する脚本料などの報酬は、作品のネットフリックスへの貢献度を反映していないとコ―ハン氏は言う。

「二次使用料には、利益の分配という意味合いがある。もし『ブリジャートン家』が最も成功を収めている作品の一つで、ネットフリックスに大勢の有料会員をもたらし、加入者数を維持することに貢献しているのなら、その価値は報酬に含まれるべきだと強く思っている」

#スト(ハリウッド脚本家・配信向け「二次使用料」)