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講談界、一龍斎貞橘が36年ぶりの男性真打昇進−伝統芸能から学ぶ人間力と真打の意味−

貴重な、いい修行をしたと思います。うちの師匠(一龍斎貞水先生/人間国宝)が結構乱暴なんです。師匠のところへ用事をしに行くときに、電話しちゃいけない。前の日に「明日行きます」とか言っちゃいけない。「察して来い」って言うんです。普通に考えたら、高座がある日だとしたら、準備があるから行ってはだめだろう、前の日飲んでたら、朝ゆっくり寝てるだろう、そういうのは考えりゃわかるだろう、察して、必要なときにきて、必要じゃないときには来ない。そういうことができないと、高座に上がったところでお客さんは読めないぞ、って言われて。

お茶の入れ方とか、着物のたたみ方もそうですが、ご飯の食べ方にはすごくうるさかったですね。金と食い物は了見が出るから気をつけろとずっと言われまして、「あげるよ」といわれてすぐもらうと怒られる。「くれるって言ったじゃないか!」って思うんですけど。かといってあんまり遠慮してもだめ、どうすりゃいいのかって思うけど、「お前が考えろ」ってことなんですよね。うまくやれと。

お前が絶世の美女だったらそんなことしなくていいんだ。お前は男なんだから。ただでさえ男ってのは汚いんだからちゃんとしろ。むちゃくちゃ言いますよね(笑)。身なりから、言葉遣いから、所作から、きれいにやんなきゃいけない。でもあんまりやりすぎるとカマっぽくなるし。っていう話が始まると飲んでるときは大体3時間くらい話が続きます。聞いてるうちに師匠は何を言いたいんだろうってわかんなくなるなんてことがありました。

そうですね・・・「理屈じゃなくて感覚で」ってことは言われてます。

−全国で講談師は70人しかいない、ということですが、伝統を繋いでいかなければ、という思いはありますか?


ま、でも、だれかがついでいくでしょう。講談という「型」そのものが残っていれば。まんま昔の時代の名人を残していくって言うのは、ありとあらゆる業界において無理なんです。その名人の流れを汲んで、時代に合わせて、価値のあるものを作っていくという人がつぎからつぎへ現れていくって言うのが伝統芸能だと。


伝統芸能って勘違いしているところもあって、時代時代で、歌舞伎だってそうですが、市川家がいて、勘三郎さんは亡くなってしまいましたが、猿之助さんみたいにもいろいろやる人がいると、より古典が古典らしくなり、新作は新作でどんどん世界が膨らんでいきます。今のように女性が入れば入るほど、講談は男のものだってことで、男らしい講談を多少意識するようになります。

うちの師匠からは、新作はまだ早いといわれていましたが、まあそろそろと。師匠は「型があっての型破り」って必ず言いますね。ちゃんと古典の型を踏襲した上で新作を作らないと、講談の新作にならないよと。


古典やるためには新作も勉強しなくちゃ行けない、新作やるためには古典も勉強しなきゃいけないと。そういうことですね。

−真打披露興行はどんな形になりますか?


披露興行というのは、文字通り「披露」するもので、僕がやってるんですが、業界全体で新真打を見せるって形なので、みんなが何を望んでいるのか、察してやれと。


まだ真打になったばかりなんだから、そんなに上手くできるわけはないんだけれども、「若さってのは未来を見せることができる」と師匠は言っていて、どんなに頑張ったところで、お客さんはお前に期待してないから、お前の10年後、20年後をお客さんが期待できるような高座をやりなさい。


それは嘘をつかないで、一生懸命やることだよと。人柄、了見、来てくださった方が、喜ぶ高座がどういうものかを考えて、それを一生懸命やる姿勢をお客さんが見れば、お客さんは喜んでくださるよと。


ここで、人が集まっているから、ちょっと腕を見せてやろうかななんていうのが出てくると、一気にお客さんが逃げて行っちゃうよ。そうじゃない。お引き立てとごひいきを賜って披露興行ってのはできたんだから、それをわきまえてしっかりやりなさいと。まず前の日は飲みすぎるなと(笑)


桂米朝師匠(人間国宝)も言ってます。お医者さんと違って、芸人はいなくたっていいんだよと。そういうのをわきまえておきなさいと。


かといって、あんまりいい子ちゃんしててもつまんないし、どっかしらはらはらする部分がなきゃいけないとか、立川談志師匠いわく、博才がなきゃだめだという話もあって、いろんな情報が入ってくるので、それを自分の中で少しずつ噛み砕いて、表に出てくればと思ってます。そういう時期に来てるのかなと。やれることがだんだん見えてくるとか、自分にしかできないことが見えてくる。

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