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Kuni Sakamoto

ブログ更新。理解せずに信じるべき大衆を、信じることなしに理解できる哲学者と決して混ぜあわせてはならない。 「アヴェロエスにおける神学者批判と宗教の効用 ド・リベラ『中世哲学史』」http://d.hatena.ne.jp/nikubeta/20150505/p1

アヴェロエスにおける神学者批判と宗教の効用 ド・リベラ『中世哲学史』 - オシテオサレテ

 アヴェロエスは、宗教、神学、哲学の関係について論じるにあたり、人間は『クルアーン』読解のレベルによって三つの階層に分けられるという前提から出発した。最下層は解釈ができない人々からなる。彼らは『クルアーン』の字義通りの意味しかわからない。最上層は確実な前提から三段論法を行うという論証的なやり方で『クルアーン』を解釈していける人々である。これは哲学者となる。これら二つの階層の真ん中に、三段論法は用いるものの確実な前提からではなく、蓋然的な前提から出発する者たちがいる。彼らは蓋然的な結論しか得られない。この階層には神学者(ムータジラ派とアシュアリー派)が属する。


 アヴェロエスの主張の核心は、この中間の階層である神学者を排除することにあった。というのも論理的に考えて彼らは必要ないからである。解釈を必要とする箇所では、彼らは確実な論拠から出発しないがゆえに論証からくる確かさに決して到達しない。また字義通りに読むべきテキストでは、彼らは大衆と同じ読みにしか到達しない。にもかかわらず彼らは解釈を行おうとして、理解せずに信じるべき人々の信仰を破壊してしまう。「こうしたことから結論されるのは、彼らが人々を憎しみ、ののしり合い、いさかいの中に陥れるということ、彼らが『コーラン』をずたずたに引き裂いてしまうということ、そして彼らが民衆を完全に分裂させるということである」(214-215ページ)。


 神学は解釈できない人と、解釈を行う人を不必要に媒介してしまう。このつながりは断たれるべきである。大衆、神学者、哲学者のあいだにありうるあらゆる種類の交流は停止させられなければならない。この停止を行うべきであるのが宗教的政治権力、すなわち「ムスリムの長たちの義務」である。宗教の効用とは、大衆と哲学者の切り離しにより、社会に安定を調達することにあるのである。


 アヴェロエスイスラム神学者批判を、ラテン中世の神学者たちは、キリスト教を含む宗教一般の批判と受けとり、これへの反発を深めていくことになる。

Kuni Sakamoto

アラビア語圏で展開された哲学のなかで、哲学と宗教との関係がいかに考えられていたかという点については、山本先生のこちらの論考も参照されるべきですね。 「イスラーム哲学概説 山本「イスラーム哲学」」http://d.hatena.ne.jp/nikubeta/20120424/p1

イスラーム哲学概説 山本「イスラーム哲学」 - オシテオサレテ

イスラーム圏では哲学は(フィロソフィアの音写である)ファルサファと呼ばれ、神学・宗教諸学、および法学とは独立の学問分野として認知されていました。また哲学教育のための公的機関はなく、私的な集まりにおいて営まれていました。これは大学という場所で、法学や神学を学ぶ準備段階として哲学が学ばれた西洋中世以降のあり方とは大いに異なります。

 イスラーム哲学史の原点はキンディー(801頃–866頃)におかれます。彼はアッバース朝下で行われていた哲学著作翻訳活動の指導的立場に立っていました。その思想の特徴は、アリストテレスを新プラトン主義的に解釈するということを行いながらも、世界の神からの流出を認めなかった点にあります。ファーラービー(870頃–950)はアリストテレスに続く「第2の師」と呼ばれ、アリストテレスと(新)プラトン主義の統合を目指しました。彼において新プラトン主義的アリストテレス主義というイスラーム哲学の基本的方向付けが定まります。彼はその知性論においては、個々の人間の知性が究極的な能動知性を認識できるか否かという問題を提起しました。宗教論では宗教というのは哲学的論証によって真理を把握できない大衆向けに、想像力に訴えかけるように考案された物語であるという説を唱えました。宗教が哲学に従属しています。国家論はこれらの学説を基礎に、能動知性を認識した哲学者が、大衆向けに宗教を用いるなどして統治するのが理想国家であるという理論を展開しています。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150503#1430650370
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150429#1430304096


http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150424#1429872472


http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150317#1426588564
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150119#1421663661
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150110#1420886811
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150108#1420713484


http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141207#1417949014
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141201#1417430505