政権交代が確実になった時、私がまず思った事は「これでやっと日本も冷戦後の時代を迎える」というものであった。1991年に旧ソ連が崩壊した後、アメリカ議会は2年以上の時間をかけて「冷戦後の世界とは何か」という議論を行い、それに見合う形にアメリカ社会を変えてきたが、日本にはそうした議論が全くなく、何よりも政権政党である自民党が「反共主義、自由主義、経済成長」という冷戦型の思考を引きずったまま政治を行ってきたからである。
「精密誘導兵器」に見られるアメリカの軍事技術革命は軍の組織形態をも一変させた。コンピューターの発達によって軍はピラミッド型からネットワーク型の組織に変わった。
民間企業もトップが直接現場に指令する組織形態になり中間管理職が不要になった。
またアメリカ型の思考が世界を覆うグローバリズムの反面、各国に民族主義が台頭し、独自の文化や生き方が見直される時代が来ると考えられた。
しかし日本だけは相変わらず中国と北朝鮮を仮想敵国とする冷戦型思考から抜け出ることが出来ない。
日米安保条約は日本を守ると同時に、日本を自立させない「ビンのふた」である。中国も北朝鮮も日米安保条約を脅威と思うより、アメリカとの関係強化さえ図れれば日本を無視出来ると考える。
冷戦後の世界ではアメリカと中国が手を結ぶことも、北朝鮮とアメリカが利害を共にすることもあり得ない話ではない。だから日本も早く冷戦型思考から脱して、国家利益を現実的に追及する柔軟思考を持たないと国際社会では生き残れないと思ってきた。
「官僚主導の計画経済体制が破綻」して旧ソ連が崩壊した時、「だから官僚主導の日本経済はまもなく破綻する」とアメリカの政治家達は言った。実際に冷戦後の日本経済は行き詰まった。