【速報 JUST IN 】陸自元隊員3人に有罪判決 福島地裁https://t.co/967gJ87CZG #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) December 12, 2023
陸上自衛隊の隊員だった五ノ井里奈さんに無理やりわいせつな行為をしたとして、上司だった元隊員3人が強制わいせつの罪に問われた裁判で、福島地方裁判所は「被害者の人格を無視し、卑劣で悪質だ」として、無罪を主張していた3人全員に執行猶予の付いた有罪判決を言い渡しました。
目次
3人全員に懲役2年 執行猶予4年五ノ井さん「自分たちの行動と向き合い 反省してほしい」
3人全員に懲役2年 執行猶予4年
2021年8月、北海道にある陸上自衛隊の演習場で、隊員だった五ノ井里奈さん(24)を押し倒し、服の上から体を触ったなどとして、いずれも元上司で、陸上自衛隊・郡山駐屯地の部隊に所属していた元3等陸曹、渋谷修太郎被告(31)と関根亮斗被告(29)、木目沢佑輔被告(29)の3人が強制わいせつの罪に問われました。3人はいずれも、五ノ井さんに格闘技の技をかけて押し倒すなどしたことは認めましたが、わいせつ目的ではなかったなどとして無罪を主張していました。
12日の判決で福島地方裁判所の三浦隆昭裁判長は、「五ノ井さんの証言は、宴会に同席したほかの上司らの証言と一致していて信用できる。同席した上司らの証言も、被告らが被害者に覆いかぶさるなどの核心部分が五ノ井さんの証言と一致していて、3人の行為がそれぞれ強制わいせつ罪に該当することは明らかだ」と指摘しました。
そのうえで、「自衛隊施設の一室で被害者以外は男性の隊員十数人が集まった宴会の場で、先輩である3人に技をかけられるという、被害者にとって断りづらい雰囲気のなかで性行為のまねごとをしたものだ。被害者の人格を無視し、宴会を盛り上げるものとして扱うに等しいもので、卑劣で悪質だ。被害者は今もなお当時の光景がフラッシュバックし、生きていることのつらさを感じるなどと悲痛な心情を述べており、大きな精神的苦痛を負った」などとして3人全員に懲役2年、執行猶予4年を言い渡しました。
この事件は、いったん不起訴にされましたが、五ノ井さんが実名で性被害を訴えたあと、検察審査会が「不起訴は不当だ」とする議決を行い、再捜査した検察が判断を見直して3人を在宅起訴したほか、防衛省が自衛隊内のハラスメントの実態を調べる特別防衛監察に乗り出す異例の事態となりました。
五ノ井さん「自分たちの行動と向き合い 反省してほしい」
判決のあと、五ノ井里奈さんは裁判所の前で報道陣の取材に応じ、「刑の重さよりも事実を認めて反省してほしいとの思いで闘ってきました。私の訴えてきた事実がしっかりと裁判所でも認められ、3人には自分たちの行った行動と向き合って反省してほしいです」と話しました。そのうえで、「笑いをとるためであっても犯罪なのだということを示すことができたと思うので、この判決が新たな被害の抑止力になり、被害にあった人が我慢することなく声をあげられる社会になってほしいと思います」と、訴えました。
また、自衛隊に対しては、「一人ひとりが大切にされ、ハラスメントの無い組織になってほしい」などと話していました。
被告側弁護士 控訴するかどうか「わからない」
3人の被告を担当する齊藤好明弁護士は、報道陣に対し、「判決理由を精査したい」としたうえで控訴するかどうかについては「わからない」と話しました。防衛省報道官「コメント差し控えたい」
防衛省の茂木報道官は記者会見で、「個別の刑事事件の裁判に関わることで直接コメントすることは差し控えたい。私どもとしては、長く苦痛を受けられた五ノ井さんに対し深く謝罪を申し上げる」と述べました。福島地検「適切かつ妥当な判決」
判決について、福島地方検察庁の保木本正樹 次席検事は、「検察官の主張や立証が受け入れられた、適切かつ妥当な判決だと受け止めている。一度不起訴処分にしたが、その処分自体は当時の証拠関係に照らして適切に判断したものと考えている」と話しています。傍聴希望者 倍率5.7倍
福島地方裁判所では、傍聴を希望する多くの人が集まり、裁判所によりますと、傍聴席35席に対して傍聴を希望した人は202人で倍率はおよそ5.7倍でした。防衛省 特別防衛監察で被害64件確認 関係者60人を処分
防衛省によりますと、セクハラやパワハラなどの被害の実態を把握するため、防衛省・自衛隊内のすべての組織を対象に行った特別防衛監察では、合わせて1325件の被害の申し出がありました。これらについて事実の確認と関係者の処分を進めていて、ことし10月末までに64件の被害を確認し、関係者60人を処分しているということです。
また、ハラスメント対策を抜本的に見直すため、弁護士や医師でつくる有識者会議を設置し、五ノ井里奈さんからも意見を聞き取りました。
ことし8月にまとめられた防衛省への提言書では、ハラスメントに対する指揮官らの自覚が不足しているなどとして、具体的で実践的な教育を継続して行い、対策を定期的に見直すことなどを求めています。
防衛省はこうした提言も踏まえ、隊員や職員への研修を進め、意識改革を図っているとしています。
防衛省・自衛隊の幹部の1人は、「何としてもハラスメント対策をしないといけないという機運は高まっている。実際に、特別防衛監察などによっていままで浮き上がってこなかったうみを出していて、組織としてはいいことだと思う」と話しています。
また、別の幹部は、「部下への接し方などをとても注意するようになった。ハラスメントを一切許容しないという意識改革は進んでいると感じている。ただ、人数が多い組織なので、全員に意識を根づかせていくには時間がかかるのではないか」と話しています。