ドラギ総裁:「ユーロ圏QE」時代開く−少なくとも148兆円 - Bloomberg
Draghi Rings in Euro QE Era in $1.3 Trillion Bond-Buy Plan: Video - Bloomberg
Bloganza: Draghi’s Introductory Remarks at ECB Press Conference: Text
欧州中央銀行 量的緩和導入を決定 3月から NHKニュース
ヨーロッパ中央銀行は22日、単一通貨ユーロの金融政策を決める理事会をドイツのフランクフルトの本部で開き、主要な政策金利については過去最低の水準となっている今の年0.05%のまま据え置きました。
その一方で理事会のあと記者会見したドラギ総裁は原油価格が大幅に下落し、ユーロ圏がデフレに陥るリスクが高まっていることなどから、各国の国債など幅広い資産を買い入れる量的緩和の導入に踏み切る方針を決めたことを明らかにしました。
具体的には投資適格の格付けを持つ各国の国債など幅広い資産を、ことし3月から来年、2016年9月まで月に600億ユーロ、日本円でおよそ8兆1600億円買い入れるということです。
量的緩和は日本やアメリカなどが景気の下支えを図るため実施してきましたが、ヨーロッパ中央銀行としては初めての実施となります。
ユーロ圏では原油価格の大幅な下落で、先月の消費者物価指数が5年2か月ぶりにマイナスとなり、デフレへの懸念が一段と強まっているほか、今月25日に実施されるギリシャの議会選挙の結果しだいでは金融市場が混乱するおそれも出ています。
ドラギ総裁は「今回の措置がユーロ圏の需要を拡大させ、物価上昇率を押し上げることになるだろう」と述べ、量的緩和の効果に自信を示しました。
また、「ユーロ圏各国は成長を支援する一段の財政政策を可能なかぎり実施すべきだ」とも述べ、デフレに陥るのを防ぐためには中央銀行だけでなく、各国の財政出動が欠かせないという考えを示しました。
量的緩和は景気を刺激するため、市中に出回るお金の量を増やすことを目標にする金融政策です。
中央銀行の伝統的な金融政策は政策金利の調整ですが、景気の低迷などで政策金利がゼロに近づくと金利のさらなる引き下げは難しくなります。
こうした場合に、中央銀行が銀行から国債などの資産を買い取ることで市場に資金を供給し、景気の刺激を狙うのが量的緩和です。
初めて導入したのは日銀で深刻なデフレや金融システム不安に直面した2001年、導入に踏み切りました。
また、リーマンショックに端を発した2008年の世界的な金融危機を受けて、アメリカの中央銀行に当たるFRB=連邦準備制度理事会が金融資産を銀行から買い取ることで大量に資金を供給する実質的な量的緩和を行いました。
イギリスの中央銀行、イングランド銀行も量的緩和を導入しています。
ただ、ヨーロッパ中央銀行の量的緩和の導入を巡っては、これまで各国の国債を買い取ることは、各国への財政支援を禁じたEU=ヨーロッパ連合の条約に触れるのではないかという指摘が出ていました。
さらに、どの国の国債をどれだけ買うのかなど、ほかの主要な中央銀行と比べ、導入への課題が山積していました。
ヨーロッパ中央銀行はデフレへの懸念に加えて、ウクライナ情勢が緊迫化した去年春ごろから景気の下支えをはかる手段として各国の国債など幅広い資産を買い入れる量的緩和の導入について理事会で議論してきました。
しかし、理事会では、ドイツ連邦銀行の総裁などが国債の購入は危機に陥った国への財政支援につながりかねないなどとして強く反対しました。
また、どの国の国債をどれだけ買うのかなどの課題も多く、政策金利の水準も0.25%と僅かながら利下げの余地もあったため、量的緩和の導入には時間がかかるとみられていました。
その後、ヨーロッパ中央銀行はユーロ圏がデフレに陥るのを未然に防ぐ必要があるとして、2度にわたって政策金利を引き下げた結果、金利の水準は0.05%と事実上の下限に達しました。
さらにヨーロッパ中央銀行は金融機関が中央銀行に資金を預ける際に事実上の手数料がかかる「マイナス金利」と呼ばれる政策や、金融機関から金融資産を買い取る政策など新たな金融緩和策を相次いで導入しました。
しかし、一連の金融緩和策の効果は限定的でユーロ圏の物価上昇率は低迷を続けました。
ドラギ総裁は先月、年明け以降、早い段階で量的緩和の導入に踏み切る可能性を示唆し、さらに導入にあたっては、理事会で全会一致で決める必要はないという認識を明らかにしました。
そして、先月、消費者物価指数はついにマイナスに転落しました。
市場では今回の理事会で、量的緩和の導入に踏み切るという見方が強まっていました。
ヨーロッパ中央銀行は22日、ユーロ圏がデフレに陥るのを防ぐため、各国の国債など幅広い資産を月に600億ユーロ、日本円でおよそ8兆円余り買い入れる量的緩和の導入を決めました。
これについて日本の市場関係者の間では、焦点となっていた買い入れ資産の額は予想どおりか、やや予想を上回ったとして前向きな受け止めも出ています。
また、日銀の黒田総裁も今回の決定に先立つ21日の記者会見で、「物価下落のリスクがあるなかで金融緩和することはヨーロッパ経済にとってプラスになると思うし、ひいては世界経済にとってもプラスになると思う」と述べて歓迎する姿勢を示しています。
一方で、ヨーロッパ中央銀行の今回の決定は事前に広く予想されていたため、すでにヨーロッパ各国の国債の利回りは低下しています。こうしたことから、量的緩和が実施されても、金利が一段と下がって資金が広く行き渡る効果が出るかは不透明だという指摘もあります。
このため、今回の決定が世界経済への影響が懸念されるユーロ圏の経済のデフレ化を防ぐ上で、どこまで具体的な効果があるかが注目されています。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長はNHKのインタビューに応じ、自動車業界にとって前向きな決定だとして歓迎しました。
この中でゴーン社長は、「ヨーロッパの自動車市場は回復はしているものの、世界的な金融危機以前の2007年の水準にはまだ戻っていない」と指摘しました。
そして、「ヨーロッパ中央銀行の決定は市場の回復を後押しするものであり、ユーロ圏がデフレに陥るのを防ぐためにも間違いなく、よい決断だ」と述べました。
ドイツのメルケル首相はスイスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会、「ダボス会議」で講演し、「中央銀行が、どのような政策を実施しようとも政治家が成長に向けてやるべきことを実行していくことに変わりはない」と述べました。
そのうえでメルケル首相は「構造改革を忘れさせてくれるような政策で時間稼ぎすることを考えるのではなく、厳しい姿勢で財政の健全化に向けた取り組みを進めることが重要だ」と述べ、ユーロ圏各国はヨーロッパ中央銀行の量的緩和の導入をきっかけに構造改革の手綱を緩めることがないよう努めるべきだという考えを示しました。
IMF=国際通貨基金のラガルド専務理事は声明を発表し、「量的緩和はユーロ圏の金利を引き下げ、物価の低迷が長期化するリスクを減らすことにつながるだろう」と述べ、歓迎しました。
そのうえで「量的緩和の効果を高めるために成長力を押し上げる構造改革や、需要を高める政策などを包括的に実施していくことが、極めて重要だ」と指摘し、ユーロ圏の各国に対しても足並みをそろえ財政政策などを展開するよう求めました。