https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

コラム:投資機会を生む「米最高裁判決」 | Reuters

FEDウォッチングは時に楽しくて有益である(と同時に退屈で損害をもたらしたりする)が、投資家は視野を広げて「最高裁ウォッチャー」にもなった方がいいかもしれない。


アルゴリズムを駆使する自動取引トレーダーなどによってほぼ全てのニュースが取引材料となり、瞬時に消化される時代にあって、最高裁の判決は単なる取引材料ではなく、タイムラグを伴って市場を大きく動かすことが最近の研究で明らかになった。


何らかの原因とライムラグを伴って株価が動くのだから、取引のチャンスがあるということだ。


イリノイ工科大のダニエル・カッツ氏やミシガン大のマイケル・ボマリト氏などによると「最高裁判決の公表と株価の最終的な動きの間には通常、かなりのタイムラグが存在」し、イベント主導型の取引戦略が成功してサヤを抜ける可能性があるという。


こうした投資機会の範囲は広い。カッツ氏らが1999─2014年の最高裁判決を調べたところ、79件の判決で118銘柄の株価が大きく動いていた。判決当日の午前9時半の取引開始から翌日の取引終了時の株価を動きを調べただけでも、判決による株価の変動は全体で1480億ドル相当に達した。


最高裁判決の公表と、市場がそれを消化して株価に反映されるまでに時間的なズレが生じるのは、判決の解釈のむずかしさや報道ミスなどさまざまな要因が関係している。


今回の研究は最高裁判決の株価への長期的な影響ではなく、直後の取引への影響を調べた。


医療保険改革(オバマケア)の合憲性に関する2012年の最高裁判決は、フォックス・ニュースやCNNが当初、個人に対する保険の義務付けが否決されたと伝え、ヒューマナなど医療保険銘柄が急騰した。しかしその後、実際にはオバマケアが合憲だと判断されたことが分かると医療保険銘柄は急速に下げに転じた。


興味深いことに医療保険銘柄の下げは、投資家が判決の内容を分析できるようになった判決公表の翌日に集中していた。


一方、遺伝子診断大手ミリアド・ジェネティクスのがんのスクリーニング検査をめぐる特許訴訟では、当初の報道は正しかったが株式市場は判決を誤って解釈し、ミリアド株は判決が発表された直後に急上昇した。しかしその後、判決はミリアドにとって不利な内容だったとの受け止め方がコンセンサスとなってミリアド株は下げ始め、結局判決前に比べて20%も下落した。


この2つのケースは裁判所判決を株価材料として見た時の性質の核心を浮き彫りにしている。つまり判決は株価にとってプラスもしくはマイナスに偏った影響を持たないようなのだ。


これに対して、多くの研究により米連邦準備理事会(FRB)の判断は株価を押し上げる方向に偏っていることが分かっている。つまり最高裁判決の前に単純にリスクを採ることは不可能で、うまくポジションを組み、報道に対して正しく反応する必要があるということだ。


ヘッジファンドなどの投資家は法律専門家やアナリストと契約を結び、利害関係のある最高裁判決を監視しているが、ほとんどのケースでは白黒のコンセンサスが明確ではなく、利益が得られる可能性はあるものの用心が欠かせない。


今回の研究の著者のうち何人かは、クラウドソーシング予想やアルゴリズムを用いて最高裁判決の予想を試みている。


9人の判事と多数の弁護士の動きに掛かる最高裁の判決をめぐっては、正確な情報、優れた解釈、素早い取引執行のみが利益につながるという状態が長らく続きそうだ。