鉱工業生産5月は大幅悪化、自動車や電子部品の調整長期化懸念 | Reuters
経済産業省が29日発表した5月鉱工業生産指数速報は前月比2.2%低下となり、事前予測を大きく下回った。自動車の在庫積み上がりが解消していないことや、スマートフォンの世界的需要悪化から電子部品の生産も減少している。6、7月生産予測は上昇が続く見通しだが、このままでは在庫積み上がりが解消せず、生産調整が長引く懸念がある。
経済産業省は、生産判断を前月までの「緩やかな持ち直し」から「一進一退」に引き下げ、「在庫調整が解消しないと、夏には再び昨夏のような調整局面を迎えることになりかねない」と警戒感を示した。
5月の生産は前月比2カ月ぶりの低下となり、ロイターの事前予測調査の前月比0.8%低下を大きく下回った。
足を引っ張ったのが自動車生産。生産の減少幅の半分程度は輸送機械工業の減産で説明がつく。特にウエートの大きい普通乗用車は今月米国向けに落ち込みが大きかったこともあり、在庫が積み上がっている。軽自動車や小型乗用車は減産を続けているが、それでも在庫解消には程遠い。
生産や出荷はほとんどの業種で減少となったが、足を引っ張っているのは、やはり自動車関連の品目。化学ではスチレンモノマーやエチレンなど川上原料の出荷が落ちたほか、ガソリンの出荷も減少、伸銅製品や輸送用機器用絶縁電線など非鉄金属や、安全ガラスなども、生産・出荷が減少した。
さらに、これまで好調だったスマートフォン向け電子部品・デバイスの生産も減少に転じた。世界的な需要減退で東アジアでのスマートフォン生産が減少しているため、液晶素子や半導体集積回路などの生産が落ち込んだ。
他方、気を吐いているのが情報通信機械工業。前月比2.0%伸び、出荷も増加。中国から国内に生産移管が実施されたボタン電話装置や、国内企業で情報通信インフラ需要が好調なことから外部記憶装置やはん用コンピュータなどが堅調だった。
先行きの生産予測指数は6月が前月比1.5%上昇、7月が同0.6%の上昇となり、5月の生産落ち込みが繰り越されて要因もある。ただ、経済産業省では「2カ月連続で増産はなかなか厳しい。在庫が解消しないと生産も伸びにくい」とみている。もともと予測指数は実績で2%程度下振れする傾向があるため、6、7月ともに減産となる可能性が高い。4─6月の生産は大幅に悪化する懸念がありそうだ。
もっとも、市場関係者からはさほど悲観的な見方は出ていない。SMBC日興証券では生産機械などの牽引に期待し「設備投資は底入れしており、これは輸出向け生産が仮に30%程度減少しても相殺可能な勢い」とみている。