イラクとシリアの北部を中心に支配を続ける「イスラム国」に対し、アメリカなど12か国が空爆に参加し、これまでに2300回を超える攻撃を行いました。
「イスラム国」にパイロットを殺害されたヨルダン軍は、報復だとして3日間連続で大規模な空爆を行ったほか、アメリカ軍なども新たに26回の空爆を行い、「イスラム国」の装甲車両などを破壊したと、7日発表しました。
半年にわたる空爆の支援を受け、地上で戦うイラク軍やクルド人部隊が各地で攻勢を強めていて、先月にはシリア北部の要衝アイン・アルアラブを4か月にわたる攻防の末に奪還したほか、イラク北部でも拠点となる地区を取り戻しています。
また、空爆によって石油の精製施設などおよそ200か所を破壊し、「イスラム国」の資金源に打撃を与えたほか、各地で戦闘員の離反が相次いでいるという情報もあり、「イスラム国」に対する作戦で成果が出始めているとみられています。
しかし、「イスラム国」はシリア北部のラッカやイラク西部のアンバール県など本拠地とされる地域で依然強固な支配を維持し、住民を戦闘員に勧誘するなどして反撃の準備を進めているとみられ、戦闘の長期化は避けられない状況です。
アメリカは去年8月からイラクで、そして9月からはシリアで、「イスラム国」に対して戦闘機や爆撃機、無人機などによる空爆を続けています。
アメリカ軍によりますと、この半年間でアメリカを含めた12か国による空爆は2300回を超え、このうち8割以上はアメリカ軍による攻撃です。
イラクの空爆にはアメリカに加え、オーストラリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、オランダ、そしてイギリスの合わせて8か国、シリアの空爆にはアメリカに加え、バーレーン、ヨルダン、サウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦の合わせて5か国が参加しています。
そのほか、有志連合には加わっていませんが、イラクの隣国イランも「イスラム国」に対する空爆を行ったことがあります。
アメリカ政府は、これまでの空爆で「イスラム国」の戦闘員数千人を殺害し、組織のナンバー2だった幹部を含む司令官の多くも殺害して指揮系統に打撃を与えたこと、そして「イスラム国」が主要な資金源としてきた石油精製施設などおよそ200か所を破壊したとしています。
そのうえで、シリア側の戦況はまだ混とんとしているものの、イラク側では「イスラム国」の勢いを食い止めたと分析しています。
UAE政府は7日、国営通信を通じて声明を出し、「イスラム国」に対する軍事作戦を続けているヨルダン空軍を支援するため、F16戦闘機の部隊をヨルダンに配置することを決めたと発表しました。
声明では、「ヨルダン軍はパイロットが『イスラム国』に殺害されるなど地域の安定のために多大な犠牲を払っている。非道なテロ集団にアラブ諸国は協力して対処すべきだ」としています。
UAEはヨルダンやサウジアラビアなどと共に「イスラム国」への軍事作戦に参加していますが、ヨルダン軍のパイロットが拘束された去年12月以降、自国のパイロットも拘束される事態を懸念して、アメリカ軍が救出作戦を実施できる態勢をイラク国内に築くまでは空爆を見合わせていると伝えられていました。
こうしたなか、今回の発表はUAEが空爆に参加する姿勢を鮮明にしたもので、作戦の参加国の間での足並みの乱れに対する懸念を払拭(ふっしょく)するねらいもあるものとみられます。