憲法秩序に反しているのは宮内庁 ― 天皇の親善外交について憲法学から考える
中国が嫌いかどうか、民主党政権を支持するかどうか、小沢幹事長が好きか嫌いか、右翼的な思想か左翼的思想かなどは別として、法律論的に言えば、結論として、小沢幹事長の発言が正しいことは明らかです。
通説は、もともと国事行為とは、国政に関する行為であり、政治性を有する行為であるが、内閣が助言と承認を行うことにより、その結果として天皇の行う国事行為が形式的・儀礼的なものになると説明します。
体調不良を理由に職務を放棄し、責任も取らなかった元総理大臣のように、自分の政治思想に反するとか、自分の気に食わない外交方針であるというだけで、「政治利用だ」と薄っぺらい批判をし、内閣による天皇の国事行為に対する助言と承認の所在を宮内庁に今まで通り許そうとする方が、よっぽど天皇陛下を利己的に利用しています。
また、一官僚に過ぎない宮内庁長官が政府の決定に異議を公に唱えている点もはおかしな話です。
憲法秩序を乱す許し難い行為です。
これは内閣法制局についても同じことが言えます。
天皇に対する助言と承認権限が内閣にあるにもかかわらず、1カ月ルールという法的規範性のないものに依拠して、民意の審判を受けていない宮内庁の官僚が、助言と承認権限を事実上独占してきたのがおかしな話なのです。
国事行為に当たるか、それとも国事行為に準ずる公的行為なのかという論争ははっきり言って何の意味もありません。
重要なのは、内閣の助言と承認という民主的コントロールが及んでいるかどうかです。