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コラム:ロシア孤立化とG7の限界 | Reuters

国際政治学者イアン・ブレマー

しかし、ここにひとつ問題がある。そもそもロシアは他の西側諸国と価値観など共有していないし、ロシアを除いたG7は国際社会の利益を代表する団体でもなければ、もうかなり前から国際問題の解決を進める集合体でもないということだ。


そう結論付けるにはいくつかの根拠がある。まず第1に、似た価値観や政治体制を共有する国々にあっても、国益を合致させることは難しい。それはクリミア問題をめぐる西側諸国の対応がバラバラなのを見ても明らかだ。


第2に、この数十年で新興国が台頭してきており、世界のパワーバランスは大きく変化した。その結果、G7に残されたのはパイの小さな部分だけだ。具体的な例を挙げるなら、中国が加盟していない組織など、本当の意味で国際的な団体とは言えない。

珍しく国際社会が一致した結果にも、多くの注釈がつく。まず、中国やブラジル、インドといった有力な新興国を含む58カ国が棄権に回ったほか、採決に参加すらしなかった国々も多かった。またロシアは名指しされておらず、決議に法的拘束力もなければ、何ら具体的な行動を伴うものでもない。すなわち、ロシアが拒否権を行使することができる国連安全保障理事会の決議と異なり、象徴的なものに過ぎない。


実質的な結果を伴うようにするためには、参加者を限定し、利害が一致しなければならない。欧州でさえ、多くの国はロシア制裁に消極的だ。ロシアにおける権益を多く有する国と、そうでない国と、加盟国の間に大きな差があるためだ。

ロシアのクリミア編入後、米国が相次いで制裁を発表している一方で、欧州が沈黙を保っているのには、こうした事情がある。オバマ政権はロシアの銀行と、プーチン大統領に近い複数の財閥を制裁対象に加えたが、欧州は追随するのを思いとどまった。クレムリンはこうした温度差を認識しており、米国に対して即座に制裁の対抗措置を行ったが、欧州には行わなかった。

このような状況下において、西側が国際的な枠組みの中で自分たちの価値観に固執すれば、ほとんど成果は見られないだろう。あるいは限られた同志たちの間で価値観を固持することはできるだろうが、国際的な影響をもたらすことは難しいだろう。

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