本件は、検察官が、2度にわたり、嫌疑不十分として犯罪が成立しないとの判断を下した事案である。それにもかかわらず、検察審査会は、同じ資料に基づいて、起訴をすべき旨の議決をした。しかも、この議決は、本件において有罪判決を得られる高度の見込みが存在しないことを事実上認めながら、裁判で黒白をつけるべきだということを理由としている。
しかし、わが国の検察は「有罪判決が得られる高度の見込み」という起訴基準を標榜(ひょうぼう)しているのであるから、今回の起訴は、これとは全く異なる基準でなされたものであることが明らかである。
弁護人は、今後の裁判で、「無罪の推定」など、すべての適正手続が保障されるよう求めるとともに、早期に完全な無罪判決を得るため最大限の努力を払うものである。