卒業式ではまず卒業証書授与が行われ、校長の告辞、校歌演奏と順調に進み、次に山岡景一郎理事長(学院長・大学学長も兼任/91)が壇上で式辞を述べた。
《小さくても、エルメスやヴィトンとか、そういうようなブランドというのは、小さくてもピカッと光っています。私どもの学生たちは、今はそういうブランド大学だという誇りを持っております》
《世の中には5種類の人間がいますね。1人は世の中にどうしてもあってほしい人。2番目は、どちらかというとまあ、いてほしい人。3番目は、世の中にいてもいいひんでもいい人。4番目は、世の中におったらあまりよくない人。5番目は、世の中におったら害になる人。さて、どれが1番いいでしょう? それは1番目の世の中に必要な人だと私は思っています》
《私がみなさんに一番伝えたいことは、成功すること。成功は最後までやり遂げること。ということは、成功するまでやること》
この式辞の内容が、平女関係者の間で“大問題”となった。前出の学院関係者が解説する。
「理事長の式辞はキリスト教主義を掲げる平女には大変不適切なものでした。まず、理事長は平女を“エルメスやヴィトンと同じようなブランド大学”と表現しました。しかし、これは言い換えれば他の学校は、平女より品格が劣るということを言っていると同義であり、謙虚さを重んじてきた平女146年の歴史とは相いれません。
また、理事長は人間を5つのタイプに分類し、その中で1番目のタイプの人が1番いいと述べましたが、そもそもキリスト教は人間の存在そのものを赦し、肯定しています。わが校が掲げる博愛精神から言っても人間をランク分けすることなどあってはならないのです。《世の中におったら害になる人》などと差別したりすることも教義に反します。
同じ意味で『成功すること』だけに人間の将来の価値を置くような言い回しも平女の伝統から言って極めて不適切です。実際、理事長の式辞を聞いた卒業生や教職員の中には、あまりに場違いな言動に頭を抱えるものもいたほどです」
ちなみに山岡理事長が私淑するのは昭和の名経営者・松下幸之助だ。こうした“敏腕経営者然”とした方針は、平女の教職員には受け入れがたかった。前出の学院関係者が打ち明ける。
「理事長の式辞の内容は、平女の定める寄附行為(※基本規則のこと)にある『キリスト教の精神にもとづく学校教育および保育を行うことを目的とする』という項目に抵触する可能性もありました。そのため、教職員間で3月末の理事会でその責任を追及しようという話になったのです」(同前)
今井校長は30分間にわたって取材に応じた。
「どんな権力を持った方に対してでも、間違っていることは間違っている、と主張すること。その姿を子供達に見せなければと、信念を持って、45年間、平安女学院で働いてきました。ですから単に理事長といがみあっているということではありませんし、そこは誤解なさらないでください。
もちろん理事長とは教育観も、経営、組織運営、全部考え方が違いますが、そこはまあ、経営者ですから。しかしキリスト教学校として、愛の精神を説いていかねばなりません。愛とは、人を大切にする、大切にされるということ。この一点なんです。それを否定されるような式辞については改めていただかなければ、平安女学院の教育が崩れてしまいます」
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米国聖公会から派遣された教師によって開かれた日本聖公会系のミッション・スクールである。
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聖公会は宗教改革の中からイングランドで創生したイングランド国教会をルーツとする教派で、広義のプロテスタントに含まれると見なす(あるいは自認する)見解もあるが、西方教会におけるカトリック教会とプロテスタントの中間というのが実態であり、「中道(Via Media)」の教会であると自認している。
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