1票の格差:7月参院選「違憲で無効」…広島高裁岡山支部 毎日jp(毎日新聞)
7月の参院選で無効と初判断 高裁岡山支部 NHKニュース
ことし7月の参議院選挙では、選挙区ごとの1票の価値に最大で4.77倍の格差があり、2つの弁護士グループが47都道府県のすべての選挙区で選挙の無効を求める訴えを全国の高等裁判所と高裁支部に起こしています。
このうち、岡山選挙区を対象にした裁判で、広島高等裁判所岡山支部の片野悟好裁判長は「投票価値の平等は憲法の最も基本的な要請なのに、定数配分の不平等は見過ごせないほど、広がっている」と指摘しました。
そのうえで「国会は4年前の最高裁判決で選挙制度の抜本的な改革を求められていた。その判決から今回の選挙までに3年9か月あったのに、議員定数を『4増4減』するという改正にとどまった。国会が真摯(しんし)に取り組んでいたというには大きな疑問が残る」と述べました。
そして「国会が投票価値の著しい不平等状態を是正しなかったことは憲法に違反し、今回の選挙の定数配分の規定は無効だ」と判断し、岡山選挙区の選挙を無効とする判決を言い渡しました。
参議院選挙を無効とする判決は初めてです。
選挙管理委員会側が上告すれば裁判が続くため、今回の判決で直ちに選挙が無効になるわけではなく、判決が確定した場合に、無効になった選挙区で議員の当選が取り消されて選挙がやり直されることになります。
7月の参議院選挙の1票の格差については、来月26日までに全国14の裁判所で判決が言い渡されることになっています。
衆議院選挙に対してはことし3月に2つの高裁が無効判決を出しましたが、参議院選挙を無効とする判決は、今回が初めてです。
これまで参議院については最大で6.59倍の格差があった平成4年の選挙や最大で5倍の格差があった3年前の選挙に対し、最高裁判所が「違憲状態」とする判決を言い渡しています。
しかし参議院選挙で「選挙無効」の判決が言い渡されたのは過去に例がなく、今回が初めてです。
衆議院選挙では、ことし3月に広島高裁と広島高裁岡山支部が選挙無効を言い渡しましたが、今月20日に最高裁大法廷がこれを取り消し、「違憲状態」にとどめる判決がすでに確定しています。
参議院選挙の1票の格差は、昭和22年に参議院議員選挙法が制定された当時、最大で2.62倍でしたが、都市部への人口の集中が進んで次第にこの格差が大きくなりました。
特に参議院は、選挙区が都道府県単位で3年に1度、半数を改選する決まりがあり、2人以上の偶数の議席を配分する仕組みになっていることから、格差が衆議院選挙よりも大きくなる傾向があります。
平成4年の選挙では、格差が最大で6.59倍まで広がり、最高裁判所は、参議院選挙では初めて「違憲状態」という判決を言い渡しました。
平成6年に一部の選挙区で定員を見直す「8増8減」が行われ、平成7年の選挙では、格差が最大で4.97倍まで縮小しました。
その後も見直しは行われたものの5倍前後の格差が続き、最高裁は、4年前の判決で「合憲」の判断をしたうえで、「選挙制度の仕組み自体を見直すことが必要だ」という踏み込んだ指摘を行っていました。
しかし、最大で5倍の格差があった3年前の参議院選挙に対し、最高裁は、去年10月、「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態だった」として憲法違反の状態だという判断を示しました。
また、この判決では、「都道府県を単位とした今の選挙制度を維持したまま格差をなくすことは著しく困難になっている」と指摘して制度の抜本的な見直しを求めました。
その後、いわゆる「4増4減」の見直しが行われた結果、ことし7月の参議院選挙では1票の格差は最大で4.77倍に縮小され、こうした取り組みを裁判所がどう判断するかが注目されていました。