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【話題の本】『襤褸の旗 松下政経塾の研究』出井康博著

 この塾出身の政治家には、ある共通した感じがある。本書の表現を借りれば「見栄えや要領は良いが、中身がない。目立つことばかりやっていて、何となく信用できない」という線の細さだろうか。


 塾生たちは、ある時期から政治家になること自体が目的化していった。志士気取りで維新や改革を唱えながら、毒にも薬にもならない小才子たちの促成栽培創立者松下幸之助は、決してそんな状況を望んでいなかった、というのが本書の同塾批判の眼目となる。


 表題の「襤褸(らんる)」とは、ボロ布のこと。ボロ旗立てて既成政治と対決する“革命家養成”の初志どころか、錦きらめく高位顕官への近道となった感のある現在の同塾に、著者が向ける視線は厳しい。「幸之助が掲げた『松下政経塾』という旗は、いつしか色あせ、今や原型を留(とど)めないほど継ぎはぎだらけになってしまった。その大義は見失われ、それぞれの塾出身者が別の方向を向き、ひたすら自らの欲望成就を目指しているだけのように見える」

襤褸の旗

襤褸の旗