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焦点:物価基調は食品などで強めに、エネルギー下落との攻防 | Reuters

4月全国消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は、前年比プラス0.3%と一部で予想されていたマイナスへの転落を免れた。円安コストや人件費などを価格に転嫁する動きが進み、物価上昇品目数は増加し、物価の基調は食品などで強めに変化する兆しを見せている。


とはいえエネルギー価格の下落を主因に6月以降はマイナスとなりそうで、予想インフレ率の下振れを重視する日銀の判断に、市場の注目が集まりそうだ。

物価の上昇は、外食など食品関連で顕著だ。牛丼の物価指数は1月以降、全国ベースで前年比17%以上の高めの伸びが続いている。5月の東京都区部でも、牛丼は28.6%も上昇。


このほか5月の都区部では、持ち帰りすし10.3%、アイスクリーム8.3%など食品の値上げが目立っている。このため生鮮食品を除く食料全体で5月は1.2%上昇し、4月より0.1ポイントプラス幅が拡大。電気代や都市ガス代が指数を押し下げるなかで、物価を下支えした。


POSデータを利用して全国スーパーなどの食品や日用品の価格から東大日次物価指数を作成・公表している東京大学の渡辺努教授によると、東京都区部でPOSの対象品目の物価上昇率が今年3月を底に、4月、5月と上がっていると指摘。「どの程度品目間の広がりが出てくるか、もう少し様子をみないとわからないが、消費者物価指数の基調に4月以降、変化が生じているとみてよい」と指摘している。


こうした物価の基調変化の背景には、値上げに対する企業の抵抗感が薄れていることもある。ロイターの4月企業調査では、今年の値上げを予定する企業の割合は1月時点より6ポイント増えて38%に上昇した。原材料コストの転嫁を予定する企業割合が7割と多いが、人件費上昇の転嫁も3割と1月より相当増えている。


コスト上昇を企業が価格転嫁していける状況は、「物価の基調」を重視する日銀の想定に沿った動きといえる。


とはいえ、表面上の物価がマイナスに落ち込む今年後半、日銀がそれを看過できるのか、という点は予断を許さない。原油天然ガスの価格下落を反映して電力各社が7月以降値下げを打ち出しており、「電気代の値下げで全国コアCPIは、今後下落基調をたどり、10月はマイナス0.8%まで落ち込む」(SMBC日興証券・シニアエコノミストの渡辺浩志氏)との予想も出ている。


物価の基調的な動きについて、価格転嫁を吸収するほどの需要の強さが持続できるか、不透明な部分もかなりある。


昨年以上の賃上げ実現や株高による資産効果に期待がかかるが、自動車を筆頭に家電など耐久消費財の売れ行きはさえない。その影響で、自動車や家電は4─6月に減産となる見通しだ。日銀が重視する労働と設備の需給ギャップの改善は、緩やかなものにとどまる可能性もある。


さらに足元で円安が一段と進行する中、昨年にみられたように輸入コスト上昇に伴う中小企業の収益悪化や家計の実質所得の減少が、消費を抑制することになるのか、その点も懸念材料だ。


現実の物価指数が下がれば、日銀の黒田東彦総裁がかねがね指摘してきたように、期待インフレ率の低下にもつながりかねない。政府・日銀が言うように、賃金─消費─物価へと続く好循環が始まろうとしているのか、あるいはそれを阻害するリスクが高まってきたのか。その判断は、これから数カ月の間に出てくる経済データにかかっている。