『加藤晋介の刑法入門』
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戦後の日本の刑法学では、元東大教授、元最高裁判事の団藤重光氏や元名古屋大学教授の大塚仁氏らの通説は、「形式論こそが、ナチスドイツや戦前の全体主義日本の実質的な犯罪論を克服し、自由主義を守る大切なものなのだ」といってきたのですが、最近では「実質的な犯罪論をとっていいのではないか」という、有力な学説も主張されるに至っています。
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つまり従来は、まず要件を考えてから効果を考えていたのですが、「そうではないのではないか。10年の懲役又は50万円以下の罰金というのであれば、それに見合うだけの物を取るのが窃盗と考えるのが筋ではないか。そうすれば構成要件を実質化したからといって何らおかしくはない」というのです。