https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

焦点:国債発行増大でも債券は逼迫、担保不足の原因にも | Reuters

 世界は債務だらけかもしれないが、債券には不足が生じている。各国政府が重債務を抱え、膨張した財政赤字を穴埋めするため盛んに国債を発行している中で、市場での債券不足は不思議に聞こえるかもしれない。


しかし主要中央銀行が「量的緩和」で市場から国債を吸い上げているだけでなく、銀行やデリバティブ市場の強化に向けた新規制によって市中銀行が債券が囲い込んでいることも、債券不足で流動性が枯渇するとの懸念を生じさせている。


国債社債の利回りが世界中で低下する中、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は投資家による無節操な「利回り追求」の兆候を監視していると言うが、債券需給のゆがみは多くを物語っている。


JPモルガンの推計によると、「バークレイズ・マルチユニバース・グローバル債券指数」を構成する国債、資産担保債券、社債、総額44兆ドルのうち、55%に相当する約24兆ドル分を世界の中銀と市中銀行保有している。


その上、指数構成資産の中でも国債(総額約25兆ドル)については中銀と市中銀の保有比率が3分の2を超える。


JPモルガンのエコノミスト、ニコラオス・パニギルツォグロウ氏は「債券利回りがここまで押しつぶされたのはこのためだ」と話す。


FRB、日銀、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の4中銀による債券購入は2008年以来、4兆ドル以上に達した。以前からの保有分を加えると合計5.2兆ドルになる。


FRBによることしの国債購入は1兆ドルを超え、日銀の購入額もその半分以上に達する予定のため、4中銀の年末の国債保有額は約6.5兆ドルに上りそうだ。


しかもFRBと日銀による国債購入はことし、政府による新規発行額を少なくとも1000億ドル上回る見通しなので、ことしは昨年よりも市中に出回る国債が減るだろう。


中国その他、世界中の中銀が外貨準備運用のために保有している推計8兆7000億ドル、さらには先進4カ国の市中銀行が資産のリスクウエートを引き下げるために保有する10兆ドルの債券も加味すると、その他の投資家に残された債券は多くない。


銀行は国債を、現金あるいは超過準備を直接代替し、それよりは多少利回りが高い資産ととらえているため、金融システムに出回る残りの債券は引っ張りだこになって利回りは圧縮される、とパニギルツォグロウ氏は言う。


JPモルガンの推計値を見る上でのポイントは、年金、保険会社、投資信託ヘッジファンドなどのノンバンクが保有する残りの債券は20兆ドル、つまり多くの人が想定していたほど投資家の債券への投資配分は多くならないということだ。債券と株式の保有総額における債券の比率は30%前後にとどまると推計されている。


この見通しと符号するように、ファンドマネジャーは既に国債は希少で割高だと考えて敬遠し、信用力で劣っても利回りの高い社債新興市場国の国債を好むようになっている。


プライベートバンク、クーツのアラン・ヒギンス最高投資責任者(CIO)は「奇妙なことに、これだけ大量の債券が発行されているのに債券が不足している」とし、この結果として保守的な債券ファンドから、よりリスクの高い証券へと資金が「浸み出し」ている兆候が数多くみられると付け加えた。


<担保が枯渇か>


債券不足は、資金調達の際に差し入れる質の高い担保──典型例は最高格付けの債券──が不足するとの懸念にも拍車を掛けている。


例えば米財務省と債券市場参加者による「四半期財務省借入諮問委員会」では、先月末の会合でこの問題が議題に上った。


会合では、格付けが「AAAマイナス」もしくは「AAマイナス」と高い国債の年間新規発行額は推計2兆ドルで、通常時の担保需要の2、3倍になりそうだとの結論が出された。「ストレスのかかった」市場環境下では需要が10兆ドルに達する可能性があるとも指摘している。


金融システムで資金調達するために十分な担保を確保できるかという懸念は、金融危機とその後の市場においても中心的な問題だった。


国際通貨基金IMF)のエコノミストマンモハン・シン氏は過去1年間に発表した数々の論文で、銀行間市場における不信感と、銀行が受け入れ可能担保の定義を狭めていることを背景に、大手銀行による担保の再利用回数が危機前の3.0回から約2.4回に低下したと推計。銀行の資金調達が最大5兆ドル減少する結果を招いたと指摘している。


これは各国中銀が2008年以来、国債買い入れプログラムによって供給してきた資金額を超える。現金に類似した担保の「流通速度」低下は、経済における信用創造が未だに概ね滞っている一因でもある。


シン氏の見解では、これは量的緩和、新たな銀行資本・デリバティブ規制、中銀の外貨準備運用などがもたらした「囲い込み」を原因とした、「遊休」あるいは「退蔵」担保の増加であり、政策当局者は今後注視していく必要がある。