キューバにあるアメリカ軍のグアンタナモ収容所は、２００１年の同時多発テロ事件のあと、テロ組織との関係が疑われた外国人およそ８００人が移送された収容所で、今もイエメン人など１０３人が収容されています。
外国人の収容が始まってちょうど１４年となる１１日、ホワイトハウスの前では、人権活動家らおよそ１００人が、収容所の閉鎖を求めてデモを行いました。
参加者たちは、収容者と同じオレンジ色の囚人服を着て、オバマ大統領に対して公約どおり一刻も早く収容所を閉鎖すべきだと訴えました。
グアンタナモ収容所を巡っては、過酷な取り調べが行われ、人権が侵害されているとして、国際社会から強い非難を浴び、オバマ大統領は７年前、閉鎖を命じる大統領令に署名しました。しかし、アメリカ議会で多数を占める野党・共和党は、テロの容疑者をアメリカ本土に移送して収容所を閉鎖する政府の計画に反対していて、閉鎖の見通しは立っていません。
１１日は、ロンドンなどほかの国の都市でも収容所の閉鎖を求めるデモが行われていて、オバマ大統領は、任期最後となる１２日の一般教書演説で、改めて閉鎖への決意を示し、共和党に理解を求めるものとみられます。
ホワイトハウスのアーネスト報道官は１１日、記者会見で、「オバマ大統領は、収容所の閉鎖は国家の安全保障に寄与すると考えている。これは、民主党だけではなく、共和党側の専門家も共有している」と述べました。
アメリカ政府は、１１日も収容者を１人釈放して、第三国に移送することを発表したところで、アーネスト報道官は「収容者を減らすことには進展が見られる。しかし、最終的に収容所を閉鎖するためには、議会の協力が必要だ」と述べ、議会が収容者のアメリカ本土への移送を禁止するなか、議会で多数を占める共和党に協力を呼びかけました。
グアンタナモ収容所は、キューバにあるアメリカ海軍の施設です。
およそ１２０年前の米西戦争でアメリカが占領し、その後、アメリカが永久租借する権利を得て使用しており、アメリカの領土ではないため、外国人にはアメリカ、キューバ、それぞれの国内法が適用されない特殊な収容所です。
前のブッシュ政権は、２００１年にアメリカで起きた同時多発テロ事件のあと、テロ組織と関係があると疑った外国人をグアンタナモ収容所に移送し、拘束してきました。
しかし、事実上の無期限で拘束していることに加え、拷問のような取り調べを行っていたことが明るみに出て、国際社会から人権侵害だと激しい非難を浴び、アメリカの信頼が大きく失墜する事態となりました。
このため、２００９年に就任したオバマ大統領は、就任直後の１月、真っ先に大統領令に署名し、１年以内に施設閉鎖を指示しました。
オバマ政権は、およそ８００人いた収容者を減らすため、テロ組織との関わりが低いと判断した収容者を本国や第三国への移送を進めるとともに、収容所の閉鎖に向けて、テロ組織のメンバーなどの容疑者数十人については、アメリカ本土で軍事法廷にかけるため、アメリカに移送する計画です。
しかし、アメリカ議会で多数を占める野党・共和党は、アメリカ本土でテロ容疑者を収容すれば、同じ施設にいるアメリカの受刑者や容疑者にも過激な思想が広がるおそれがあるなどとして、グアンタナモ収容所の閉鎖に反対し、法律で収容者の本土への移送を禁止してきました。
１１日現在、収容所にはイエメン人など１０３人の収容者が残されており、オバマ大統領は、任期が残り１年となるなか、人道上の理由や、収容所の維持には多額の予算がかかることなどを訴えて、議会に対して閉鎖に理解を求めています。
