ウクライナ東部では、ことしに入って政府軍と親ロシア派の戦闘が激しさを増しており、ウクライナ軍は3日、激しい戦闘がドネツク州から隣のルガンスク州にも拡大したことを明らかにしました。ルガンスク州では、政府軍と親ロシア派がにらみ合う北部の町や村を中心に、激しい砲撃が続いているということです。
一方、親ロシア派は3日、ドネツク州でウクライナ軍の軍用機を撃墜し、戦車7台を破壊したと発表しました。また、親ロシア派は、2日から3日にかけて中心都市ドネツクでバスの車庫などが砲撃され、5人が死亡し、13人がけがをしたと発表したほか、ウクライナの警察は、ドネツク州全体で住民6人が死亡し、18人がけがをしたとしています。
戦闘の激化についてウクライナ政府は、親ロシア派がロシアの支援を受けて支配地域の拡大を目指していると非難しています。これに対し、親ロシア派は、政府軍による住民への砲撃を阻止するため、政府軍の陣地に対する攻勢を強めていると主張しています。
ウクライナ東部では、去年4月に戦闘が始まってから5000人以上が死亡していますが、戦闘の拡大に歯止めがかからない状態が続いています。
ウクライナ情勢を巡っては、ウクライナ政府と親ロシア派が去年9月、OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構の仲介の下、いったん停戦で合意しました。しかし、双方とも停戦の合意を守らず、ウクライナ東部ではその後も散発的な戦闘が続きました。
停戦が形がい化するなか、ウクライナはEU=ヨーロッパ連合との関係強化に向けた連合協定を批准し、NATO=北大西洋条約機構への加盟を目指す方針を明らかにするなど、欧米寄りの姿勢を強めます。
これに対して、親ロシア派の後ろ盾となってきたロシアは、ウクライナに対する非難を強め、親ロシア派へのてこ入れを図ります。親ロシア派には、ロシア軍の兵士らが義勇兵として加わり、ウクライナ政府と欧米は、ロシアが軍事支援を行っているとの見方を強めています。
さらに、親ロシア派も東部で独自の指導者を選ぶ選挙を実施するなど、事実上、ウクライナからの独立を目指す姿勢を強め、双方の対立はさらに深まりました。
ことしに入ってから、ウクライナ東部で、軍事戦略上、重要な拠点となっている中心都市ドネツクの空港を巡る攻防戦が激化。戦闘は東部の各地に飛び火し、激しい砲撃戦で子どもを含む住民の犠牲者が増えています。
先月13日には、東部の幹線道路を走る路線バスがウクライナ軍が管轄する検問所を通り過ぎようとしたところ、近くに砲弾が着弾し、乗客ら12人が死亡するなど、ことしに入ってからの犠牲者の数はおよそ300人に上るとみられています。
親ロシア派は、政府軍による住民への砲撃を阻止するとして、政府軍の陣地への攻撃を強めています。これに対して、ウクライナ政府は、ロシアの支援を受けた親ロシア派が支配地域の拡大を狙っているとして、親ロシア派を砲撃し、戦闘が拡大しています。
こうした事態を打開しようと、ウクライナ政府と親ロシア派の代表は、先月31日、隣国ベラルーシで停戦合意の徹底を目指して協議を行いましたが、協議は決裂しました。
緊張が続くなか、ウクライナ政府軍は相次ぐ徴兵で軍を増強。これに対抗して、親ロシア派も東部の住民を動員して戦闘員を10万人規模に拡大するとしており、さらに大規模な衝突の危機が高まっています。