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「永遠物語」バウ

なれば!他の女性と所帯を持ち、第三者として吉岡家に仕えることも出来たのではないか?いえ、それは出来なかったのです。幼年期に実の母親に去られたことがトラウマとなっている松五郎にとって、「手の届かない理想の佳人」吉岡夫人こそ、現世でただひとりの、「心を通わせたい」女性(にょしょう)であったのですから。

バブル経済のころ、日本人は「楽しく」「豊かに」「生きる」ことばっかり考えて、「どう生きて」「どう死んでゆくか」をあまり考えなかった。ところがそういったものがハジけちゃって、今は不景気だし、災害やテロの恐怖といったものもある。世の中がせちがらいし、将来の見通しも暗くなった。だから今こそ日本人が、「どう生きるか」を考えたい時期だと思うんだよ。
この「永遠物語」は、そういった意味でも、考えさせられる作品だったと思うんだ。松五郎の生き方は、教訓めいたところはひとつもない。(作品そのものも、押し付けがましく教訓をたれるようなところは微塵もなかったな)あんな生き様を、真似して真似できるものじゃないしね。だけど、俺はなんだか「教わった」気がするんだ。祇園太鼓を渾身の力で叩く松五郎を、櫓の下から見上げた俊雄が、そうであったように、ね。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20130209#1360416834