【正論】東京大学教授・坂村健 難しい時代だから「正義」を語る
簡単に答えの出ない社会問題を判断しようとするとき、判断のモノサシが必要になるが、それは綺麗(きれい)事のようでもやはり「正義」しかない。
日本では、「そんな難しいことはお上がうまくやってくれる」で何とかなってきた。だが、今や、年金の世代間格差など何ともならない問題だらけだ。例えば、本来は喜ぶべき世界の貧困削減と自国の失業者の減少が両立しないとしたら、どちらが正義なのか。まさに、日本は「正義の哲学」に目覚めざるをえなくなっている。
そもそも社会は複雑な問題で溢れているのであって、それを単純化してはいけない。難しい問題を難しいと理解し、なお咀嚼(そしゃく)する知的体力が今、日本に求められているのである。