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『法哲学概論』
P222

 直観主義に立つ正義論の最も美しく完成された、そしてその後世への絶大な影響力の点でも最も重要な形態は、言うまでもなくプラトン(427〜347B.C.)の思想に見られる。プラトンの師ソクラテス(469〜399347B.C.)は、「正義に果して自然的基礎ありや」というソフィストの鋭い問題提起を正面から受け止め、各人は、「真知(エピステーメー)」の顕現を妨げているさまざまな邪念妄執(特に「無知の知」)を払拭し、明鏡止水の境地に達することによって、心中に宿る「良心(ダイモニオン)」の謬らざる声に耳を傾け、正邪曲直を弁別する能力を生得的に具備しているという独特の主知主義倫理学説を説いた。「客観主義」・「主観主義」という二分法に照らしてソクラテスの立場を位置づけるならば、尾高の指摘するように、一種の主観主義的客観主義であり、「主観そのものの中に、時と場合によって左右されることのない客観的原理を求めよう」とする試みであった、と言うべきであろう。プラトンの正義論は、師ソクラテスの理論から出発し、一方で彼の認識論と表裏一体を成すと同時に、他方では、ギリシャ的ポリスの伝統を維持しようとする壮大な企図であった。

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