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 現代の古典であり、古典を現代に読む意味をストレートに教えてくれる大事な1冊だ。

 現代は学問の縦割りが批判され「大学改革」が叫ばれる。目に見える成果や、新しさが求められるなかで、本書は厚みを持つ。同時に、20世紀初めドイツの社会学マックス・ウェーバーの残した遺産を、最先端の議論に照らす。

 タイトルと副題は、内容を明確に体現する。

 社会科学とは、〈1〉社会での物事のしくみを解き、〈2〉他の人に伝える営みだと著者は言う。〈1〉は、原因と結果、つまり、因果の探究であり、その手続きそのものについても、常に振り返り(反省的な形式化)が求められる。

 では、因果分析とは何か。それを解くために本書は、「適合的因果構成」と呼ばれるウェーバーの方法論から出発する。これは、プロテスタンティズムと近代資本主義成立の間の因果を検討する上で用いられる。成立した近代西欧と成立しなかった伝統中国のちがいは、宗教倫理だけではない。しかし、仮定を立てて、実際の事例に即して確かめる、この方法論により、原因のつながりが、よりはっきり見える。

 これは副題の「知の現在」=統計的因果推論に通じる。どちらも、何かの原因を、事実ではない形で定義する。後者は、その結果が出る確率について、特定の集団を対象にして、一定の条件をつければ、因果を測定できる、とする。こうして社会科学は、これまで積み重ねてきた、さまざまなやり方を、みずから振り返りながら鍛えている。

 著者はこれまで、不平等や桜といった現代のテーマに向き合いつつ、資本主義や社会学史といった古典も追い求めている。また、日本語の使い手としても手本にできる。他の人に伝える、開く力を本書でも存分に発揮する。

 古典とは、一読しただけでは、わからない。本書を何度も読み返し、語り合ううちに、一気に視界が開けてくるにちがいない。

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