https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

台湾を囲むように記された航跡。台湾国防部の発表資料は、中国軍機のかつてない動きを記録していた。

日本周辺の海域では、海上自衛隊が日常的に中国軍艦艇の活動を監視している。

東シナ海南シナ海、そして太平洋で今、何が起きているのか。

(国際部 山下 涼太/ 社会部 南井遼太郎)

国家の意思

空母「カール・ヴィンソン」上の艦載機(2023年11月)
2023年11月、太平洋上。

航行するアメリカ海軍のニミッツ級空母「カール・ヴィンソン」の艦上から、最新鋭のステルス戦闘機F35Cがごう音を響かせて発艦した。艦上の艦載機が次々に洋上の青い空へと飛び立っていく。

その姿を甲板上に設けられたスペースから日米のメディアのカメラの砲列が撮影している。

公開されたのは自衛隊アメリカ軍、オーストラリア軍、カナダ軍が参加する大規模演習。海上自衛隊が主催した「海上自衛隊演習」、通称「海演」だ。

これに先立ち、アメリカ海軍は沖縄の南の太平洋で「カール・ヴィンソン」と横須賀を拠点とする「ロナルド・レーガン」の2隻の空母を投入した訓練も実施。

海上自衛隊の大型護衛艦「ひゅうが」とともに展開し、緊密な連携を示してみせた。

日米共同演習(2023年11月)
空母の派遣は、「国家の意思を示す」ともいわれる。

アメリカはかつての台湾海峡危機(1996年)の際、2隻の空母を派遣。2017年に北朝鮮がミサイルの発射を繰り返した時には一時、空母3隻を展開させた。

そしてことし、ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、イスラエルイスラム組織ハマスの戦闘が激化すると、東地中海などの中東地域で空母2隻の態勢をしいた。

そのさなかの今回の演習の狙いをアメリカ海軍第7艦隊の司令官は次のように表現した。

アメリカ海軍第7艦隊カール・トーマス司令官

「インド太平洋地域の安全は世界全体にとって重要である。空母『ロナルド・レーガン』と『カール・ヴィンソン』をここに展開させていることはアメリカ軍がこの地域がいかに重要と感じているかをはっきりと示している」

異常接近
アメリカがそう強調する理由。それがこの地域で軍事的影響力を拡大させようとする中国だ。

10月。アメリカ国防総省は飛行中のアメリカ軍機が中国軍機を撮影した動画を15本まとめて公開し、異常接近が相次いでいると非難した。こうしたかたちでの公開は極めて異例だった。

その1つ、5月に南シナ海上空で撮影したとする動画では、アメリカ軍機の航空機の進路を横切るような中国軍の戦闘機の動きが、7月に東シナ海の上空で撮影したという動画では、アメリカ軍機の近くで中国軍機が「フレア」と呼ばれるミサイルをかわすための熱源を発射する様子が捉えられている。

「フレア」を発射する中国軍機(東シナ海上空 2023年7月)
国防総省は中国軍の軍事動向を分析した年次報告書も公表。

アメリカ軍機への異常接近の事例が2021年秋からの2年間で180件を超えるとした。これはそれ以前の10年間の総数より多く、同盟国などに対しても同じ期間におよそ100件確認されたとしている。

中国軍の行動の狙いは何か。

報告書では「目的はアメリカやほかの国々に圧力をかけて、北京(中国政府)が領有権を主張する地域付近での合法的な運用を縮小、あるいは中止させることにある」と指摘。

さらにこうした危険な行動は「集中的で調整されている」として、パイロットなどの現場の判断ではなく、組織的に展開されていたと分析した。


中国軍の軍事動向を分析した年次報告書
応酬
これに中国側が応酬。

アメリカ側の発表のおよそ10日後、中国の国防省が記者会見のなかで動画を公開した。

中国国防省が公開した動画(10月26日公開 撮影は2023年8月と説明 )
動画は、ことし8月、南シナ海西沙諸島、英語名パラセル諸島の海域で撮影したとされ、中国軍の艦艇の右側をアメリカ軍の駆逐艦が航行する様子を後方から捉えている。

そして2つの艦艇が交差するような場面で、アメリカ軍の駆逐艦が急に方向転換し加速して進路を妨害したという内容の字幕スーパーを出している。

会見で中国国防省の報道官は「アメリカはトラブルを起こすために中国の玄関口に来ている。中国は主権と安全保障、海洋権益を断固として守るために必要なすべての措置をとる」と述べ、危険な行動を取っているのはむしろアメリカ側だと非難した。

新たな動き
安全保障の“最前線”でせめぎ合うアメリカ軍と中国軍。

そうしたなか、台湾の周辺でもこれまでにない動きが出始めている。

4月、中国軍の空母「山東」が台湾の南側にあるバシー海峡を通過。その後、太平洋に初めて進出したのを自衛隊が確認。

9月、そして10月から11月にかけても太平洋に展開し、このうち2回はおよそ600回の空母艦載機の発着が確認された。

中国軍の空母「山東」(撮影場所は不明 2023年10月)
山東は2019年に就役した国産初の空母だが、中国軍が保有する空母としてはウクライナから購入して改修した「遼寧」に続く2隻目となる。

山東の一連の行動について、防衛省関係者は空母の運用能力を高める訓練で、「1隻目の遼寧よりも戦力化に向けたペースが格段に早く、着実に能力を向上させている」と指摘。

さらに次のような分析を明らかにした。

防衛省関係者

「台湾は南北に3000メートル級の山脈が連なっている。そして重要な軍事拠点は山脈の東側にあり、中国から見ると山脈を越えた向こう側に位置している。
仮に中国が台湾に軍事侵攻する場合は東側に回り込む必要がある。そこで東側の太平洋に空母を展開させて、アメリカ軍などを近づけさせないようにする戦術をとる可能性がある。
つまり太平洋での演習には、より実戦的な能力を得ようとする目的もあると考えられる」

“常態化”
台湾の周辺では、海上だけでなく空域でも変化があらわれている。

中国軍機が台湾により設定された防空識別圏に進入する動きを活発化させ、台湾海峡の「中間線」をたびたび越えるようになっている。

台湾国防部は、防空識別圏内に中国軍機が進入した場合、その航跡を発表しているが、去年1月からの資料を確認すると、変化が顕著になったのは2022年8月のアメリカのペロシ下院議長(当時)の台湾訪問以降。

この後、中国軍機はそれまではまれだった「中間線」越えを繰り返すようになり、“常態化”させるようになった。

発表資料には飛行時間は記されていないが、航跡を見る限り、時間もより長くなっていることもうかがえる。

中国の無人機「TB001」
進入する航空機の機種も多様化している。早期警戒管制機爆撃機が確認されているほか、2022年9月に初めて確認された無人機の飛行が増加している。

飛行の範囲も拡大。2023年に入ってからは無人機が台湾の南側のバシー海峡上空を飛行し、台湾南部へ深く進入する動きを見せるようになり、4月に初めて台湾の周辺をぐるっと回るような動きが確認された。

台湾の周囲を回る無人機の航跡(赤)と防空識別圏内に入った中国軍機の航跡(緑)
使用された無人機は「TB001」。中国語で「双尾蝎」と呼ばれている。

台湾の周囲を回るような無人機の動きはその後、5月、8月、10月と少なくとも4回確認されている。

台湾情勢に詳しい拓殖大学の門間理良教授はこの1年あまりの変化はこれまでになく急速だと指摘する。

拓殖大学 門間理良教授
門間教授

「台湾国防部が航跡図の発表を始めた当初は、哨戒機による1、2往復程度の単純な活動だったが、今では1日に数百回を超える日もあり、飛行形態を見ても、非常に難しいオペレーションをこなせるようになっている。
台湾の周囲を回るような飛行には、情報収集や無人機のパイロットに経験を積ませる目的に加え、台湾本島の空域がすでに中国側の空域でもあるということを示す狙いがあるのではないか」

そして日本へ
中国が軍事的影響力の拡大の最前線で活用する無人機。

その影響は日本にも及び始めている。

防衛省は2021年8月、中国軍の無人機の太平洋への進出を確認したと初めて発表。それ以降、同様の発表が2022年は4件、2023年は8件(11月末時点)と増加している。

沖縄本島宮古島の間を飛行する中国の攻撃型無人機(2022年)
また無人機は2021年には有人機とともに飛行していたが、2022年7月には無人機の単独飛行を確認。同8月、アメリカの下院議長の台湾訪問後、初めて中国が台湾周辺で実施した軍事演習では、推定も含め無人機3機が同時に展開した。

防衛省幹部は中国が無人機の運用能力を飛躍的に向上させていると強い警戒感を示す。

防衛省幹部

「偵察型から攻撃型まで数種類を運用し、能力を着実に上げている。
情報収集、警戒監視のほか、ミサイルを導くため、位置情報を送ったり、狙った場所に撃ち込めているかカメラなどで確認したりする能力もあると推測される。
目的はケースバイケースだが、相手が無人機であっても、対領空侵犯措置のスクランブル(緊急発進)は有人の戦闘機で対応するため、負荷がかかっているのは否めない。これは中国による一種の消耗戦略でもある」

2つの“大国”

2023年11月15日。アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席は、サンフランシスコで実施された1年ぶりの会談でおよそ1年、開かれてこなかった国防相会談の再開や軍どうしの対話で合意した。

その一方、バイデン大統領は台湾周辺での中国の軍事活動が緊張と懸念を高めているとして「中国は戦略を考え直す必要がある」と指摘したという。

米中の軍事面での意思疎通が再開へ向かっていることは前進だが、それは偶発的な衝突を防ぐ「最低限」の対応策にすぎない。そして米中の競争の構図は今後も変わらないとみられている。

「この地球は中米両国を受け入れることができる」

首脳会談でこう発言した習近平主席。そこには世界で影響力を強め、アメリカと並ぶ大国になったという自信がにじむ。“大国間競争”の最前線となっているインド太平洋。そこでの双方の動きを今後も注視する必要がある。

(11月15日 おはよう日本で放送)

#米中(空母の派遣は「国家の意思を示す」・米軍、インド太平洋に空母2隻を展開)

来年1月の台湾総統選を前に、中国共産党が対中融和路線の政党支持へと世論を操作するため、台湾農村部の宗教団体との交流を活発化させていることが、台湾政府の文書と安全保障当局者らの証言で明らかになった。

中国政府や共産党が運営する宗教団体、国営メディアのウェブサイトを調査したところ、中国のゼロコロナ政策が終了したのを受け、今年は台湾から中国への宗教的な旅行が増加している。そのうちの数十件は、海の女神「媽祖」(まそ)崇拝に関連するものだ。媽祖は航海・漁業の守護神として台湾で最も人気のある神で、1000万人の信者がいる。

ロイターは台湾の安全保障文書5本を調査し、台湾の安全保障当局者5人、媽祖廟の指導者5人、アナリスト4人にインタビューした。

その結果、中国共産党幹部が中国への旅行を補助するなどして宗教界の重鎮らと関係を築こうとしている実態について、これまで報道されてこなかった詳細が明らかになった。

これに対し、台湾は媽祖信仰を含む中国本土・台湾間の宗教活動の監視を強化している。対中関係を担う台湾の大陸委員会の説明と、ロイターが閲覧した文書3本から明らかになった。

台湾政府関係者5人によれば、中国は1月13日の台湾総統選および立法委員(国会議員)選を前に、対中関係強化を唱える政党への支持を高めるため、宗教関連の活動を行っている。

ロイターが今年10月に確認した諜報報告書によると、中国は国家宗教事務局などを介して台湾の媽祖信仰への影響力を確立してきた。台湾のキリスト教徒や仏教徒道教徒にも関与する同事務局は、習近平国家主席が中国の対外的な影響力を拡大するための「魔法の武器」と呼ぶ共産党「統一戦線工作部」の管轄下にある。

文書によると、少なくとも5つの台湾媽祖廟協会が6つの中国側団体と接触しており、その6団体は全て同事務局によって運営されている。

ある文書は、中国と最も密接な関係があるこの信仰を、中国は世論操作活動の「軸」に据えていると指摘した。媽祖の起源は台湾海峡を挟んだ中国の福建省にあり、中国本土にも何百万人もの信者がいる。

中国は公式には無神論の立場だが、ロイターが調査した2020年と2016年の統一戦線の報告書によれば、統一戦線は長い間、民間宗教を利用して台湾の信者と関係を築いてきた。信者の多くは巡礼のために定期的に中国を訪れている。

中国国営メディアは9月、媽祖関連の交流プログラムは台湾との「平和的統一」において「重要な役割」を果たしていると伝えた。

台湾の大陸委員会はロイターに対し、中国との真の宗教交流は歓迎するが、統一戦線の「活動空間を縮小」するため、台湾の寺院への関与と監視を強化すると文書で回答した。

<戦争か平和か>

中国は、台湾の与党・民主進歩党民進党)と同党の総統候補である頼清徳副総統を危険な分離主義者とみなし、民進党への投票は中国との戦争に投票することに等しい、と訴えている。頼氏は一貫して世論調査対立候補をリードしている。

対中融和姿勢を採る最大野党、国民党の高官らも同様の表現を使ってきた。

中国は対照的に「親中政党を支持することは平和を意味する」というシグナルを台湾の有権者に送っていると関係者の一人は語った。

国民党は、中国とメッセージが類似していることについて問われ、民進党が中国との対話不足ゆえに台湾を戦争の淵に導いていることは「紛れもない事実」だと答えた。

台湾の安全保障当局者らは、中国が活動を行っている多くの寺院の場所にも注目している。中国が大都市以外の「中小規模の神社仏閣との関係」を築こうとしていることを、台湾は認識していると関係者の1人は述べた。

こうした地方のネットワークは「地元にうわさを広める効果的なシステム」であり、世論形成の一助になるという。

台湾の民間信仰を研究している学者、ウェン・ツォンハン氏によれば、中国が農村部の寺院に影響力を持とうとしているのは、都市部の宗教センターと比べ、信者の日常生活において大きな役割を果たしているからだ。

「社会組織や地域社会に働きかけ、選挙結果に影響を与えることができる」とウェン氏は語った。

<参拝旅行を後援>

政府の報告書によると、中国は2018年から20年にかけて、台湾との間で70回以上の大規模な相互寺院参拝を企画し、少なくとも2万0400人が参加。そのうち少なくとも9回は中国政府が一部資金を提供した。

今年、中国は台湾の政治家数百人による中国旅行を後援した。台湾政府関係者らは、これを選挙法や治安維持法違反の疑いで調査している。

  台湾の治安当局者2人は、こうした旅行は中国が諜報活動を行い、世論操作活動のための同調者を募る「チャンス」だとの考えを示した。

180以上の寺院を会員とする媽祖廟ネットワーク「台湾媽祖廟親睦会」のチャン・ミンクン代表は「戦争に向かわないためにも(中国との)交流を深める必要がある」と話し、選挙によって政権交代が実現することを望んでいると語った。

#中台(統一戦線工作部>国家宗教事務局・中国国営メディア「媽祖関連の交流プログラムは台湾との『平和的統一』において重要な役割を果たしている」・台湾媽祖廟親睦会チャン・ミンクン代表「戦争に向かわないためにも(中国との)交流を深める必要がある」「選挙によって政権交代が実現することを望んでいる」)

#反中国#対中露戦#習近平伏魔殿体制=旧体制

d1021.hatenadiary.jp