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〔クロスマーケットアイ〕15年ぶり高値の日経平均、中身さえないGDPとギャップ拡大 | Reuters

日本の1─3月期国内総生産(GDP)1次速報は市場予想を上回ったが、押し上げた主要因は在庫増加で、消費の回復度合いも弱かった。だが、日経平均 が15年ぶり高値を更新するなど株価は絶好調。追加金融緩和や景気対策などへの期待感が先行する展開だが、弱い景気とのギャップも再び拡大してきている。

この日発表された日本の1─3月期実質GDPは、前期比プラス0.6%。ロイターの事前調査で、市場予想はマイナス0.1%からプラス0.9%とかなりばらついていたが、0.6%以上と予想したのは22社中3社(0.6%が2社、0.9%が1社)だけだった。数字上は、その意味でポジティブ・サプライズだったといえる。


上振れたGDPに加え、ダウ が最高値を更新した米株高や1ドル121円台まで進んだ円安も追い風となり、20日の市場で、日経平均 は一時2万0278円まで上昇。4月23日に付けた年初来高値2万0252円を更新し、15年ぶりの高水準となっている。


TOPIX は連日の年初来高値を更新となり、7年半ぶり高値水準を付けている。前場段階の東証1部売買代金は1兆3649億円とそれほど膨らんでいないが、「海外ヘッジファンドだけでなく、ロングオンリーからの買いも入っている。物色セクターも循環しており、息の長い上昇相場となる可能性も大きい」(大手証券トレーダー)という。

ただ、GDPに関しては、中身の評価はあまり良くない。前期比を押し上げた主要な要因が、将来の生産圧迫要因となりかねない在庫増であったためだ。1次速報段階では、原材料在庫や仕掛品在庫は時系列モデルで算出されるため、2次速報で下方修正の可能性はあるが、下方修正されればGDPも下押しされるため、ポジティブ要因にはならない。


今年1─3月期の民間在庫投資の実額(季節調整済)は、実質でマイナス9699億円と、2014年7─9月期(マイナス4770億円)以来の高水準(在庫の減り方が遅い)だった。製造業での在庫調整や非製造業による流通在庫の抑制により、4─6月期の在庫投資は、減少の可能性が大きいとみられている。


消費も依然弱々しい。雇用や賃金が改善、原油安の効果もありながら、10─12月期と同じ伸び率となる前期比プラス0.4%だった。輸出は前期比プラス2.4%となったが、前期(3.2%)より伸びは鈍化した。米国経済の伸び悩みや中国経済の減速などから、外需増加の期待は高まりにくい。


昨年4月の消費税率引き上げによって、日本経済は14年4─6月期、7─9月期と2四半期連続のマイナス成長となったが、10─12月期、そして今回の1─3月期のプラス成長とテクニカル・リセッションから脱したことが確認された。しかし、回復の力強さは感じられない。

さえない景気と急騰する株価。そのギャップを埋めているのは政策への期待だ。りそな銀行アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は、景気対策を予想している。


今年2月に総額3兆1180億円の2014年度補正予算が成立したが、消費などが息切れする前に、もう一弾の追加策が必要だという。「景気や企業業績は順調に回復しているが、円安が止まってしまえば、すべて止まる。来年の参院選を視野に、安倍政権はもう一度、景気対策を打つのではないか」と話す。


一方、市場では、日銀の追加緩和を予想する声も根強い。「日銀は景気・物価の先行きにかなり強気な発言をしており、実体経済との温度差が残るため、いずれ追加緩和に追い込まれるのではないか」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏)という。


「日銀の金融緩和はかなり無理が来ている。追加緩和があったとしても日本経済を改善させることができるかは疑問だ」(外資系金融機関ストラテジスト)との見方は多い。しかし、上場投資信託ETF)の購入枠拡大など市場に対する直接的な政策があれば「景気はともかく、株だけは上がる」(同)というわけだ。


  しかし、景気と株価のギャップはいずれどちらかに収れんする。追加緩和や景気対策が日本の潜在成長率(生産性)を上げることができなければ、株価はさえない景気にさや寄せすることになるだろう。アベノミクスの真価が問われようとしている。