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ニューヨークの富裕層はここ数年、高級不動産市場に投資するタイミングをうかがってきた。その機は熟したようだ。

  不動産仲介会社コーコラン・サンシャイン・マーケティング・グループのケリー・マック氏は「非常に強力な市場原理が組み合わさり、市場は眠りから覚めた。様子見姿勢だった買い手は全力疾走に転じている」と語った。

  市場は買い手に有利な方向に傾き始めている。物件価格は下がり、いくつかの新規開発プロジェクトで購入者の選択肢は増え、借入コストは依然として高水準ではあるものの安定し始めている。

  不動産会社コンパスのジム・セント・アンドレ氏によれば、1年前から売りに出されていたウェストビレッジ地区のタウンハウス物件は、11月になって突然入札合戦の様相を呈したという。不動産開発業ナフタリ・グループが建設した3つのコンドミニアムには予約客が殺到しており、11月5日の米大統領選投票日もショールームは盛況だった。

  実際、11月の高級住宅市場は過去3年間で最も好調だった。コーコランのリポートによれば、500万ドル(約7億6800万円)を超える物件の売買契約件数は11月は90件となり、同月としては過去10年で3番目の多さとなった。

金融市場の動きも投資家の楽観姿勢を後押している。S&P500種株価指数は過去最高値更新を続けており、米金融当局による9月の利下げで金利がピークを迎えたとの見方も強まった。

  コンパスのクレイトン・オリゴ氏は「S&P500種が高水準で推移し、暗号資産(仮想通貨)も最高値圏で推移する中、多くの富が生み出されている」と指摘。「大型契約が結ばれており、実際に高級不動産市場の中でも最高額の物件が活況を呈している」と語った。

  ミッドタウン・イーストの超高層住宅サットン・タワーなどでデベロッパーが価格を引き下げたことも取引の活発化を促している。

  サットン・タワーのプロジェクトを共同で手掛けたJVPデベロップメントは、今年1-3月(第1四半期)に一部の物件で値下げを実施。「それ以降、好調な販売が続いており、サットン・タワーはニューヨークで最も売れているビルの一つになった」と語った。

  マンハッタンのアップタウンでは新たなプロジェクトが相次ぎ、高級不動産市場では供給も増加傾向にある。ナフタリ・グループによる2つのプロジェクトでは、過去1カ月で400万ドルを超える売買契約が21件成立した。

  ただ、同社の創業者ミキ・ナフタリ氏は、買い手が求めているのは質であり、その点で「在庫はそれほど多くない」と語った。

原題:NYC’s Luxury Housing Market Is Waking Up From Its Slumber (1)(抜粋)

北海道千歳市の地価が大きく上昇し、日本各地で今、休耕田が注目を浴びている。東京から満席の飛行機で千歳市を訪れると、昨年度の採用達成率が過去最低の51%になったという自衛官募集の看板が目に入る。

  頭をよぎったのは米映画「フィールド・オブ・ドリームス」に出てくる名言、トウモロコシ畑に野球場を造れば、往年の大リーガーが「やって来る」という啓示のような不思議な声だ。

  空に向かってそびえ立つ6台ものクレーンが、周囲の田園風景と何とも不釣り合いで目立つ。半導体産業のトップを奪還するという投資総額5兆円とされる日本の賭けを、何千人もの建設作業員が驚くべきスピードで形にしている。

  ここで建設が進められているのは、官民合同で2年前に設立されたラピダスの工場だ。同社は米IBMと提携し、最先端の回路線幅2ナノメートル半導体を2027年中に量産し始めることを目指している。

  何であれリスクはつきものだ。産業振興における日本政府の実績はまちまちだが、これは半導体産業に向けた一連の投資の中でも非常に野心的な最新例の一つに過ぎない。

  石破茂首相は最近、21年以降に投じられた3兆9000億円に加え、さらに10兆円を半導体関連投資に積み増すと表明。人口約10万人の千歳市から1500キロメートル離れた九州の熊本県では、1兆円余りを投じた台湾積体電路製造(TSMC)の半導体工場で量産が近く開始されようとしている。

  半導体の受託生産で世界一のTSMCが、同社初の日本工場を建設したのは熊本県菊陽町だ。日本政府の補助金と現地のサプライチェーンに魅力を感じたTSMCの工場は今年2月に開所式を行った。

  第2工場も着工予定で、当局は3番目の工場誘致にも動いている。最近までほとんどの住民が日本人だった地域に台湾人の働き手が流入し始めている。

地方復興

   かつて世界の半導体業界をリードし、再びその地位を取り戻そうとする日本を今けん引しているのは、北海道や九州で生まれつつある「半導体城下町」だ。

  フィールド・オブ・ドリームスが米国で公開された1989年、作家で後に東京都知事となる故・石原慎太郎氏は外国の少なくとも5年先を行くよう日本を鼓舞した。

  米中西部で農業に従事する男性がトウモロコシ畑に野球場を造る夢を追うこの映画は日米でヒットし、大リーグは2021年に映画の舞台となったアイオワ州のトウモロコシ畑に球場を造り、初の公式戦を行った。

  石原氏の呼びかけもむなしく、貿易摩擦を巡る米国の圧力や業界再編における失策で、日本はつまずいた。韓国と台湾が主導権を握る中、世界の半導体市場における日本のシェアは10%以下に落ち込んだ。

  日本政府が同盟国との半導体開発と国内生産の促進を「緊急提言」したのは21年。くしくも映画が現実になった年だ。投資額は膨大で、日本にとって前例のない野心的な取り組みだったが、新型コロナウイルス大流行期の半導体不足で国内の自動車産業は追い詰められていた。

  私は、こうしたプロジェクトが現場レベルでどのような意味を持つのかを確かめたかった。地方を活性化しようとする行政の数十年にわたる取り組みは、地方から大阪や名古屋、そして特に東京といった大都市への人口流出を食い止めることはできなかった。

  半導体への投資を怠った日本だが、あるものには投資し続けた。インフラだ。1990年代、景気対策の目玉だった公共事業支出は物議を醸した。「土建国家」と呼ばれていた当時の日本が相次ぎ実施した景気刺激策は、より根本的な改革を先延ばしにするための口実と見なされていた。 

  だからこそ、新しい半導体プロジェクトは業界へのインパクトという観点を超え、より重要な意味を持つ。

  ラピダスのような賭けが成功すれば現地で住宅の価値が上がり、地域が豊かになるだけではない。それは「行動をせよ」という呼びかけになるだろう。

  過疎化が進む鳥取県出身の石破氏は、地方創生を政策の柱の一つとしている。しかし、それを達成するための現実的な解決策はほとんど示されていない。

  地方復興は掛け声だけで実現するものではない。基盤インフラの整備や雇用を生み出す企業の育成・誘致など具体策が必要だ。今求められているのは、大卒者を訓練し、サプライチェーンを構築することだ。

  米国のトランプ次期政権はイーロン・マスク氏流のコスト削減を検討しているが、日本がこれまで採用してきた政策は「造ること」のメリットを示している。

  投資と貯蓄のどちらが有益かという議論は、日本でも行われてきたが、緊縮財政派は選挙には弱かった。日本は過去数十年にわたり積み上げられた負債の重みに耐えなければならないが、一方でその利点はインフラを頼みとする半導体城下町では明白だ。

  公共事業は開始直後にしばしば非難の的となる。かつての住宅不足の緩和を狙った公営住宅建設や巨額の事業費を要するリニア中央新幹線もそうだった。しかし、何もしないことは簡単だ。  

  チャンスを都会に求める若者たちが去る農村地域の人口減少は深刻だが、そうした地域の一部が水やエネルギーとインフラを組み合わせ半導体産業の新たな中心地になろうとしている。都会でも田舎でもない経済の重要拠点という地方の新しい形が生まれるかもしれない。

北海道

  私が9月前半に訪れた千歳市もその候補地だ。ラピダスの工場建設のため最大6000人の作業員が働くが、半導体の試作が始まれば、高収入を得る少なくとも1000人分の雇用が生まれ、サプライチェーンも形成されるとみられている。

   すでに肌寒さを感じた訪問時、オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングが拠点を開設したばかりで、50人のスタッフが勤務する見込みだという。

  パウダースノーで世界に知られ、外国人観光客でにぎわうニセコ千歳市から約100キロの距離に位置する。こうした観光産業とともに、ラピダスは道内経済に多大な利益をもたらすと期待されている。

  現地は、経済効果18兆円という予測もあるラピダスの話題で持ちきりだ。札幌市では平日の夜でもタクシー乗り場に多くの人が並ぶ。タクシー運転手の関心事は今や世界的な半導体市場の動向だ。

  ラピダスの野心的な計画は、壮大な失敗を招くリスクもはらんでいる。日本のメディアはそのことを十分に認識している。

  2012年の経営破綻後に米マイクロン・テクノロジーに売却されたエルピーダメモリや、経営難に陥っているジャパンディスプレイなど、政府主導のこれまでの取り組みを考えると、懐疑的な見方は正当化される。

  だが、千歳市の横田隆一市長に話を聞くと、ラピダスのプロジェクトが話題になる前から地元経済はすでに好調だったという。同社の工場建設は、同市を慌ただしくさせている「ビッグバン」だと市長は表現した。

  それでも、夜になり作業員たちが建設現場を去ると、圧倒的な静けさが訪れることも実感した。経済効果は感じられず、すぐにでも雪に変わりそうな冷たい風だけが吹いていた。

九州

  千歳市が今後直面する状況を示唆しているのが、国内半導体産業の中心地として好不況の波にもまれてきた熊本県だ。

  TSMCの工場ができた菊陽町にはソニーグループのイメージセンサー工場もある。この町は「シリコンアイランド」としての九州の中核を成す。開業したTSMC工場の隣接地では第2工場の建設準備も始まっている。

  菊陽町や隣の大津町では、不動産開発会社に土地を売った知り合いがいるという人は少なくない。開発は土地を持つ地元住民には大きな恩恵となるかもしれないが、他の人々にとっては渋滞悪化をもたらすだけだ。

 熊本県の木村敬知事はTSMCの進出について、「黒船来航」のようなものだと私に語った。台湾から来たTSMC従業員の6割ほどが人口約80万人の県庁所在地、熊本市に住んでいる。県全体では、外国人の居住者数が昨年25%近く増加。これは日本一の伸び率だ。

  地元の行政は日本語教室を開設し、緊急サービスやごみの分別などあらゆる面でサポートを提供。今のところ、大きな問題は生じていない。米アリゾナ州のTSMC工場と異なり、労働組合や職場文化に関する問題がほとんどないのは、ちょっとした驚きだ。

  日本一安全な主要都市との評判もある熊本市では「台湾タウン」構想も浮上。大西一史市長は、市民と台湾からやって来る人々との良好な関係を築くための取り組みを強調した。

  至る所で中国語が聞こえる。混み合った店で熊本ラーメンを食べていると、日本語を話しているのは自分だけではないかと思うほどだった。私の熊本訪問は中国国慶節建国記念日)の大型連休と重なり、ゴルフや温泉を楽しむためにやって来た観光客が多かった。

  阿蘇山のある熊本県は「火の国」とも呼ばれるが、地元の人々が本当に気にかけているは水だ。熊本市によれば、全ての水道水が地下水で賄われる同市は「世界に誇る地下水都市」だという。TSMCがこの地を選んだ理由の一つも水だ。

  半導体生産には膨大な量の純度の高い水が必要で、TSMCの第1工場だけでも1日当たり8500トンの水を使用する見込み。そのため、水道水や農業、その他の従来からある産業への影響を懸念する地元住民もいる。

唯一の選択肢

  リスクはそれだけではない。市長室から見える熊本城の天守閣は16年の地震で壊滅的な被害を受け、城壁の修復は30年かかると言われている。この地震で300人近くが亡くなった。

  地震の被害はTSMC工場に近いソニーの工場でも深刻だった。生産が数カ月間停止し、精密な半導体を収容するクリーンルームも揺れた。北海道でも18年の地震で、300万世帯が数日間停電した。いずれの地震も、その地域で記録された最も強い地震だった。

  災害のリスクは予測不可能だ。だが、日本が進めるこうした大がかりな実験が単にうまくいかなかったらどうなるだろうか。

  熊本に海外から企業を誘致するため巨額の補助金を投じ、ラピダスに関するリスクは計り知れない。

  たとえラピダスが必要な人材を確保でき(日本では4万人のエンジニアが不足すると予想されている)、テクノロジーを確立し、収益が許容範囲内であっても、TSMCを含むライバル企業と競合し、実績のない製品で顧客を呼び込まなければならない。

  千歳市の横田市長はこうした懸念を一蹴した。成功を確信していると述べ、今IBMで働いている研究者が、日本の立て直しに役立つ知識を携えてやって来ると断言した。まさに、明治時代の学者たちのように。

  北海道と九州への旅を終えた私は、別のリスクも強く感じた。何もしないリスクだ。先延ばしにしたり、反対したり、危うさを理由に挙げたりし、こうしたプロジェクトを見直すように仕向けるのは最も安易なことだ。英語圏の国々は高速鉄道から原子力発電に至るプロジェクトで、こうしたアプローチに迷い込んでしまった。

  他にどんな選択肢があるだろうか。1980年代に日本が世界の半導体業界で首位を独走していた時、台湾や韓国は日本に挑むことを危険過ぎるとは考えなかった。

  全てがうまくいかず、ラピダスが失敗に終わる可能性もある。しかし、挑戦せずに座視するよりはましだ。

  都会でも田舎でもないいわば第3の日本といった地方も同様に、半導体工場を造ったとしても、誰かがやって来るかどうかは定かではない。しかし、何も造らなければ誰もやって来ないのは確かだ。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Chip Cities Rise in Japan’s Fields of Dreams: Gearoid Reidy (抜粋)

三菱UFJ銀行の行員が支店の貸金庫から10数億円相当の金品を盗み取っていた問題で、この行員は顧客用の鍵のスペアキーを使って貸金庫を開けていたことがわかりました。スペアキーは支店で管理されていましたが、銀行は不備があったとして今後は本部で一括管理するよう見直す方針で、近く会見を開いて詳しく説明する見通しです。

三菱UFJ銀行では、練馬支店と玉川支店に勤めていた管理職の行員が4年半にわたって支店の貸金庫を無断で開け、中に入っている金品を盗み取っていたことが明らかになりました。

銀行は被害額が時価にして10数億円にのぼるとしていて、先月、この行員を懲戒解雇しています。

銀行はこれまで具体的な手口を明らかにしていませんが、この管理職の行員は顧客に渡している鍵のスペアキー=「予備鍵」を使って貸金庫を開けていたことが関係者への取材でわかりました。
これらの支店では貸金庫を開ける際、銀行用の鍵と顧客に渡している鍵の2種類が必要で、「予備鍵」は支店で管理されていましたが、金品を盗んでいた管理職の行員は「予備鍵」を管理する責任者だったということです。

銀行は鍵の管理方法や不正を防止する対策に不備があったとして、今後「予備鍵」を支店ごとではなく本部で一括管理するよう運用を見直す方針で、近く半沢淳一頭取ら経営幹部がこの問題が発覚して以降、初めてとなる会見を開き、詳しい経緯を説明する見通しです。

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