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川内原発運転停止の仮処分申し立て 退ける決定 | NHKニュース

鹿児島県にある九州電力川内原発の1号機と2号機について、鹿児島県や熊本県などの住民12人は運転の停止を求める仮処分を申し立て、去年4月、鹿児島地方裁判所が退けたため、福岡高等裁判所宮崎支部に抗告していました。
6日の決定で西川知一郎裁判長は、火山噴火の危険性について「原子力規制委員会が火山の審査で使う指針は、巨大噴火の時期や規模を的確に予測できることを前提にしている点で不合理だ」と指摘しました。
その一方で、「巨大噴火は極めて低い頻度でしか起きず、その危険性まで安全上考慮すべきという社会通念が確立しているとは考えられない。原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性が根拠をもって示されているとは認められず、原子力規制委員会の判断に不合理な点はない」と指摘しました。
また、地震に対する安全性の判断などについても不適当な点は見当たらないとして、住民側の申し立てを退けました。
川内原発は、福島第一原発の事故後に作られた新しい規制基準の下で、全国で初めて1号機が去年8月に再稼働し、2号機も去年10月に再稼働しています。
原発を巡る仮処分では、先月、大津地方裁判所が稼働中の原発としては初めて、福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機の運転停止を命じましたが、裁判所の判断が分かれる結果になりました。

原子力工学が専門で東京大学の岡本孝司教授は、「地震によって、原発の建物や機器が壊れたり自然災害や人為的なミスなどによって不測の事態が生じたりするリスクが皆無ではないと、裁判所が認めていることは当然なことで、事故への備えが機能しない場合にも、そのほかの多重な設備で対処し重大な事故を防ぐとした、新たな規制基準の理念を理解していて、非常に論理性のある判断だ」と評価しています。そのうえで、「新たな規制基準について、今後、最新の科学的知見を絶えず反映させて改善していくべきものだが、少なくとも原発の安全性を確保するうえで極めて高い合理性があると評価したことは、原発の運転を巡る今後の裁判への影響も含めて、非常に大きな意味がある」という見方を示しました。


科学史が専門で九州大学吉岡斉教授は、「原発の過酷事故に対するリスクの認識が裁判官によって大きな差があることを改めて感じる。今回の決定では、原発を運転するうえでの危険性がどこまで許容できるかの判断は社会通念に基づくと明確に述べているが、裁判官は危険性に寛容だと思わざるをえず、これが社会通念と言えるかどうか疑問だ」という見方を示しています。原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は十分に低いとした規制委員会の評価を「不合理ではない」とした点については、「原発の安全性の要求水準は、深刻な事故が起きる確率を10万年から100万年に1回以下を目指すことが共通認識となっているが、それに比べて、およそ1万年に1回程度とされる破局的な噴火は高い確率だと考えるべきではないか」と指摘しています。

原発運転か停止か 分かれる司法判断 | NHKニュース

原子力発電所を巡る裁判は昭和40年代後半から起こされていますが、5年前に福島第一原発の事故が起きると、改めて安全性を問う動きが広がりました。
住民などのグループの弁護団によりますと、全国の裁判所に申し立てられた仮処分や集団訴訟は現在、およそ30件に上っているということです。
このうち、福井地方裁判所では去年、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない決定が出たのに対して、別の裁判長が関西電力の異議を認めて、この決定を取り消しました。
一方、同じ高浜原発3号機と4号機について、大津地方裁判所は先月、運転の停止を命じる仮処分の決定を出し、関西電力が異議を申し立てています。
川内原発1号機と2号機については、去年、鹿児島地方裁判所が住民の申し立てを退け、6日の決定で福岡高等裁判所宮崎支部も申し立てを認めませんでした。
今後も各地で原発の再稼働に向けた手続きが進むなか、運転させないよう求める申し立ても増えるとみられ、司法の判断が注目されます。

6日の決定と、高浜原発の運転停止を命じた先月の大津地方裁判所の決定は、電力会社が説明を尽くしたかどうかという点で、判断が大きく異なりました。
2つの決定では、電力会社が原発の安全性について根拠や資料を明らかにしたうえで立証や説明を尽くすべきだという考え方が示されました。通常の裁判では申し立てをした側が自分たちの主張が正しいことを立証しなければなりませんが、2つの決定は、申し立てを受けた側の電力会社に立証や説明を求めた点が共通しています。
一方で、電力会社がその責任を果たしたかどうかという点で判断が大きく異なりました。重要な争点となった地震に対する安全性について、大津地方裁判所は「高浜原発の周辺で関西電力が行った断層の調査は、海底を含む周辺領域すべてで徹底的に行われたわけではなく、断層が連動して動く可能性を否定できない」などとして、説明が不十分だと指摘しました。
一方、6日の決定で、福岡高等裁判所宮崎支部は、九州電力が行った断層の調査について「徹底した調査の結果、敷地周辺で確認された断層は長期間活動がないと判断され、将来活動する可能性のある断層の存在は否定されている」などとして、説明を尽くしたという判断を示しました。
また、そのほかの争点についても、電力会社が立証や説明を尽くしたかどうかについて判断が分かれ、結論が大きく異なる結果となりました。


6日の決定と先月の大津地方裁判所の決定の違いについて、専門家は、自然災害のリスクについての考え方が大きく異なっていると指摘しています。
元裁判官で、原子力関連施設の裁判を担当した経験がある中島肇弁護士は、「大津地裁は、原発を運転するには災害のリスクを限りなくゼロに近づけなければいけないと判断したようだが、福岡高裁宮崎支部は、災害のリスクをゼロにするのは現在の科学技術では不可能だと指摘した」と述べ、この考え方の違いが判断の分かれ目になったと指摘しました。
そして、今後の原発を巡る裁判や仮処分への影響については、「福岡高裁宮崎支部の考え方は、震災の前から続く伝統的な司法の考え方に近く、ほかの裁判でも参考にされるだろう。しかし、福島原発の事故はこれまで想定されていなかったので、こうした伝統的な判断が通用するかどうかが、今後問われることになる」と話していました。

原子力発電所の運転を巡り司法判断が分かれていることについて、科学史が専門の千葉大学神里達博教授は、「福島第一原発の事故がもたらした被害や教訓を重視するのか、それとも川内原発の安全対策に限って判断を下すのかで、おのずと結論は変わってくるように、司法の一連の判断を見ると、裁判官の問題の捉え方に大きく左右され、純粋な科学的な議論だけで結論を出すのは難しい。全体的には司法も迷っているように見える」という見方を示しました。
そのうえで「原発の再稼働は、私たちがどのような社会を実現したいかに関わるもので、裁判所や専門家だけに議論を丸投げしていい問題ではなく、今も続く福島第一原発事故の大きな影響を見ても、議会や行政、市民など社会全体でより真剣に議論しなくてはならない問題になっている」と述べています。

原子力規制委の火山影響の指針 「不合理」と指摘 | NHKニュース

原発の新しい規制基準では、火山の影響を審査する際の指針「火山影響評価ガイド」で、原発の数十年間の運用期間中に、周辺の火山で巨大噴火が発生し、火砕流が敷地に到達する可能性などを評価し、十分に小さいことを説明できなければ、その原発の立地は認められないと定めています。
また、こうした巨大噴火の可能性が十分に低い場合でも、地殻変動などを継続的に観測し、巨大噴火につながるような異常があれば、原発の運転を止めて燃料を運び出すことを求めています。
川内原発の審査では、この指針を基に、過去に巨大噴火を引き起こした周辺の5つの火山について検討が行われ、巨大噴火の起こる間隔などから、「運用期間中の巨大噴火の可能性は十分に低い」と評価されました。
今回の決定では、「最新の知見でも、火山の噴火の時期や規模の的確な予測は困難で、異常現象が検知されても、それがいつ、どの程度の噴火に至るかなど、的確に判断できる理論などを持ち合わせていないのが、現時点の科学技術水準だ」として、「火山影響評価ガイド」は「噴火の時期や規模が相当前に的確に予測できることを前提にしている点で、不合理だと言わざるをえない」と指摘しています。
その一方で、巨大噴火について「地球的規模で生態系などに影響を与え、原子力災害をはるかに上回るもので、日本ではこうした自然災害の危険性については、建築規制をはじめ、安全性の確保のうえで考慮されていないのが実情だ。原発の安全性確保についてのみ別に考える根拠はない」としています。
そのうえで、「巨大噴火は発生する可能性が相応の根拠で示されないかぎり、原発の安全性確保のうえで想定しなくても、原発が安全性に欠けるということはできない。川内原発周辺の5つの火山については、原発の運用期間中に巨大噴火が起こる可能性が根拠を持って示されていない」として、運用期間中の巨大噴火の可能性は十分に低いとした規制委員会の評価自体は不合理ではないとしています。