ネムツォフ元第1副首相の殺害。ネムツォフが著名な政治家で、野党(とはいえ下院に議席はない)指導者だったため、日本のメディアではプーチン政権が反対派つぶしのためにやったと言わんばかりの報道もあるが、そんなお粗末な話ではないだろう。
ネムツォフら、右派リベラルといわれるグループはエリツィン政権期に政権中枢にいたわけだが、そのときロシア経済はひどい状態だった。他方、プーチンが大統領になった2000年以降、ロシアは高度経済成長に入り、豊かになった。だから、プーチン支持率は高く、右派リベラルは下院の議席が取れない。
右派リベラルは厳しい政権批判をしているが政治的影響力は小さい。次回下院選では小選挙区が復活し、右派リベラルがわずかな議席を獲得する可能性はあるが、政権は揺らぐはずもない。右派リベラルが政権批判のデモや集会をやっても、むしろ政権は「ほら、ロシアには言論の自由があるでしょ」と言える。
政権内のもののわかった連中は、右派リベラルの指導者を殺害したところでメリットは何もなく、むしろ西側の「だからロシアは」という反露キャンペーンが盛り上がることのデメリットのほうが大きいことをわかっているだろう。昨年来のウクライナ危機のため白い目で見られている昨今なら、なおのことだ。