一般教書演説は、大統領が今後1年間のアメリカの内政・外交の施政方針を示すもので、任期あと1年となったオバマ大統領にとって最後となります。オバマ大統領は12日夜(日本時間の13日午前11時すぎ)、アメリカ議会の本会議場で上下両院の議員などを前に一般教書演説を行いました。
この中で、オバマ大統領は、まず「この7年間の進展を可能にしたのはわれわれの勇気だ。それによって、深刻な不況を克服した」と述べました。そして、雇用の改善や医療保険制度改革、それに地球温暖化対策を巡る国際的な合意など、大統領就任以降の成果を強調しました。また、「第1の優先課題は、アメリカの国民を守り、テロリストのネットワークを追い詰めることだ。アルカイダとISはわれわれの直接の脅威だ」と述べ、先月、カリフォルニア州でテロ事件が発生し国民の間にテロへの不安が広がるなか、対策に全力を尽くす考えを強調しました。
さらに、アジア重視政策を掲げるオバマ大統領は、去年10月に大筋合意したTPP=環太平洋パートナーシップ協定の発効に向けて、議会に対し早期に合意内容を承認するよう求めましたが、北朝鮮による核実験や中国の海洋進出の問題については言及しませんでした。
一般教書演説でオバマ大統領は、「この7年間の進展を可能にしたのはわれわれの勇気だ。われわれがともに行った選択の結果だ」と述べ、事実上の国民皆保険を目指した医療保険制度改革の実現など、大統領就任以降の成果を強調しました。そして、「まだやらなければならない仕事を前進させるため、私は働きかけを続ける」と述べて、銃による犯罪から子どもたちを守ることを挙げ、銃規制の強化に取り組んでいく考えを強調しました。
また、オバマ大統領は、ことし11月に行われる大統領選挙に向けて、野党・共和党で支持率がトップのトランプ氏がメキシコからの移民やイスラム教徒に対する過激な発言を繰り返していることを念頭に、「われわれは人種や宗教で人々を標的にする政治を拒絶しなければならない。それは間違っている」と述べて強く批判しました。そのうえで、「われわれが望む未来は手の届くところにある。われわれがともに取り組み、建設的な議論を行い、政治を立て直せば実現する」と述べ、党派対立を乗り越え、結束して前進するよう呼びかけました。
オバマ大統領が一般教書演説「世界の安全は各国で分担」 NHKニュース
来年1月に任期を終えるオバマ大統領は12日、アメリカ議会で、およそ1時間にわたって、内政・外交の施政方針を示す最後の一般教書演説を行い、雇用の改善や、医療保険制度改革の実現など、就任以来7年間の成果を強調しました。
そして、外交・安全保障の面でオバマ大統領は、イランの核開発問題の最終合意や、54年ぶりのキューバとの国交回復、さらに地球温暖化対策の国連の会議、COP21の合意などを挙げて、みずからの成果を強調し、ISの壊滅を優先課題に挙げました。
一方で、国際社会でのアメリカの指導力が失われたと指摘されていることに対して、「敵が強くなり、アメリカが弱くなっていると言われるが、アメリカ軍は歴史上、最強だ。重要な懸案について、世界の人が頼るのは、中国やロシアではなくアメリカだ」と反論しました。ただ、「世界の警察官をやめ、どのようにアメリカの安全を保ち、世界を導くかが問題だ」とも述べ、アメリカが過度な軍事的な負担を負うことには改めて否定的な姿勢を示しました。
イスラム過激派によるテロや、ロシア、中国の動向など、国際秩序の不安定化も指摘されるなか、オバマ大統領が最後となる一般教書演説でどのような姿勢を見せるのか注目されましたが、同盟国や友好国と負担を分担しながら、世界の安全を確保すべきだという考えを強調するものとなりました。
オバマ大統領が一般教書演説を行ったあと、野党・共和党は全米に向けてテレビで反対演説を行いました。共和党が反対演説を行う人物に選んだのは、サウスカロライナ州のニッキー・ヘイリー知事で、ヘイリー知事がインドからの移民の家庭の出身で2人の子どもの母親でもあることから、共和党としては、大統領選挙を視野に、移民や女性の支持を得ようというねらいもあったとみられます。
ヘイリー知事は演説の中で、「オバマ大統領の高らかな主張には全く実績が伴っていない」と批判するとともに、「任期はもうすぐ終わり、アメリカが新しい方向に転換するチャンスが訪れる」と述べて、ことし11月に行われる大統領選挙で政権交代が実現することに期待を示しました。さらにヘイリー知事は、不法移民や目的がはっきりしない難民の入国を止め、テロや犯罪を防がなければならないと強調したほか、オバマ大統領が成果として強調する医療保険制度改革については、「悲惨な制度は撤廃し、コスト削減と医師の確保につながる改革を行わなければならない」と訴えました。
オバマ大統領の一般教書演説を巡っては、このほか、議会下院の外交委員会の委員長を務める共和党のロイス議員が声明を発表し、「オバマ大統領はこの7年間、同盟国よりも敵を助長し、国に危険をもたらした」としたうえで、核実験を行った北朝鮮への対策や、過激派組織IS=イスラミックステートを壊滅するための包括的な戦略が示されなかったと指摘し、「オバマ大統領は高まる脅威を次の政権に押しつけようとしているようだ」と批判しました。
オバマ大統領の一般教書演説のあと、アメリカ大統領選挙で与党・共和党の最有力候補とみられているクリントン前国務長官は、みずからのツイッターで、「オバマ大統領の指導力のおかげで、アメリカはさらによくなった。進展があった7年であり、後退させるのではなく、前進させる必要がある」と述べ、オバマ大統領の成果をたたえるとともに、大統領を目指す決意を示しました。
一方、野党・共和党では、支持率トップのトランプ氏が、ツイッターで、「とにかく退屈で、無気力で見るに堪えなかった」と述べたほか、支持率2位のクルーズ上院議員も、「オバマ大統領が達成した外交成果は、『アメリカに死を』と叫ぶ過激なイランに多額の資金を送ることになっただけだ」と批判ました。また、共和党のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事も、「過激派組織IS=イスラミックステートが台頭し、北朝鮮は核実験を行い、シリアは混乱に陥っている。オバマ大統領は、安全になったというが、別の世界に住んでいるに違いない」と、オバマ大統領のこれまでの外交政策を痛烈に皮肉るなど、共和党の各候補は一斉に演説を批判しました。
オバマ大統領の一般教書演説について、ウォール・ストリート・ジャーナルは過激派組織IS=イスラミックステートなどによるテロが世界各地で相次ぐ中、「大統領が提示した楽観的な見方は、多くのアメリカ人が感じている気分とは対照的だった」と指摘しました。
またニューヨーク・タイムズはオバマ大統領が一般教書演説で「私が大統領として後悔しているのは、党派間の悪意や疑念が改善するよりもむしろひどくなったことだ」と述べたことをあげて、「希望と変革をかかげ、政治そのものを変えると誓ったオバマ大統領だったが、最後の一般教書演説でその実現には遠く及ばなかったことを認めた」と論じています。さらに、ニューヨーク・タイムズは、オバマ大統領が演説のなかで「人種や宗教を理由に人を攻撃するような政治は拒否しなければならない」と述べたのは、ことしの大統領選挙に向けた野党・共和党の指名争いでトップを走るトランプ氏が「イスラム教徒の入国を禁止すべきだ」などと発言したことを、名指しすることは避けつつも批判したものだ、と指摘しました。
一方、ABCテレビは「オバマ大統領がこれほど政治的な脚光を浴びることはもうないかもしれないが、彼はその機会を使って国民の注目を自身の成果に向けさせ、遠い昔に消えてしまった情熱を取り戻そうとした」と分析しています。
オバマ大統領、最後の一般教書演説 「明るい未来」を強調 (CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース
オバマ米大統領は12日、連邦議会に政策の基本方針を示す一般教書演説を行った。就任から7年を迎えたオバマ氏にとって、これが最後の一般教書演説となった。
オバマ氏は冒頭で「最後となる今回は今年1年だけでなく、5年、10年、さらにその先へ目を向けたい。我々の未来に注目したい」と述べ、「我々は大きな変化の時代に生きている」と指摘した。
さらに「米国は過去にも大きな変化を経験してきた」「そのたびに将来への恐怖をかき立て、変化を阻止しようとする声があがった」と語り、「しかし我々は、他者が危険ばかりととらえる状況をチャンスととらえ、その結果さらに強く、より良く変わることができた」と主張した。
そのうえで、米国が現在直面する変化に「内向きの国になり、互いを敵視して恐怖で対応するのか。それとも我々自身やその理念、協力の成果を信じて立ち向かっていくのか」と問い掛けた。
将来に向けた課題として経済、科学技術、安全保障、政治体制の4分野を挙げ、まず「米国経済が衰退しつつあるというのは架空の話だ」と主張。裏付けとなる政策の成果を強調し、今後の課題を挙げた。
科学技術の分野では、昨年がんで長男を亡くしたバイデン副大統領をトップに、がん治療の研究を促す新たな組織を設立すると発表した。
安全保障の分野では「我々の敵がより強く、米国がより弱くなっているという表現を耳にするが、これも政治的意図に基づくでたらめだ」と、野党・共和党の大統領候補らによる主張を暗に批判。「米国は地球上で最も強い国である」と改めて断言した。
その米国が直面する脅威としてまず過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」を挙げる一方、「これを第3次世界大戦と呼ぶのは相手の思うつぼだ」と述べ、ISISが「世界最大の宗教のひとつを代表している」という「うそ」に乗る必要はないと力説した。
さらに、米国は「人種や宗教を理由に特定の人々を攻撃するような政治的行為を拒否しなければならない」と語り、「世界が我が国に尊敬の念を向ける理由は武力だけではない。多様で開かれた国であり、あらゆる信仰を尊重する国だからだ」と強調。
「政治家がイスラム教徒を侮辱し、モスク(イスラム教礼拝所)が襲われ、子どもがいじめられるような状況によって、我々の安全は強化されない」「それは世界の目に映る米国をおとしめ、我々が目指すゴールを遠ざけ、国としての存在意義を裏切る間違いだ」と述べた。
また与野党の激しい対立が続く国内の政治体制については、「民主主義には市民同士の根本的な信頼関係が必要だ。意見を異にする相手は全て悪意で動いていると決めつけ、対立相手を愛国心に欠けると非難するような状況では成立しない」と語った。
続いて「党派間の敵意や不信感が改善するどころか悪化してしまったのは、在任中の数少ない心残りのひとつだ」と、自身の力が及ばなかったことを認めた。そのうえで選挙制度改革などの必要性を訴え、市民一人ひとりが立ち上がって行動を起こさなければならないと呼び掛けた。
演説の最後には、投票所に並ぶ市民たちやボランティアたちの姿に言及し、「これが私の知る米国、我々の愛する国だ。澄んだ目と大きな心を持ち、武力によらない真実と無条件の愛が最後に勝つことを信じている国。だからこそ、私はこうして将来への希望を抱くことができる。あなた方のおかげだ。私はあなた方を信じている。だから私は今、国家の現状は強いという確信を持ってここに立っている」と、力強く結んだ。
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— CSPAN (@cspan) 2016, 1月 13
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— Paul Ryan (@SpeakerRyan) 2016, 1月 13