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【Theリーダー】第4部 指導者はつくれるか(1)松下イズム、忘れた面々

 とはいえ、塾出身者の評判は「口先ばかりで実行力がない」「プライドが高くエリート意識が強い」「政策通だが社会を知らない」…と必ずしも芳しくない。

 2期生の前杉並区長・山田宏は、松下が目指した方向性は逆だったと語る。


 「松下さんは、20代の生意気盛りのわれわれの意見を『そうか。そうか』と聞いていたが、その後で『政策よりも人間の研究が先だ』といつも言っていた

 山田の在塾当時、町の電器店での販売、工場での実習は必須だった。後に地方議員となった塾生が、実習先の販売店の社長とケンカして塾に戻ってきた際、松下との間でこんなやりとりがあったのを覚えている。


 松下「10のうち10まで全部、社長が悪いんか」


 塾生「僕の方にもいくらかは非があります」


 松下「10のうちたとえ1か2でも自分が悪いと思うんやったら相手が4歳の幼児でも土下座して謝れ。それができんような小さな器量では天下は取れんわ。君、退塾せえ!」

 「(政経塾の悪評は)松下さんに申し訳ない。でも私は自分なりに受け継いだ理念はたがえずやっている」


 元沖縄・北方担当相、高市早苗は振り返る。

 一方、江口は政経塾では、政治家として傑作でも失敗作でもない普通の作品ができ上がった」と言う。


 「野田君をスカウトしたのは、野球で言えば7番バッターの政治家になると判断したからだ。それが今、4番を打っている」


 政経塾出身者は松下が最も重視した「人間観」「国家観」を身につけておらず、ポストを追うのに汲々(きゅうきゅう)としている−と江口の目には映る。

 2期生の山田宏は「元気で頻繁に話を聞けたのは最初の3年くらい。5年目になると年に1、2回程度になり、声もだいぶ弱られていた」と語る。松下の秘書を務めた江口克彦は「8期の前原誠司らは塾主(幸之助)の『うんうん』という声くらいしか聞いていない。その分、もっと必死に幸之助研究をすべきだったのに」と残念がる。